日本語教育機関の運営に関する許認可について

  • 2023年7月4日
  • 2024年11月6日
  • M&A

日本語教育機関の運営に関する許認可

取得を要する許認可

日本語学校において取得するべき許認可は、下記一覧表に記載のとおり、法務大臣による日本語教育機関の「告示」です。

また、当該「告示」に有効期間はなく、随時変更届を提出するのみで事業を継続できる、とのことです。

  • 取得済許認可一覧
 保有許認可期間制限根拠法令
1日本語教育機関の告示なし出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号及び平成2年法務省令第16号

法務省によると、日本語学校の経営は自由に行うことがきできるのが原則であるところ、日本語学校で外国人留学生を受け入れる場合には、法務大臣の告示を得る必要性が生じます(出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という)第7条第1項第2号及び平成2年法務省令第16号)。

そして、法務大臣の告示を受けるために「日本語教育機関の告示基準」と称する基準に基づき審査がされるので、その範囲で許可制に近い運用となっている、とのことです。

平成2年法務省告示第145号2項によると、日本語教育機関を別表第1のとおり定めるとしているところ、官報公告及び法務省ホームページによると、法務大臣による告示が掲載されており、日本語学校名が当該別表第1の2に掲載されていれば、日本語学校が法務大臣の告示を得ていることを確認できます。

出入国管理及び難民認定法

(上陸の申請)

第六条 本邦に上陸しようとする外国人(乗員を除く。以下この節において同じ。)は、有効な旅券で日本国領事官等の査証を受けたものを所持しなければならない。ただし、国際約束若しくは日本国政府が外国政府に対して行った通告により日本国領事官等の査証を必要としないこととされている外国人の旅券、第二十六条第一項の規定により再入国の許可を受けている者(第二十六条の二第一項又は第二十六条の三第一項の規定により再入国の許可を受けたものとみなされる者を含む。以下同じ。)の旅券又は第六十一条の二の十二第一項の規定により難民旅行証明書の交付を受けている者の当該証明書には、日本国領事官等の査証を要しない。

2 前項本文の外国人は、その者が上陸しようとする出入国港において、法務省令で定める手続により、入国審査官に対し上陸の申請をして、上陸のための審査を受けなければならない。

(入国審査官の審査)

第七条 入国審査官は、前条第二項の申請があつたときは、当該外国人が次の各号(第二十六条第一項の規定により再入国の許可を受けている者又は第六十一条の二の十二第一項の規定により交付を受けた難民旅行証明書を所持している者については、第一号及び第四号)に掲げる上陸のための条件に適合しているかどうかを審査しなければならない。

二 申請に係る本邦において行おうとする活動が虚偽のものでなく、別表第一の下欄に掲げる活動(二の表の高度専門職の項の下欄第二号及び技能実習の項の下欄第二号に掲げる活動を除き、五の表の下欄に掲げる活動については、法務大臣があらかじめ告示をもつて定める活動に限る。)又は別表第二の下欄に掲げる身分若しくは地位(永住者の項の下欄に掲げる地位を除き、定住者の項の下欄に掲げる地位については法務大臣があらかじめ告示をもつて定めるものに限る。)を有する者としての活動のいずれかに該当し、かつ、別表第一の二の表及び四の表の下欄に掲げる活動を行おうとする者については我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して法務省令で定める基準に適合すること。

別表第一

在留資格本邦において行うことができる活動
留学本邦の大学、高等専門学校、高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)若しくは特別支援学校の高等部、中学校(中等教育学校の前期課程を含む。)若しくは特別支援学校の中学部、小学校若しくは特別支援学校の小学部、専修学校若しくは各種学校又は設備及び編制に関してこれらに準ずる機関において教育を受ける活動

