株主総会とは
株式会社では、重要な意思決定を行うために株主総会を開かなければいけません。株式を購入した株主は、利益配当を受ける「自益権」と、意思決定に参加する「共益権」を有しているためです。
ただし、書面による同意があれば株主総会を開催することなく、決議があったものとみなすことができます。
会社法 第319条(株主総会の決議の省略) 1項 取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。 2項 株式会社は、前項の規定により株主総会の決議があったものとみなされた日から10年間、同項の書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。 3項 株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。 一 前項の書面の閲覧又は謄写の請求 二 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求 4項 株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、第2項の書面又は電磁的記録について前項各号に掲げる請求をすることができる。 5項 第1項の規定により定時株主総会の目的である事項のすべてについての提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされた場合には、その時に当該定時株主総会が終結したものとみなす。 |
株主総会の開催については上場・非上場ともに同じです。決議事項について採決する、報告事項について確認するのみです。
非上場の場合は株式が流通していないため、株式を買ってもらえるようにアピールする必要もなく、わざわざ株主総会で株主とコミュニケーションを図る必要もありません。よって、簡略化・省略する企業も多いところです。
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株主総会の種類
株主総会は、決算承認・余剰金配当決議・役員選任決議を行う「定時株主総会」と、合併・分割・株式交換などの重大な決定事項が発生した際の「臨時株主総会」の2種類があります。
会社法 第296条(株主総会の招集) 1項 定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。 2項 株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。 3項 株主総会は、次条第4項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。 |
会社法 第296条1項が「定時株主総会」、2項が「臨時株主総会」を指し、3項では取締役が招集することを明示しています。
会社法 第297条には株主による招集の請求について明示され、公開会社と非公開会社によって差異があります。混同してはならないのは、公開会社の中の一部が上場会社だということであって、「公開会社=上場会社」ではありません。テーマが広がり過ぎるため、ここでの公開会社と非公開会社についての説明は控えます。
株主総会での決議の種類
株主総会の決議には「普通決議」「特別決議」「特殊決議」「特別特殊決議」の4種類があります。多数決に寄りますが、決議よって株主総会に出席しなければならない最低数である「定足数」と、「決議要件」が異なる点についても注意してください。
普通決議 議決権の過半数を有する株主が出席することが定足数(定款で別段の定めをしうる)、出席した株主の議決権の過半数が賛成することが決議要件です。 |
特別決議 議決権の過半数を有する株主が出席(定款で定めのある場合はそれ以上)することが定足数、出席した株主の議決権の3分の2が賛成することが決議要件です。 |
特殊決議 普通決議や特別決議のように定足数や議決権の数に規定がありません。議決権を行使できる株主の過半数、かつ3分の2(定款で定めのある場合はそれ以上)の賛成することが必要です。 特殊決議が必要とされる決議事項に関しての規定は他と比べて少ないですが、取り扱う内容としては非常に重大性が高いものとなるため、可決には株主全体に対し圧倒的多数の賛成が必要です。 |
特別特殊決議 特殊決議と同様に、定足数の定めがありません。総株主の半数以上、かつ4分の3以上(定款で定めのある場合はそれ以上)の賛成が必要になります。 特別特殊決議は、株式譲渡制限会社で配当や残余財産を受ける権利などについて、株主ごとに異なる取扱いをする際の定款変更の場合のみです。株主の利害に直結する重要な決議事項となります。 |
会社法 第309条(株主総会の決議) 1項 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。 2項 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。 |
株主総会で決議する内容とは
主なものとして取締役や監査役など、役員の選任があります。会社の実質的所有者は出資者である株主であるため、取締役は株主から経営を任されている状態にあります。経営陣について会社が候補を提示し、株主が役員を選任します。株主の配当利益を左右する重要なものです。会社が提示した役員の案が否決されることは少ないのですが、否決される例も増えている状況です。
会社法 第332条1項によると、定款または株主総会の決議で特に定めない限りは取締役の任期は自動的に2年、2項には定款に定めのある場合は最長10年と明記されています。任期を長く設定すると、任期中に取締役を交代させたい場合が生じたときには辞任または解任する手続が必要になります。それらを考慮すると、一般的には定款で定めずに2年に一度は株主総会で選任する流れになるというわけです。
会社法 第332条(取締役の任期) 1項 取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。 2項 前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。 |
取締役会設置会社の決議が必要な場合
取締役会設置会社の決議が必要な場合をわかり易く箇条書きに羅列しますと、
普通決議
普通決議では、
- 自己株式の取得(会社法 第156条1項)
- 総会検査役の選任(会社法 第316条1項)
- 業務財産検査役の選任(会社法 第316条2項)
- 延期・続行決議(会社法 第317条)
- 役員の選解任(会社法 第329条1項、341条)
- 会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表者の選定(会社法 第353条)
- 会計監査人の出席要求決議(会社法 第398条2項)
- 計算書類の承認(会社法 第438条2項、第441条4項)
- 減少額が分配可能額より少ない場合の資本金の額の減少(会社法 第447条1項)
- 準備金の額の減少(会社法 第448条1項)
- 資本金の額の増加(会社法 第450条2項)
- 準備金の額の増加(会社法 第451条2項)
- 剰余金の処分(会社法 第452条)
- 剰余金の配当(会社法 第454条1項)
- 株主総会議長の選任
- 株主総会の議事運営に関する事項の決定
特別決議
特別決議では、
- 譲渡制限株式の買取(会社法 第140条2項)
- 特定株主からの自己株式の取得(会社法 第156条1項、第160条1項)
- 全部取得条項付種類株式の取得(会社法 第171条1項)
- 譲渡制限株主の相続人に対する売渡請求(会社法 第175条1項)
- 株式の併合(会社法 第180条2項)
- 募集株式・募集新株予約権の発行における募集事項の決定(会社法 第199条1項、第238条2項)
- 募集事項の決定の委任(会社法 第200条1項、第239条1項)
- 株主に株式・新株予約権の割当を受ける権利を与える場合の決定事項の決定(会社法 第202条3項4号、第241条3項4号)
- 累積投票取締役・監査役の解任(会社法 第339条1項、第342条)
- 役員の責任の一部免除(会社法 第425条1項)
- 資本金の額の減少(会社法 第447条1項)
- 現物配当(会社法 第454条4項)
