M&Aで売却しやすい会社とは、買い手のニーズがあることです。売上が安定している会社や業績が成長している会社などは売却しやすい傾向にあります。
ただ、会社を売却したいと考えたときに本当に売れるかどうか不安になる方もいるでしょう。
そこで今回は、M&Aで売却しやすい会社の特徴や業界を解説していきます。M&Aで会社の売却を考えている方はぜひ参考にしてください。
M&Aで売却しやすい会社の特徴とは?
M&Aで売却しやすい会社の特徴は主に以下のとおりです。
- 財務状況が安定している
- 業績が成長している
- 法務・財務の透明性が高い
- 事業と関係のない不動産を持っていない
- 経営が属人化していない
それぞれ詳しく解説します。
財務状況が安定している
M&Aにおいて買い手が最も重視するのが、財務の健全性です。
売上が安定しているだけでなく、毎年の利益が黒字で推移している会社は、リスクが少ないと判断されやすく、買い手に安心感を与えます。特に、営業利益率や自己資本比率が高く、借入れの依存度が低い会社は、経営基盤がしっかりしていると評価されます。
また、キャッシュフロー計算書の内容も重要です。営業活動によるキャッシュが継続的にプラスであれば、財務状況の安定性は高いと判断されます。
業績が成長している
業績が成長している会社はM&Aで売却しやすくなっています。買い手は安定性だけでなく、将来的な収益拡大の可能性があるかどうかも重要視しています。
売上や利益が年々増加している会社は、経営力が高く、市場における競争優位性もあると判断されやすい傾向にあります。特に、市場が拡大している業界は将来的な利益を期待できるため、買い手の評価も高くなります。
また、業界で独自の技術やノウハウを持っていたり、ブランド力があったりすると売却しやすくなるでしょう。成長性の高い会社や業界は高く売却できる傾向があります。
法務・財務の透明性が高い
買い手が最も警戒するのは、見えないリスクです。そのため、法務や財務における透明性の高さは、M&Aにおける信頼性を大きく左右します。
たとえば「契約書類の管理が整っている」「従業員との労務関係に問題がない」「税務申告が正確である」といった基本的な法務・財務管理ができていることは、デューデリジェンス時に大きなプラス評価につながります。
また、会計処理が正確で、粉飾や未処理の債務などが存在しない会社は、交渉もスムーズに進みます。M&Aの準備段階では、第三者による財務・法務チェックを受けておくことも有効です。
事業と関係のない不動産を持っていない
事業に直接関係しない不動産を保有していない場合、買い手からの評価が上がることがあります。理由としては、不動産の管理コストや固定資産税などの維持費、処分などの手間が省けるためです。
また、M&Aでは、事業そのものの価値が主に評価されるため、収益に貢献していない不動産は“不要な負債”と見なされるケースも少なくありません。
売却前に遊休地や使われていない物件がある場合は、分社化するか先に売却しておくことで、企業全体の印象を良くし、売却価格を維持しやすくなります。
経営が属人化していない
会社が特定の経営者や一部の社員に大きく依存している場合、M&A後の運営が不安定になる可能性があります。このような属人化が進んでいる会社は、買い手にとってリスクが高く、敬遠されがちです。
逆に、組織として業務が標準化・マニュアル化されており、誰が担当しても同じ品質で業務が遂行できる状態であれば、経営の引き継ぎがスムーズになります。
また、幹部社員や現場スタッフが自律的に動ける体制が整っていれば、買い手は安心して事業運営を引き継げます。
M&Aで会社を売却しやすい業界とは?
