優越的地位濫用・下請法違反に困ったら公正取引委員会に告発!

  • 2021年8月19日
  • 2024年10月8日
  • M&A

大会社と中小企業などの取引においては、企業規模の大きい側が中小企業に対して強い力を持つ関係(優越的地位を持つ関係)になるため、力の関係を利用して中小企業に無理な取引や条件を押しつけることがあります。

中小企業は取引内容や大きな企業側の要望に対して内心頭を抱えていても容易に言い出すことはできません。なぜなら、優越的地位にある企業に物を申せば契約を切られてしまうなど、取引において弱い立場である中小企業側が打撃を受ける可能性があるからです。

このようなケースの場合、優越的地位の濫用・下請法違反が問題になります。また、大きな会社が取引先である中小企業に優越的地位の濫用をした場合、公正取引委員会に告発するなどの対処が可能です。

  • 下請法と独占禁止法とは
  • 下請法と独占禁止法や公正取引委員会の関係
  • 優越的な地位の濫用とはどのようなケースか
  • 優越的な地位の濫用があった場合の対処法

以上のポイントについて弁護士が解説します。

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下請法と独占禁止法とは何か?

独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)とは会社の自由な競争と自主的な判断による取引を守るための法律です。

会社間にはどうしても力関係ができてしまいます。だからこそ、取引において力の強い会社(大企業など)が「当社以外と取引するな」と取引時に中小企業に条件をつけ、ライバル会社や新規参入会社などを業界から締め出すことが考えられます。

このような条件をつけた取引があれば会社間の自由な競争はできないはずです。独占禁止法は自由な競争やそれぞれの会社の自主的な判断を奪うような取引を違反行為としています。

下請法とは下請代金支払遅延等防止法の略です。力の強い優越的地位にある企業が弱い立場にある会社に不当な扱いをしないよう規律する、つまり弱い立場にある会社側を守るための法律です。

下請法と独占禁止法や公正取引委員会の関係

下請法は独占禁止法の補助的な法律になります。優越的地位にある会社(親事業者)と弱い立場にある会社(下請業者)の取引は基本的に下請法の対象です。

ただし、中には下請法ではフォローできないケースがあるため、下請法が適用されないケースに関しては独占禁止法で弱い立場に置かれる下請業者を守るという流れになっています。

この点、公正取引委員会が、独占禁止法や下請法を管轄しており、違反行為がないか監視しています。

独占禁止法の優越的な地位の濫用とはどのようなケースか

親事業者と下請業者が取引する場合に「立場を利用して商習慣に照らし合わせて不利益を与えること」は優越的な地位の濫用に該当します。違反行為は独占禁止法2条9項5号に列挙されています。

優越的な地位の濫用とみなされる可能性があるのは以下のようなケースです。

なお、この他にも優越的な地位の濫用とみなされるケースがあるため注意してください。ここで紹介するのはあくまで主な濫用ケースです。

ケース①契約した額から減額した

親事業者と下請業者で契約を結んで下請業者は契約に沿って納品しました。しかし親事業者は「新型コロナで苦しいから」「業績が下がっている」「契約を切られたらそちらも困るでしょう」などの理由をつけて一方的に減額を決め、減じた額を支払いました。親事業者の都合で勝手に減額したり、立場を利用して減額を強要したりすることは違反行為です。

ケース②支払いを遅延する

下請業者Aは親事業者と4月末日に取引分の支払いを受けるという契約を結んでいました。しかし、約束の4月末日になっても親事業者は払ってくれません。親事業者の方は「手続きが遅れているから」と言います。下請業者Aは親事業者に対して立場が弱いため、支払いが遅延して困るにも関わらず強く出ることができませんでした。親事業者側の個人的な理由で支払いを遅延することは基本的に違反行為になります。

ケース③立場を利用して強要や要求する

親事業者側が立場を利用して利益を求めることや、条件を強要することは立場の濫用に該当します。

たとえば、親事業者側が「御社の社員全員のうちの商品を使ってもらわないと今後の取引関係を見直すかもしれない」と伝え、下請業者の従業員に自社製品を買わせることなどが違反行為の代表例になります。

この他に、優越的地位を利用して親業者のサービスに加入させたり、取引とは関係ない物を要求したりすることも違反行為です。たとえば鉛筆100本を納品する契約なのに、「ついでに消しゴム100個も無償でつけてくれ」というのは基本的に駄目なケースになります。

ケース④立場を利用して下請業者に派遣や手伝いをさせる

契約内容にない親事業者の業務の手伝いを下請業者にさせることは違反にあたります。この他に、親事業者が立場を利用して下請業者の社員を派遣させることも禁止させているケースです。

たとえば親事業者が夏のお盆期間にセールを開催することになりました。人手が足りない、そして新規に人を雇い入れたくないなどの理由から、商品を仕入れている下請業者に言いつけて社員に手伝いに来させる等の行為があれば優越的地位の濫用に該当する可能性があります。