「法務省令」

平成2年法務省令第16号

法別表第一の四の表の留学の項の下欄に掲げる活動六 申請人が専修学校、各種学校又は設備及び編制に関して各種学校に準ずる教育機関において専ら日本語の教育を受けようとする場合は、当該教育機関が法務大臣が文部科学大臣の意見を聴いて告示をもって定める日本語教育機関であること。

なお、管轄について、法務省によると、変更等の書面の提出は各地方入局管理局でも、告示の審査等の所管は法務省入局管理局入国在留課で行っている、とのことです。

許認可基準の変更について

日本語教育機関の適格性に関する審査基準の変遷と誓約書の提出義務について

日本語教育機関の適格性に関する審査基準の変遷

法務省によると、従来、日本語教育機関の適格性の審査について、法務大臣が日本語教育機関を定める場合に、「日本語教育機関の設備及び編制についての審査及び証明を行うことができる法人による証明を参考とすることができる」(出入国管理及び難民認定法施行規則(以下「入管法施行規則」という)63条1項)とされ、外部機関により審査が容認されていたことから、当該審査は財団法人日本語教育振興協会(以下「日振協」という)が行う「日本語教育機関の審査・証明事業」によってなされていました。

その後、民主党政権による事業仕分けをきっかけに、当該日本語教育機関の適格性の審査に関する所轄は、日振協から法務省に変更され、それ以降、従来の日振協が定める基準に基づいて作成された基準である「日本語教育機関の運営に関する基準」(以下「旧基準」という)によって当該審査がなされるようになりました。

しかし、改正によって、入管法施行規則63条1項が削除されたことにより、平成29年10月から新規に開設される日本語教育機関の適格性の審査は、法務省により作成された独自のガイドラインである「日本語教育機関の告示基準」(以下「新基準」という)によって判断されることとなった、とのことです。

なお、現在は、旧基準で告示を受けた設置者(別表第1の2)と新基準で告示を受けた設置者(別表第1の1)が併存しています。

新基準適合性に関する「誓約書」の提出義務

また、旧基準に基づき設置された全設置者について、平成30年7月末まで、新基準へ移行するために新基準に適合していることの「誓約書」(以下「誓約書」という)を最寄りの地方入国管理局に提出することが義務づけられています。具体的には後述する新基準に記載された項目について遵守していることを誓約するものです。

この「誓約書」の機能について、法務省によると、旧基準で告示を受けた日本語教育機関は別表第1の2に掲載され、新基準で告示を受けた日本語教育機関は別表第1の1に掲載されているところ、通達に基づき、「誓約書」を提出させることによって、別表第1の2に掲載されている日本語教育機関を、全て新基準の別表第1の1に移行させる、とのことです。また、法務省および法務省ホームページによると、この「誓約書」を平成30年7月末までに提出しないと平成30年8月以降、新たに生徒を募集出来なくなるようです。

また、法務省によると、日本語教育機関に「誓約書」の提出を義務付ける根拠規定はないものの、法務省内での通達に基づいて行われている、とのことです。

日本語学校の「誓約書」の提出状況について、旧基準で審査されて告知された設置者については、平成30年7月末までに「誓約書」を提出する義務が存在します。

校舎の所有基準について

日本語学校の校舎として、商業ビルのフロアを賃借して利用し、日本語学校を経営しているところが多いです。

この点、旧基準では平成7年10月以前に開設された日本語教育機関は、校舎について賃借で行うことが認められていたため(旧基準日本語教育機関審査内規12項3号)、日本語学校が校舎を賃借していることについては旧基準のもとでは問題となりません。

しかし、新基準では、原則として「校地」及び「校舎」については設置者の所有でなければならず(新基準1条1項21号本文、22号本文、新基準解釈指針1条1項21号、22号)、例外的に、旧基準で設置された場合でも、20年以上継続して事業を行っている場合で「今後も「校地」又は「校舎」の確保に支障がないと認められるものであるとき」は、「校地」又は「校舎」が設置者の所有に属さない場合も許容されることとなります(同項21号ただし書二、同項22号ただし書二、新基準解釈指針1条1項22号二(4))。

