休眠会社の売買の方法とは?メリットやデメリット、売買の流れやポイントを解説

  • 2023年5月30日
  • 2023年7月1日
  • M&A

休眠会社の売買の方法とは?メリットやデメリット、売買の流れやポイントを解説

休眠会社は、事業を休止しているものの、許認可や不動産などの資産が残っている場合が多く、それらを活用したいという買い手も存在します。

この記事では、休眠会社の売買について、メリット・デメリット、売買の流れやポイントについて解説します。

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休眠会社とは

休眠会社とは、法人としては存続しているものの、営業の実態がない会社のことです。

休眠会社の意味には、会社法上の定義と、一般的な用語法によるものとがあります。

まず会社法472条では、休眠会社を「株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から十二年を経過したものをいう」と定義しています。

これは、株式会社の役員任期が最長でも10年であることから、12年も役員の変更登記がない場合は活動の実態が存在しないと考えられているためです。

この会社法上の意味の休眠会社に対しては、法務省が毎年整理作業を行っています。

整理作業では、年に1回10月頃に官報に公告がされ、そこから2か月以内に必要な登記または届出のどちらかをしなければ、解散したものとみなされてしまいます。

みなし解散がされてしまうと、そこから3年以内に限り株主総会の特別決議で会社を継続することができますが、3年を経過してしまうと会社の清算を余儀なくされます。

このように、会社法上の休眠会社は、一定の期間が経過することで会社が消滅する場合があることに注意が必要です。

これに対し、合同会社等の持分会社は役員の任期がないため、会社法上の定義によれば休眠会社になりません。

しかし、株式会社も持分会社も、税務署・都道府県税事務所・市区町村役場に異動届出書を提出することで、会社が休業状態にあることを示すことができます。

このような休業している会社という意味合いで、一般的に休眠会社という言葉が用いられる場合もあります。

以上をまとめますと、休眠会社の意味は以下のようになります。
・株式会社の場合 休業している会社、または、法律上でみなし解散の対象にもなる会社
・持分会社の場合 休業している会社

この記事では、休眠会社という言葉を、休業している会社の意味で用います。

さて、休眠会社になる理由はいくつか考えられます。

例えば、後継者が存在しないために営業ができなくなってしまった場合、廃業はせずに将来の事業再開を検討している場合、会社の清算が面倒になってしまった場合などがあるでしょう。

いずれにせよ、休眠会社は現在のままでは営業をすることが困難です。

しかし、休眠会社は高い価値を有していることがあります。

特に、許認可を取得している場合は、会社を買い取ることができれば自分で設立するよりも早期に事業を始めることが可能になります。

休眠会社には、許認可の他にも様々なメリットがありますので、その活用が注目されています。

休眠会社を売買するメリット

休眠会社を売買することには次のようなメリットがあります。

・社歴の長い会社を手に入れられる可能性
・許認可をそのまま利用できる
・不動産を手に入れられる可能性
・資本金を準備しなくて済む
・会社設立手続きの省略
・銀行口座を引き継げる

