投資ファンド(投資事業組合等)が投資するためには金融商品取引業登録が必要です!

  • 2020年8月22日
  • 2024年10月8日
  • M&A

投資ファンドとは、複数の出資者から出資金を集めた運用の専門家が、その資金を元手に投資を行い利益を出資者に還元する仕組みのことです。

そして、投資ファンドの法形態として、いわゆる集団投資スキーム(民法上の組合、商法上の匿名組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合が使用されることが多くなっています。

金融商品取引法では、集団投資スキームはみなし有価証券に該当するため、集団投資スキームへの出資を募る場合や集団投資スキームが投資資金を投資運用する場合、原則として金融商品取引業の登録を義務付けています。

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投資ファンド(投資事業組合等)が投資するためには金融商品取引業登録が必要です!

今回は、投資ファンド(投資事業組合等)が投資運用するためには金融商品取引業登録が必要か否か、投資ファンド(投資事業組合等)が投資運用するために金融商品取引業登録が必要でない場合について、徹底解説していきます。

集団投資スキームについて

集団投資スキーム(民法上の組合、商法上の匿名組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合)は、一般的に少人数の投資家を募る場合に多く用いられています。

このような組合型の資金調達手段やスキームの多様化は、資金調達者にとっても資金運用者にとっても好ましいこととして捉えることができます。

一方、過去、組合制度を利用した様々な証券類似商品や金融類似商品の募集や販売や運用は、投資者保護のための法規制が十分にされていないという問題があったのです。

このような状況を悪用しようという動きもあったため、2007年に金融庁は金融商品取引法の細目を定める政省令を公布していったのです。

その中で集団投資スキーム(民法上の組合、商法上の匿名組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合)の出資持分を「みなし有価証券」として取り扱うこととし、各種の組合型のファンドを金融商品取引法の規制の対象としたのです。

また、民法上の組合、商法上の匿名組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合について、集団投資スキームとしてみなし有価証券に該当するとしました。

そして、原則として、集団投資スキーム(民法上の組合、商法上の匿名組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合)の出資持分の募集や投資運用については、金融商品取引法に基づく登録を必要としたのです。

集団投資スキームとしてみなし有価証券に該当する要件

このような組合型の有価証券は、以下の場合に、集団投資スキーム持分としてみなし有価証券に該当します。

集団投資スキーム持分としてなし有価証券に該当するための要件

その持分が以下の権利であること

  • 民法上の組合契約に基づく権利
  • 商法上の匿名組合契約に基づく権利
  • 投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づく投資事業有限責任組合契約
  • 有限責任事業組合契約に関する法律に基づく有限責任事業組合契約
  • 社団法人の社員権
  1. 権利を有する出資者が、出資もしくは拠出をした金銭又はこれに類するものとして政令で定めるものを充てて事業が行われること
  2. 出資者が、出資額又は拠出額を超えて、出資対象事業から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができること
  • 以下のいずれにも該当しないこと

  • 出資者の全員が出資対象事業に関与する場合として政令で定める場合における出資者であること
  • 出資者がその出資、拠出の額を超えて収益の配当又は出資対象事業に係る財産の分配を受けることがないことを内容とする出資者であること
  • 保険業法に基づいた保険業を行う者が保険者となる保険契約
  • 農業協同組合法に基づいた共済事業を行う農業協同組合、農業協同組合連合会と締結した共済契約
  • 中小企業等協同組合法に基づいた共済事業を行う中小企業等協同組合と締結した共済契約
  • 不動産特定共同事業法に基づいた不動産特定共同事業契約
  • 公益、出資者保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定められた権利であること

出資者の全員が出資対象事業に関与する場合として政令で定める場合における出資者であることとは

この内の出資者の全員が出資対象事業に関与する場合として政令で定める場合における出資者であることは、投資よりも事業そのものを営むことを目的としています。

そのため、投資商品や金融商品としての性格は乏しいと判断され、金融商品取引法の規制の適用除外が認められたものです。

金融商品取引法の施行令1条の3の2では、以下の要件のすべてを満たした場合に出資者の全員が出資対象事業に関与すると認定されるとしています。

  • 出資対象事業の業務執行が全出資者の同意を得て行われるものであること
  • 全出資者が出資対象事業に常時従事すること、又は特に専門的な能力であって出資対象事業の継続の上で欠くことができないものを発揮してその出資対象事業に従事することのいずれかに該当すること