なお、「今後も校地(又は校舎)の確保に支障がないと認められるものであるとき」の解釈については、法務省によると、今までの使用状況(長い間問題なく継続して賃借していたか)等を勘案して個別に判断される、とのことです。

この点、法務省によると、下記告示基準1条1項21号ただし書二、同項22号ただし書二を根拠として、20年以上事業を継続している事業者は、校舎について賃貸のままでもよい、とのことです。

告示基準(新たに定める際の基準)

第一条 出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令の留学の在留資格に係る基準の規定に基づき日本語教育機関等を定める件(平成2年法務省告示第145号。以下「留学告示」という。)別表第1の1の表に新たに日本語教育機関を掲げるときは,文部科学大臣の意見を聴いた上,次の各号のいずれにも該当することを確認して掲げるものとする。

二十一 校地が設置者の所有に属すること。ただし,次のイからニまでのいずれかに該当する場合はこの限りでない。

ニ 設置者の運営により20年以上継続して留学生受入れ事業を行っている日本語教育機関であって,今後も校地の確保に支障がないと認められるものであるとき。

二十二 校舎が設置者の所有に属すること。ただし,次のイからニまでのいずれかに該当する場合はこの限りでない。

ニ 設置者の運営により20年以上継続して留学生受入れ事業を行っている日本語教育機関であって,今後も校舎の確保に支障がないと認められるものであるとき。

日本語学校が告示を受け、その後、告示の抹消等なく、現在に至るまで告示を継続して有効に存続させている必要があり、「20年以上継続して留学生受入れ事業を行っている」といえるのであれば、新基準でも校舎の基準をみたし、校舎について自己所有でなく賃借でも継続できます。

校舎の増設の場合の審査基準の扱いについて

校舎増設時の審査基準の内容

校舎を増設する場合、今後適用される新基準によれば、校舎を増設する場合には、①校舎は3か所以内であり、かつ、②各校舎が相互に徒歩10分以内の位置にあることが必要です(なお、10分以内という基準は新旧基準の両方にある。新基準1条1項23号、新基準解釈指針1条1項23号、旧基準内規12項1号)。

校舎増設時の所有基準の取扱い

なお、校舎を増設する場合も賃借でよいかについて、法務省によると、20年以上事業を継続している事業者は、校舎増設時の新校舎も賃貸でよい(告示基準1条1項21号ただし書二、同項22号ただし書二)、とのことでした。

よって、このような日本語学校は、前述と同様に、告示基準をみたし、賃借で校舎の増設をすることができると考えられます。

校舎増設時の届出手続

法務省によると、校舎を増設する際には、概要・図面・謄本など必要書面の提出をして「届出」を行うことが必要である、とのことです。

新基準の遵守状況

旧基準から新基準への移行に伴い提出すべき「誓約書」では、新基準を遵守していることを誓約することが求められます。具体的には、①学則、②区分された収入・支出の管理、③定員の増員、④点検・評価、⑤健康診断、⑥入学者の募集、⑦入学者選考、⑧在籍管理、⑨禁止行為及び⑩地方入国管理局への報告について誓約が求められます(新基準1条1項2号、5号、8号、18号及び30号から43号、新基準解釈指針1条1項2号、5号、8号、18号及び30号から43号)。