ケース⑤立場を利用して協賛金を負担させる

協賛金の負担自体がただちに違反に該当するわけではありません。ただ、立場を利用して下請業者に関係ない協賛金を負担させることや、合理性を欠いた重い負担金を出させることは違反行為に該当する可能性があります。

たとえば親事業者が隣接業界の大企業であるBと組んでキャンペーンと催しをすることになりました。このキャンペーンと催しは下請業者にはまったく関係のないものでした。しかし親事業者は「いつも取引しているから」という理由でAにも多額の協賛金の負担を求めました。このようなケースは立場を利用した違反行為だと判断される可能性があります。

仮に下請業者にキャンペーンや催しが関係しているという理由があっても、「当社はお金を出したくないので御社で出して欲しい」などは、合理性を欠いているのではないでしょうか。下請業者の規模やキャンペーンや催しでの役割などもふまえ額が妥当ではない、強要されたなどの事情があれば違反になる可能性があります。

ケース⑥商品の一方的な返品や受領拒否など

親事業者側が一方的な理由で商品の受け取りを拒否したり、返品したりすることは優越的地位の濫用に該当する可能性があります。

たとえば、親事業者側のミスで本来は10個のところ100個発注してしまいました。親事業者側は自分のミスを棚に上げて「100個もいらないから」と受領を拒否します。

また、あるいは、10個注文して10個納品したところ、親事業者の顧客の都合で注文がキャンセルになり、親事業者側は「キャンセルになったからいらない」と受領拒否します。これはあくまで親事業者側の都合やミスですから、下請業者に転化するのは公正とは言えません。

この他に親事業者の一方的な理由で返品はできません。

親事業者が100個発注したのに、売り場面積の縮小が急に決まって「100個も置けない」となりました。これは親事業者の事情です。このような一方的な親事業者側の事業により返品することも違反行為に該当する可能性があります。売れ残ったなどの理由による返品も同様です。

ケース⑦仕事のやり直しをさせる

合理的な理由もなく下請業者に仕事のやり直しをさせるのは優越的地位の濫用とみなされる可能性があります。

たとえば、当初の仕事内容を親事業者の役員の都合で勝手に変更しました。下請業者は当初の契約内容通り仕事をしましたが、内部事情で役員が変更を求めているから等の理由で何度もやり直しをさせられてはたまったものではありません。

親事業者が自己都合で当初の仕事内容を下請業者の承諾も取らず変えたような場合は、仕事のやり直しを求めることや程度によって違反行為に該当する可能性があるのです。

ケース⑧契約の代金を一方的に決める

親事業者が「安売りしたいから」などの事情で下請業者に一方的に安い価格で納品させようとすることは違反行為に該当します。

取引をしている場合、ある程度の商品割引はあり得るかもしれません。しかし、親事業者側が一方的に「価格は〇円」と低い額を指定したり、圧力をかけて価格を低くさせたりすることは優越的地位の濫用だと判断されるケースがあります。

ケース⑨下請業者に高額な保証金を払わせる

親事業者が不当に高額な保証金を求めることなども優越的地位の濫用とみなされる可能性があります。

たとえば親事業者が取引関係の浅い下請業者に「まだ信頼関係が出来上がっていないから」「心配だから」「今後のことも考えて」などの理由をつけて明らかに高額過ぎる保証金の支払いを求めました。このようなケースは違反になる可能性があるため注意してください。

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独占禁止法の優越的な地位の濫用があった場合の対処法

説明したような行為があった場合、直ちに優越的地位の濫用だと判断されるわけではありません。「優越的地位にあるか」「取引内容」「関係」「地位を濫用しているか」などを総合的に考慮し、ケースバイケースで判断されます。

仮に優越的地位の濫用だと判断された場合は罰則があります。また、このような濫用があった場合は、中小企業などは公正取引委員会に告発が可能です。

優越的地位の濫用を公正取引委員会に告発する

公正取引委員会は会社が不公正な取引をしていないか監視する組織なので、優越的地位の濫用という取引があった場合は告発することが可能です。

公正取引委員会が告発を聞き優越的地位の濫用があったと判断すれば排除措置命令が出されます。

公正取引委員会の排除措置命令に反した場合は50万円以下の過料が罰則です。また、優越的地位の濫用を継続的に行っていた場合は、親事業者は課徴金の対象になる可能性があります。

最後に

立場が優位にある会社が立場の弱い取引先に対し立場を利用して何かを求めたり、条件を付けたりすることは、優越的な地位を利用した違反行為に該当する可能性があります。

主なケースとして受領拒否や減額、支払い遅延などを挙げましたが、この他にも該当する可能性のあるケースがあります。

親事業者との取引に困っている場合は優越的地位を利用した取引になっていないか判断するためにも、まずは弁護士に相談してください。公正取引委員会への告発などの対処法がありますので、ケースに合わせて適切に対処することが重要です。

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