それぞれ、どのようなものなのか見ていきましょう。

社歴の長い会社を手に入れられる可能性

会社の信頼性を考える際に、長い社歴は一つの要素になります。

歴史が長い会社であるほど信頼できると、一般的には考えられています。

社歴は会社の歴史そのものであるため、新たに設立した会社では得ることができないものです。

しかし、歴史ある会社が休眠会社になっていることもあるため、それを買い取ることで社歴の長い会社を手に入れられる可能性があります。

また、歴史がある会社は、たとえ大手企業のような一般的な知名度がなくても、その業界では名前をよく知られていることがあります。

休眠会社を利用して事業をする際に、そのような業界内での知名度が有利に働くことも考えられます。

許認可をそのまま利用できる

休眠会社が持っている許認可を利用できる点は、大きなメリットです。

許認可を新たに取得するには時間も費用もかかります。

また、取得することが難しい許認可も存在します。

しかし、休眠会社を全体として取得することで許認可もそのまま利用でき、事業を始めやすくなります。

特に、建設業や宅建業などの免許を取得している会社は、需要があるため価格も高くなる傾向にあります。

不動産を手に入れられる可能性

休眠会社の中には良質な不動産を所有しているものもあります。

場合によっては一等地を所有していることもあるでしょう。

そのような不動産を手に入れることができれば、事業の上で大きな力になり得ます。

もちろん、通常の取引で不動産のみを取得することも可能です。

しかし、不動産を購入すると、不動産取得税などの税金のほか、所有者の名義を変えるために登記の登録免許税などの費用も必要になり、宅建業者の報酬も必要になります。

ところが、休眠会社そのものを取得すれば、不動産の名義は変わらないため、これらの費用はかかりません。

休眠会社を取得することで、その不動産を活用できる場合もあることを確認しておきましょう。

資本金を準備しなくて済む

会社の資本金は多いほど信用が大きくなります。

資本金は、手続きが終わった後は銀行から引き出して使用することができますが、一度は金額を準備して銀行に預ける必要があります。

たとえば、資本金1億円の会社を作るためには、1億円の金銭を準備しなければなりません。

ところが、休眠会社を取得すれば資本金を準備する必要がなくなります。

休眠会社は、資本金よりも低い金額で売買されている場合も多くあります。

休眠会社を購入することで、多額の資本金を準備しなくても、資本金額の大きな会社を手に入れられる可能性があります。

会社設立手続きの省略

会社の設立手続きが必要ないことは、休眠会社を活用するメリットです。

すぐに事業を開始したくても、設立には手間も時間もかかります。

また、設立費用は少なくとも20万円程度かかります。

しかし、休眠会社を取得して再開すれば、費用をかけずに時間を失うことなく事業を始めることができます。

銀行口座を引き継げる

近年、マネーロンダリング対策の一環で、法人が銀行口座を開設することが難しくなっています。

会社を新たに設立しても、銀行口座を開設できないことはしばしばあります。

しかし、休眠会社を購入すると、会社名義の既存の銀行口座を引き継ぐことができるためメリットになります。

注意点としては、取得後に会社の業態が大きく変わる場合等は口座を利用できなくなることがある点です。

金融庁は、犯罪収益移転防止法上の疑わしい取引の事例を詳細に挙げています。

参照:疑わしい取引の参考事例:金融庁

このように、マネーロンダリング対策が厳格化しているため、従来の銀行口座の利用状況と大きく異なる場合には金融機関に疑念を持たれる可能性がある点に注意が必要です。
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休眠会社を売買するデメリット

休眠会社の売買にはメリットがありますが、以下のようなデメリットも考えられます。

・簿外債務の存在
・人材と取引先の不存在
・帳簿の不備
・青色申告の承認取消

ここではそれぞれを確認していきます。

簿外債務の存在

休眠会社を購入する際に注意しなければならないのは、簿外債務の存在です。

簿外債務とは、帳簿に現れていない債務のことです。

簿外債務は帳簿から読み取れないため、買主が気付くのは困難です。

休眠会社は事業をしていないため、債務の存在に売却側が気づいていない場合もあります。

場合によっては、意図的に売主が債務を隠すこともあり得ます。

会社を売買する際には、事前にデューデリジェンス(DD)を実施して様々なリスクを検証するとともに、契約書に表明保証条項を盛り込んで開示された事実が正しいことを保証してもらうのが通常です。