  新基準の内容
1学則一定の事項について学則を定めていること
2区分された収入・支出の管理日本語教育機関以外の事業を行う場合には、その事業の経営と区分して日本語教育機関を経営し、その収入及び支出を適切に管理すること
3定員の増員定員の増員をする場合、一定の要件をみたしていること
4点検・評価活動の状況について点検及び評価を行う項目を定めた上で、点検及び評価を自ら行い、結果を公表すること
5健康診断生徒の入学後、できるだけ早期に健康診断を行うこととし、以後1年ごとに健康診断を行うこととすること
6入学者の募集入学を希望する者に対し一定の情報を適切な方法で提供し、かつ、その情報及び方法の記録について3年を経過するまで保存すること
7入学者選考日本語教育を受ける者として適当であること、経費支弁能力があること、入学希望者が仲介者等に金銭を支払い場合にはその額を把握・記録していること、不適切な仲介者等が関与している場合にはその入学希望者の入学を認めないこととしていること、及び入学者の選考のために行った試験等選考の過程を明らかにする記録について3年を経過するまで保存していること
8在籍管理留学生の在籍管理を行うこと
9禁止行為職業安定法上の許可なく、生徒の就労又は進学に関し、のあっせん又は紹介の対価を得ていないこと
10入国管理局への報告名称、所在地・校舎・教室、収容定員・コース、設置者、校長・主任教員・教員、規則(学則)、その他(生活指導担当者・入国在留事務担当者の変更など))の変更が生じる場合には地方入国管理局に報告すること

学則について

一定の事項(修業期間、学期、教育課程、授業日等)について学則を定めていることが求められています(新基準1条1項2号イからリ、新基準解釈指針1条1項2号二からリ)。

区分された収入・支出の管理について

日本語教育機関以外の事業を行う場合には、その事業の経営と区分して日本語教育機関を経営し、その収入及び支出を適切に管理することとしていることが求められています(新基準1条1項5号、新基準解釈指針1条1項5号)。

定員の増員について

定員の増員をする場合、一定の要件をみたす必要があります(新基準1条1項8号イから二、新基準解釈指針1条1項8号ロからハ)。

この点、日本語学校においては、定員の増員をした場合、要件を満たしたことを確認し、適切に入国管理局に報告をします。増員に合わせて校舎増設を行うことが多いですが、この場合、入国管理局に報告書を提出して、東京入国管理局に報告を行うこととなります。

点検・評価について

教育の水準の向上を図り、日本語教育機関の目的を達成するために、活動の状況について点検及び評価を行う項目を定めた上で、点検及び評価を自ら行い、結果を公表することが定められています(新基準1条1項18号イからロ、新基準解釈指針1条1項18号イからロ)。この規定は、旧基準では存在しなかった規定です。

健康診断について

生徒の入学後、できるだけ早期に健康診断を行うこととし、以後1年ごとに健康診断を行うこととすることが求められています(新基準1条1項30号、新基準解釈指針1条1項30号)。

入学者の募集について

入学者の募集にあたり、日本語教育機関は入学を希望する者に対し一定の情報を適切な方法で提供することが求められており、かつ、その情報及び方法の記録について3年を経過するまで保存することが求められています(新基準1条1項31号、新基準解釈指針1条1項31号)。

入学者選考について

入学者の選考にあたり、日本語教育機関には、日本語教育を受ける者として適当であること、経費支弁能力があること、入学希望者が仲介者等に金銭を支払い場合にはその額を把握・記録していること、不適切な仲介者等が関与している場合にはその入学希望者の入学を認めないこととしていること、及び入学者の選考のために行った試験等選考の過程を明らかにする記録について3年を経過するまで保存していることが求められています(新基準1条1項32号から35号)。

在籍管理について

日本語教育機関において、留学生の在籍管理を行うことが求められています(新基準1条1項36号ないし39号、新基準解釈指針1条1項37号ないし39号)。留学生管理については、台帳で全留学生を管理しており、氏名、出身国、成績、出席数、指導内容等留学生についての全ての情報を一元管理していることが多いです。

禁止行為について

新基準においては、日本語教育機関は、職業安定法上の許可なく、生徒の就労又は進学に関し、あっせん又は紹介の対価を得ていないことが求められています(新基準1条1項40号、新基準解釈指針1条1項40号)。

