合併契約書・株式交換契約書と合併覚書・株式交換覚書の違いについて
最近、株式交換の案件を行ったのですが、皆様、合併や株式交換の際に、表明保証の対応はどのようにされているのでしょうか。
合併や株式交換では、最終的に、会社が一つの会社又はグループに統合されるため、表明保証を付けたとしても、相手方に請求することができないのです(請求したとしても株式交換であれば自社の子会社に対して請求することとなるため意味がないのです)。
しかし、表明保証には、デューデリジェンス(DD)機能も存在し、表明保証を充たさない結果として前提条件を満たさないこととなり問題が生じた場合、取引を停止させることができます。
また、合併や株式交換の当事会社だけではなく、大株主が主導していることも多く(特に株式交換の場合は、完全子会社となる会社のオーナー株主が存在する場合が多く)、その場合はその大株主を巻き込むことで表明保証の補償責任も実効性のあるものとすることができます。
また、実際、メルセデスベンツは、完全子会社にした三菱ふそうに対して、表明保証違反に基づき200億円?の補償請求をしたていたと思います(自社の子会社に対する補償請求も意味があるのです)。
私が最初にいた事務所の時は、法定の合併契約書や株式交換契約書のほかに、合併覚書や株式交換覚書(名称は、合併基本契約書や株式交換基本契約書や統合基本契約書など)を締結し、その中に表明保証を盛り込み、かつ当事者として大株主も巻き込み、表明保証違反の補償責任についても実効性を持たせた形で作成していました(しかし、いつしか同事務所でもそのような契約書は作成しなくなったように記憶しています)。
なお、法定の合併契約書や株式交換契約書については、上場会社では適時開示義務が生ずることに注意が必要です。すなわち、有価証券報告書の臨時報告書を提出しその中で、法定の合併契約書や株式交換契約書の全文を掲載する必要があるのです。
そして、合併覚書や株式交換覚書(名称は、合併基本契約書や株式交換基本契約書や統合基本契約書など)は適時開示する必要が無いのかというと、この点はグレーでした。すなわち、法律で適時開示が求められている法定の合併契約書や株式交換契約書と、合併覚書や株式交換覚書(名称は、合併基本契約書や株式交換基本契約書や統合基本契約書など)の線引きが明らかではなかったのです。
おそらくそういう理由で、今回の株式交換では、相手方の大手法律事務所主導で、法定の株式交換契約書だけで済ましたのでしょう。
ただ、完全子会社となる会社のオーナー経営者に対して、表明保証責任を負わせないことが正しいのかどうかは分かりません。株式交換ではなくて、対価を現金で支払う株式譲渡で行う場合は、通常通り、表明保証責任を規定することになるのに対して、対価を株式で支払う株式交換の場合は、表明保証責任を規定しないということは、非常にバランスを失します。
少なくとも、適時開示の軽微基準に該当する合併や株式交換の場合は、法定の合併契約書や株式交換契約書以外に、合併覚書や株式交換覚書(名称は、合併基本契約書や株式交換基本契約書や統合基本契約書など)も締結することが正しいものと思われます。