また、金融庁のパブリックコメントに対する回答によると、当該前者の要件への該当性の判断に当たっては、単に形式的に組合契約等に定めを置くのみでは足りず、実質的に満たされるべきである点に、留意が必要と考えられます、とされています。

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投資ファンド(投資事業組合等)と金融商品取引法の規制

金融商品取引法では、集団投資スキーム(ファンド)持分について以下のような様々な規制を行っています。

募集及び私募に関する業規制

金商法2条2項の規定にて、集団投資スキーム(ファンド)持分の募集又は私募は、金商法28条2項1号や2条8項7号により第二種金融商品取引業に該当します。

そのため、金商法29条により、集団投資スキーム(ファンド)持分の出資者を募る行為は、第二種金融商品取引業者としての登録を受ける必要があるのです。

登録の申請は金商法29条の2に基づき行うことができ、管轄の財務局により審査が行われます。

登録拒否事由などによる金商法29条の4の登録の拒否が行われなければ、金融商品取引業者登録簿に登録がされます。

運用に関する業規制

金商法2条2項5号では国内の集団投資スキーム(ファンド)持分について、金商法2条2項6号では海外の集団投資スキーム(ファンド)持分について規定されています。

これらの集団投資スキーム(ファンド)持分への出資を受けた財産の自己運用(有価証券等投資に限ります)は、金商法28条4項3号や2条8項15号により投資運用業に該当します。

そのため、有価証券を投資対象とする集団投資スキーム(ファンド)の資産の運用を運営者として行う場合は投資運用業に該当するため、金商法29条により金融商品取引業者として登録を受ける必要があるのです。

この場合の登録の申請も、上記の金商法29条の2に基づき行うことができます。

投資ファンド(投資事業組合等)と適格機関投資家等特例業務(プロ向けファンド業務

集団投資スキーム(ファンド)持分の募集又は私募は、第二種金融商品取引業者としての登録が必要です。

また、集団投資スキーム(ファンド)の資産の運用を運営者として行う場合は、投資運用業として金融商品取引業者の登録が必要です。

これらの金融商品取引法による募集、私募に関する業規制や運用に関する業規制は、要件が厳しく設定されています。

但し、金商法63条特例である適格機関投資家等特例業務を利用することにより規制が排除され、商号や主たる営業所の所在地等の事項についての簡易な届出のみで対応できるようになります。

そのため、多くの集団投資スキーム(ファンド)では、この特例を利用しているのです。

適格機関投資家等特例業務の特例は以下の要件を満たした場合に利用できます。

出資者の範囲は、適格機関投資家1名以上で、適格機関投資家以外の者で政令で定めるものが49名以下であり、いずれも不適格機関投資家に該当しない人。

上記の政令で定める49名以下の投資家の範囲は、以下になります。

  • 通常の集団投資スキーム(ファンド)持分の場合は、上場会社、資本金が5000万円以上である法人、保有資産1億円以上で証券口座開設後1年を経過している個人など
  • ベンチャーファンド特例の場合は、上場会社、資本金が5000万円以上である法人、保有資産1億円以上で証券口座開設後1年を経過している個人に加え、上場会社の役員、過去5年以内に上場会社の役員であった者など

投資ファンド(投資事業組合等)が金融商品取引業や投資運用業に該当しないケース

集団投資スキーム(ファンド)持分の発行者が募集又は私募に関する行為を第三者である第二種金融商品取引業者に委託した場合は、自ら有価証券の募集又は私募を行っていると認められないため金融商品取引業に該当しません。

一方、自ら運用者として集団投資スキーム(ファンド)持分を作った場合でも、運用行為の概要、契約の締結、運用財産の分別管理、事前届出、その他運用行為を他の者に一任する場合は投資運用業に該当しません。

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まとめ

このように、金融商品取引法による金融商品取引業登録は要件が厳しく自ら行うことは難しいため、外部の金融商品取引業者に依頼するのも一つの方法でしょう。

但し、組合員に銀行などの適格機関投資家が1人でも参加している場合には、適格機関投資家特例業務の適用を受けることで簡易な届出のみで登録ができます。 

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