留学生の就労又は進学に関し、就業先からの勧誘を受けること、また、留学生はアルバイトをしなければ生活が厳しいのが現状であることから、履歴書の添削や面接指導のみならずアルバイトのあっせん又は紹介を行うことは多いですが、対価は得ることができません。

もっとも、無料であっても職業紹介を行う場合には、本来は無料職業紹介事業の許可を得なければなりません(職業安定法33条1項)。

地方入国管理局への所定事項の変更に関する報告について

告示された日本語教育機関について、名称や収容定員等の変更が生じる場合には、法務省入国管理局において変更後の適格性を判断することとなるので、可能な限り早い段階で最寄りの地方入国管理局に報告する必要が生じます(新基準1条1項41号から43号、新基準解釈指針1条1項41号から43号)。

この点、法務省によると、報告の対象としては、法務省のホームページ記載事項(名称、所在地・校舎・教室、収容定員・コース、設置者、校長・主任教員・教員、規則(学則)、その他(生活指導担当者・入国在留事務担当者の変更など))であり、同事項に変更がある場合のみ変更の報告が必要である、とのことです。

株主、取締役及び事務職員の変更

また、法務省によると、株主の変更のみでは報告は不要であっても、取締役および学校事務に携わる従業員に変更がある場合は、設置者の変更にあたり変更の報告のための書類を提出する必要がある、とのことです。したがって、本件取引の実行においては、株主の変更については変更の報告は不要であるものの、取締役及び学校事務に携わる従業員の変更を行った場合には当局に対し当該変更について報告を行う必要があります。

なお、取締役の変更について、法務省によると、一定の審査がなされており、学校の継続が可能かを判断するために経歴、資産等をみて、文部科学省・文化庁とも協議して総合的に適否を判断している、とのことでした。

代表取締役、校長、主任教員及び生活指導教員に変更があった場合に、都度、当該変更の報告を行うことが多いです。取締役の変更については、旧基準では求められていませんでしたが、今後は行う必要があります。

校長の変更

また、校長については、日本語教育機関の運営に必要な識見を有し、かつ、教育に関する業務に原則として5年以上従事した者であることが要件とされています(新基準1条1項10号)。そして、「日本語教育機関の運営に必要な識見」とは、日本語教育機関を運営する上での職員の人事管理に関する事務、生徒管理に関する事務、施設・設備の保全管理に関する事務及びその他日本語教育機関の運営に関する事務の識見をいいます(新基準解釈指針1条1項10号)。

この点、校長の資格要件である「日本語教育機関の運営に必要な識見を有し、かつ、教育に関する業務に原則として5年以上従事」とは、実務上、(日本語教育業界以外での)通常の社会人経験が5年以上あれば当該要件該当性が認められる旨の緩やかな運用がなされており、同要件は形骸化している、との話もありました。

しかし、法務省によると、校長の資格要件について、「教育に関する業務に原則として5年以上従事」とは、旧基準の要件は、「教育、学術又は文化に関する業務」(旧基準9項)であったことから、学術・文化に関わる社会人も認められ、やや広く認められていましたが、新基準においては、原則として、科目は特定していないものの、学校教育法上の学校か日本語教育機関に5年以上勤務していた者に限られ、学習塾や教育関係の企業の勤務ですら認められず、例外として、教育委員会に従事し、または、教育分野の研究に携わっていたなどの場合については、「教育に関する業務」に当たるかを個別に判断することはありえても、社会人経験があるだけでは認めていない、とのことです。

したがって、上記要件をみたす人材を確保し、校長の変更の報告をする必要がある場合があります。

主任教員の変更

さらに、主任教員については、教育課程の編成及び他の教育の指導を行うのに必要な知識及び能力を有すること、かつ、告示された日本語教育機関の常勤の日本語教員として3年以上の経験を有する者であることが求められます(新基準1条1項15号イ、ロ)。そして、「教育課程の編成及び他の教育の指導を行うのに必要な知識及び能力」とは、教育課程、教員の研修計画、そのほか生徒への日本語教育に関する学習指導について、他の教員の監督を行うにふさわしい知識及び能力を有することをいいます(新基準解釈指針第1条1項15号)。