M&Aで会社を売却しやすい業界は主に以下のとおりです。
- IT業界
- 建設・設備業界
- 医療・介護業界
- 物流・運送業界
- 食品業界
それぞれ詳しく解説します。
IT業界
IT業界はデジタル化の進歩やクラウドサービスの普及により、M&A市場で人気のある業界です。
特にSaaSやクラウドサービス・受託開発・システム保守などの分野は、収益構造が明確でストック型ビジネスの側面を持つため、継続収入が期待できる会社は高評価されます。
また、デジタル化の進展や人材確保の難しさから、大手企業によるITベンチャーや中小ソフトウェア会社の買収が増加中です。
M&Aを検討しているIT企業は、自社の技術や顧客基盤、システムの再現性などを明確に整理しておくことで、より有利な条件での売却が可能になります。
建設・設備業界
建設業界は技術者不足や事業承継などが問題となっています。そのため、従業員や取引先が安定している会社ほどM&Aで売却しやすくなるでしょう。
特に、地域密着型の建設会社やインフラ設備業者は、取引先との関係性が強固で、地元に根付いた営業基盤を持っているため、買い手にとっては魅力的な資産です。
また、業界全体で技術者不足が深刻化しており、人材・技術力の確保を目的とした買収も増えています。工事実績や施工管理の体制、各種許認可の有無を整理しておくと、M&Aがより円滑に進められます。
さらに、環境意識が高まっていることから、省エネ設備や再生可能エネルギーに関する会社も評価されやすくなっています。
医療・介護業界
医療・介護業界は、高齢化社会の進行に伴って今後も市場規模の拡大が見込まれる分野であり、継続的なニーズが期待されるため、M&Aの売却先を見つけやすい業界です。
特に、中小規模のクリニックや介護施設は、個人開業による運営が多いため、後継者不在によるM&Aニーズが高まっています。買い手としては、地域性や既存スタッフの質、利用者数の安定性などが評価ポイントです。
日常業務の安定運営が継続して行われている施設は、特に好条件での売却が期待できるため、事業基盤の整備が重要です。
物流・運送業界
物流・運送業界も、EC市場の拡大や少子高齢化によるドライバー不足の影響から、近年M&Aが活発に行われている業界の一つです。
自社で物流機能を確保したいと考える製造業や小売業、全国規模でのネットワークを構築したい同業他社などが、積極的に中小運送会社の買収を進めています。
営業所や倉庫・保有車両といったハード資産に加えて、ドライバーや配送ルートの確保ができている会社は、高い評価を受けやすくなっています。日々のオペレーションが安定しているかどうかが、売却成功の鍵となるでしょう。
食品業界
食品業界は、地域ブランドや老舗の信頼感、既存の販売ルートを活かした買収が多い業界です。
特にOEMやPB商品の製造を手掛ける会社は、販路を持つ大手企業からの需要が高く、M&Aの候補として注目されます。
また、一定の衛生基準や認証を取得していると評価が上がりやすくなります。食品は景気変動の影響を受けにくく、安定した需要があるため、リスクが低い投資先として買い手に人気です。
衛生管理や製造ラインの効率性、品質保証体制などが整っていることが、売却成功のポイントとなります。
M&Aで会社を売りづらい・価格を下げてしまう要因
M&Aで会社を売りづらい・価格を下げてしまう要因は主に以下の通りです。
- 経営が属人化しており、引き継ぎが難しい
- 財務・法務の整理が不十分
- 収益が不安定で将来の見通しが立てにくい
それぞれ詳しく解説します。
経営が属人化しており、引き継ぎが難しい
経営の属人化は、M&Aで買い手が最も懸念するポイントのひとつです。属人化とは、事業の運営が経営者や特定の社員のノウハウや人脈に大きく依存している状態を指します。
このような会社では、買収後に経営がうまく機能しなくなるリスクが高く、買い手は引き継ぎの難しさを理由に買収そのものを見送ったり、提示価格を大幅に下げたりする可能性があります。
対策としては、業務マニュアルの整備や人材の分散、情報共有の仕組み作りが有効です。事業の再現性を高め、誰でも運営できる状態を目指すことが、売却成功につながります。
財務・法務の整理が不十分
M&Aにおいて、企業内部の財務や法務に不備がある場合は、大きなマイナス評価を受けます。
たとえば「帳簿が正しく整理されていない」「契約書が紛失している」「税務申告に不明点が多い」などの状況では、買い手は正確な企業価値を把握できず、デューデリジェンスの段階で取引が中断される可能性もあります。
特に、中小企業では書面管理や労務契約の整備が不十分なケースが多いため、売却を視野に入れるのであれば早めに専門家に相談し、透明性のある企業体制を構築することが求められます。
収益が不安定で将来の見通しが立てにくい
売上や利益の変動が大きい会社は、M&Aにおいて価格がつきにくい傾向にあります。
買い手は将来の収益性を重視するため、過去数年にわたって赤字が続いていたり、売上が大きく上下していたりする会社に対して慎重になります。
また、主力事業の市場が縮小傾向にある場合や、顧客の大半が一社に偏っているような場合も将来のリスクが高いと判断され、結果的に評価が低くなります。
売却を成功させるためには、安定した収益基盤を築き、中長期的な事業計画を明示できる体制を整えることが必要です。見通しのある会社は、それだけで価格交渉に強くなれます。
まとめ
今回は、M&Aで売却しやすい会社の特徴や業界について解説しました。
M&Aで会社を売却するには、買い手のニーズが重要です。財務状況が良好で市場拡大が見込める業界はM&A市場で有利に働きます。
また、買い手にリスクがあると買い手は慎重になってしまいます。そのため、法務リスクやコンプライアンス・会計処理の透明性などを徹底することで、買い手に信頼してもらいやすくなるでしょう。