- 定款の変更(会社法 第466条)
- 事業譲渡の承認(会社法 第467条)
- 解散(会社法 第471条3項)
- 解散した株式会社の継続(会社法 第473条)
- 吸収合併契約・吸収分割契約・株式交換契約の承認(会社法 第783条1項、第795条1項)
- 新設合併契約・新設分割計画・株式移転計画の承認(会社法 第804条1項)
特殊決議
特殊決議では、
- 公開会社から非公開会社への変更
- 人的属性に基づき株主の権利を取扱う定款の変更(会社法 第109条2項)
取締役会非設置会社の普通決議が必要な場合
取締役会非設置会社の普通決議が必要な場合もわかり易く箇条書きに羅列しますと、
- 譲渡制限株式・譲渡制限新株予約権の譲渡による取得承認(会社法 第139条1項、第265条1項)
- 譲渡制限株式の買取人の指定(会社法 第140条5項)
- 譲渡制限株式の割当(会社法 第204条2項)
- 募集新株予約権の割当(会社法 第243条2項)
- 取得条項付株式・取得条項付新株予約権の取得日(会社法 第168条1項、第273条1項)
- 取得する取得条項付新株予約権の決定(会社法 第274条2項)
- 株式分割(会社法 第183条2項)
- 株式・新株予約権無償割当(会社法 第186条3項、第278条3項)
- 代表取締役その他の代表者の選定(会社法 第349条3項)
- 取締役の競業および利益相反取引の承認(会社法 第356条1項)
- 会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項(会社法 第295条1項)
取締役会を設置していない会社の決議に関しては、「取締役会の決議=全て株主総会にて行われる」ことになります。
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株主総会の開催
会社法において取締役会の設置自体が任意となっているため会社法 第296条3項には株主総会は取締役が招集すること、または会社法 第297条には株主による株主総会の招集ができる場合が明示されています。
招集されるとなれば株主側にも準備の時間が必要です。会社法 第299条には株主総会日より2週間前、書面投票や電子投票を採用していない非公開会社は1週間前までに招集通知を発しなくてならないと明示されています。
会社法 第299条(株主総会の招集の通知) 1項 株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の2週間(前条第1項第3号又は第4号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、1週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。 2項 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。 一 前条第1項第3号又は第4号に掲げる事項を定めた場合 二 株式会社が取締役会設置会社である場合 3項 取締役は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該取締役は、同項の書面による通知を発したものとみなす。 4項 前2項の通知には、前条第1項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。 |
招集通知への記載事項は会社法 第299条4項に明示されている通り、「株主総会の日時及び場所」「株主総会の目的事項」「株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときはその旨」「株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときはその旨」「法務省令で定める事項」となります。(※会社法 第298条1項 参照)
定時株主総会において取締役会設置会社である場合には、「承認を受けた計算書類及び事業報告」を提供しなければならないことが会社法 第437条に明示されています。
会社法 第437条(計算書類等の株主への提供) 取締役会設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、前条第3項の承認を受けた計算書類及び事業報告(同条第1項又は第2項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。)を提供しなければならない。 |
なお、株主総会が開催されたとしても、招集の手続きが違反、または著しく不公正なときには、株主は株主総会の決議の日から3ヵ月以内であれば当該決議の取消し請求を行うことができることが会社法 第831条に明示されています。合わせて覚えておきましょう。
会社法 第831条(株主総会等の決議の取消しの訴え) 1項 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から3箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより取締役、監査役又は清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第346条第1項(第479条第4項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。 一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。 二 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。 三 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。 2項 前項の訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる。 |
株主総会の開催場所
開催場所について、以前は本店(本社)の所在する市区町村、または隣接する市区町村に限られていたが、現在の会社法ではどこでも開催可能です。株主が多い上場会社であれば、それらを踏まえて場所を決める必要があります。
会社法 第298条(株主総会の招集の決定) 1項 取締役(前条第4項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第302条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。 一 株主総会の日時及び場所 二 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項 三 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨 四 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨 五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項 |
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まとめ
株式会社そのもの、株式会社の種類や決議要件などの要点のみを抑えた上で、株主総会開催に関する「招集方法」「招集通知記載事項」「開催場所」について簡潔に説明しました。
株主総会に関して会社法で細かく規定されています。株主総会では会社の重要な事案を決定します。大きなお金が動いていますので、健全な運営を行うためには当然に多くの規定をクリアしなければなりません。
会社法は商法の特別法に当たるため、商法と会社法がぶつかる規定が存在する場合には会社法が優先して適用されます。元となる六法(憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法)よりも特別法である会社法が改正され易く、時代背景に応じてアップデートされていくイメージです。現金主体だった世間が電子マネー主体に切り替わったように、時代背景が変わればお金の動き方も変わり、それらを整備する商法系の法律は改正される速度や頻度が高い部類と言えます。法改正に対しては常に意識が必要です。