主任教員の変更に際しては、上記要件をみたす人材を確保し、変更の報告をする必要があります。

また、主任教員は、教育関係(教育方針、クラス担当割り、クラス別カリキュラム、課外授業等)を担当するため、新たな(校長及び)主任教員が選任される場合は、適任者が指名される必要があります。 

留学生の入国管理手続について

日本語学校が担っている留学生の入国管理関連手続は、以下のとおりです。

入国申請の段階

法務大臣による告示により日本語教育機関に入国管理局への取次申請資格が付与されます。そして、日本語教育機関が留学生を受け入れるためには、留学生ごとに各国の領事館が発行するVISAの他に、入国管理局が発行する在留資格認定証が必要になるため、留学生に代わり日本語教育機関が入国管理局に取次いで当該在留資格認定証の申請を行います。そして、入国管理局から在留資格認定証が交付されたら、学校が発行する入学許可証と合わせて各国のエージェントへ送付します。

更新の段階

留学生の在留資格更新については日本語教育機関がまとめて更新手続をとることができますが、当該更新手続の担当者としては、学校関係者なら誰でも手続を行えるわけではなく、全国日本語学校連合会が開催する講習を受け、入国管理局への申請が通過した者のみに付与される取次カードを所持しているものだけが、更新の手続を行うことができます。日本語学校では、同資格保持者を採用しておく必要があります。全国日本語学校連合会は、講習を1年に一回のペースで頻繁に講習を行っているので、取次カード取得の障壁は低い、とのことです。

その他の留学生管理

日本語学校では、入国管理局の指導に基づき、台帳で全留学生を管理しており、氏名、出身国、成績、出席数、指導内容等留学生についての全ての情報を一元管理していることが多いです。

なお、日本語教育機関を卒業ないし退学した後は、進学先又は本人自身が在留資格更新の手続を行うこととなります。そして、次の更新までは前に所属した機関の有効期限が残存しているため、新たな進学先等に所属したとしても、その間に問題が生じれば日本語学校のペナルティになります。

また、日本語教育機関から退学等で除籍された留学生が問題を起こして帰国したとしても、成田の入国管理局が再入国許可のスタンプを押してしまうことから、その留学生は、再び入国をすることができ、再入国時に問題を起こせばその場合でも以前に所属した日本語教育機関にペナルティが課されてしまいます。強制退去となっても、法的にVISAの有効期限を取り消せないので再入国ができてしまいます。この点、大手の日本語学校のなかには、再入国許可のスタンプを押させないために、成田から出国させる際に、留学生に2人の監視役をつけて、入国管理局員に再入国許可のスタンプを押させないようにして、事実上再入国をさせないようにしている会社もあります。

留学生の不法滞在に係るペナルティについて

法務省によると、日本語教育機関において、不法在留した留学生の割合がある一定程度に達した場合、当該割合に応じて、日本語教育機関に対するペナルティが課せられているところ、当該ペナルティの概要は、下記「留学生の不法滞在に関するペナルティ一覧」に記載のとおりです。

  • 留学生の不法滞在に関するペナルティ一覧
  基準違反時の効果
13%基準(要領)不法在留した留学生の割合が1月末の在籍人数の3%以上となった場合

 

在留の認定および更新の際の提出書類のうち、通常免除されている書類が免除されなくなる。

 

25%基準(1)(要領)不法在留した留学生の割合が1月末の在籍人数の5%以上となった場合各日本語教育機関に通知があった後からは、当該日本語学校に留学する新規の留学生については、在留期間が6か月と短縮される(更新の場合の適用時期は未確認)。
35%基準(2)(新基準1条1項8号二、要領)1年以内に在籍者数に占める不法残留者数の割合が低いなど在籍管理に特段の問題がないものとして不法在留した留学生の割合が5%を超え、「適正校」の通知を受けていない場合定員の増員ができなくなる
450%基準(新基準2条1項4号)1年間に入学した者の半数以上が在留期間を経過して本邦に在留するに至ったとき告示抹消の対象となる

 

5平成29年からの新基準日本語教育機関における不法滞在者が10名以上となったとき3%基準と同様に提出すべき書類に変更が生じる(変更後の提出書類の内容については未確認)

3%基準について

法務省によると、日本語教育機関において、不法在留した留学生の割合(1月末の在籍人数を分母にして、不法在留した留学生の数を分子にした割合)が3%以上の場合は、在留の認定および更新の際の提出書類のうち、預金通帳の写し、家族の収入や日本語学習歴の申請書類等の提出について、通常免除されているものが免除されなくなります(要領)。

ここで、同氏によると、分子の不法在留した留学生は、直近に在籍した学校を基準とすることから、退学した後に別の学校に在籍した場合は対象とならなくても、別の学校に在籍せず又は就職等していない場合は、その直近に在籍した学校に帰責されます。これは、在籍した留学生が進学するのか帰国するのかを、最後まで留学させた学校が面倒をみるべきという趣旨、とのことです。

なお、当該3%基準の法的根拠について、法務省によると、内部基準としての要領に基づくものであり、同要領を入手したい場合は、公文書開示請求をする必要があります。

5%基準について(その1)

法務省によると、留学生の在留期間について、通常、学校ごとにその学校に通う留学生には一律、初回1年3か月・更新時2年の在留期間を付与しているところ、不法在留した留学生の割合が5%以上となった場合、その学校に通学する留学生に付与する在留期間が今後6か月に短縮される、とのことです。

また、東京入国管理局によると、当該基準に基づき各日本語教育機関に通知がなされた時点以降から、当該日本語学校に留学する新規の留学生については、在留期間が6か月と短縮された留学期間しか認定されなくなる、とのことです(要領)。

なお、在留資格を更新する留学生についても適用されるか、されたとしていつから適用されるかについては未確認です。

5%基準について(その2)

法務省によると、定員増員をする場合、「増員前1年以内に、在籍者数に占める不法残留者数の割合が低いなど在籍管理に特段の問題がないものとして、適正校である旨の通知を受けていること」(新基準1条1項8号二)という要件があります。そして、同号二の「適正校」の要件について、上記不法在留した留学生の割合が5%以内であること、という基準を要領によって定めています。そこで、不法在留した留学生の割合が5%以上となった場合、定員増員ができなくなります。

この点、日本語学校の不法滞在者数の発生率が5%を超えると、1年又はそれ以上の間非適正校になることがあります。

50%基準について

法務省によると、「1年間に入学した者の半数以上が」「在留期間を経過して本邦に在留するに至ったとき」(新基準2条1項4号)には告示抹消の対象となるが、その算定においては、当該日本語学校に在籍している留学生が対象であり、既に当該日本語学校に在籍してない留学生は対象とされない、とのことです。

この点、入学した留学生のうちオーバーステイをした留学生の数が、半数を超えた場合、これにあたります。

なお、当該50%基準の法的根拠については、法務省によると、条文上明確に在籍していることを要件として規定していませんが、条文の趣旨からそのように解釈しています。入学した留学生が半数以上もオーバーステイしていることは異常なことであり、不法滞在を誘発させているとみることができるから、とのことです。

その他

不法在留者の発生率が3%以下で「適正校」となっている場合、東京入国管理局からの「通知」でこれが通知されます。この通知は1年毎に更新されます。

なお、東京入国管理局によると、新たなペナルティが平成29年より導入され、日本語教育機関における不法滞在者が10名以上となった場合は、3%基準と同様に提出すべき書類に変更が生じることとなる、とのことです(要領)。なお、変更後の具体的な提出書類の内容については未確認です。

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