しかし、専門家を介在させずに会社を売買すると、このような周到な対応をしないことでトラブルが発生することもあります。

会社を取得する際には、簿外債務の存在がデメリットになり得ます。

人材と取引先の不存在

休眠会社は事業を停止しています。

そのため、事業を続けている会社とは異なり、人材も取引先も存在しないことがあります。

結果として、会社の取得後に従業員の募集が必要になることもありますし、取引先を見つけなければいけないこともあります。

休眠会社を再開して事業を始めるためには、事業継続中の会社をM&Aで取得する場合とは異なる対応が必要になることもデメリットになり得ます。

帳簿の不備

休眠会社は事業を続けていないため、帳簿を完備していないことがあります。

銀行から融資を受ける際に過去の計算書類を求められる場合がありますが、休眠会社では帳簿がないためにそれらを用意できず、融資を受けるのが困難になります。

その他、過去の帳簿が必要になる局面では、休眠会社の帳簿の不備が問題になると考えられます。

青色申告の承認取消

法人の青色申告は、10年間赤字額を繰り越せるなどの多くの特典があります。

しかし、2期連続で申告をしないと青色申告を取り消されてしまいます。

その場合、青色申告をするためには再申請が必要になりますが、青色申告取消しの通知があった日から1年間は再申請ができません。

休眠会社は、休眠中の確定申告をしていないことで青色申告を取り消されている可能性があります。

休眠会社を取得する場合には、青色申告をすぐに利用できない場合があることも注意しておきましょう。

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休眠会社を探す方法

売却を希望している休眠会社はどのように探せばよいのでしょうか。
ここでは、休眠会社を探すための代表的な方法を4つご紹介します。

仲介会社

仲介会社は、売主と買主の間に入って中立的な立場で売買の支援をする会社です。

多くのM&A案件を保有しているので、希望の条件に合った会社を探す手伝いをしてくれます。

短所としては、仲介会社の中には、成約のみを重視して顧客の利益にならない取引を成立させようとする業者が存在することです。

また、手数料が高くなる場合があることもデメリットとして挙げられます。

マッチングサイト

M&Aのマッチングサイトで休眠会社を探すことも可能です。

マッチングサイトは比較的手数料が安いという特徴があります。

デメリットは、専門家によるサポートが不足することです。

マッチングサイトでは契約書の作成などの作業を支援していないことも多いため、自分で手続きを進めなければならない場合もあります。

事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターは、国が設置した公的な窓口です。

全国に窓口が設置されており、原則として無料で利用することが可能です。

このような公的機関に、承継を希望する休眠会社が相談していることも考えられます。

事業承継・引継ぎ支援センターが設置されてからしばらくは、知名度が低く利用件数が少ないことが問題でしたが、近年は相談者数・事業引継ぎ件数ともに増加しています。

参照:事業承継・引継ぎ支援センター

弁護士などの専門家

弁護士などのM&Aを手掛ける専門家は、休眠会社に関する情報を持っていることがあります。

ホームページ等で積極的に情報を発信している場合もあります。

弁護士などから休眠会社の紹介を受けると、売買の全般に渡って専門的な手厚いサポートが受けられる点がメリットとして挙げられます。

また、仲介会社等を介在させないため、費用を節約できる点も長所です。

デメリットとしては、情報を大量に扱う業者に比べ保有している案件数が多くないことが挙げられますが、質の良い休眠会社の情報を持っている場合もあります。

休眠会社売買の流れとポイント

休眠会社を売買する流れとポイントについて簡単に解説します。

休眠会社の売買は、ほとんど書類のやり取りで行われます。

売買の流れは概ね以下のようになります。

  1. 目的の明確化
  2. M&Aアドバイザーの選定
  3. 交渉相手の探索
  4. 基本合意書の作成
  5. デューデリジェンス(DD)の実施
  6. 最終契約
  7. クロージング段階

目的の明確化

まず、休眠会社を購入する目的を明確にしておく必要があります。

目的が曖昧なまま進めてしまうと、どのような基準で会社を探すのか明らかにならず、満足できる結果にならないおそれが生じます。

そのため、目的をはっきりさせてからM&Aを進めることが望まれます。

M&Aアドバイザーの選定

M&Aの過程では、デューデリジェンス(DD)や契約交渉など、様々な専門的知識が必要になります。

自分のみで法務・税務会計・労務等の全てを行うのは、大変な労力を必要としますし、トラブルが発生するおそれもあります。

そのため、弁護士等の専門家とアドバイザリー契約を締結し、スムーズに手続きが進むように備えておく必要があります。

M&Aは機密情報を扱うため、一般的にアドバイザリー契約には秘密保持契約も含まれています。

交渉相手の探索

続いて、交渉相手を探索する段階に入ります。

ターゲット企業の探索には、自社の情報源を活用するほか、専門家や仲介者に依頼することもあります。

売主はノンネームシートと呼ばれる匿名の企業情報を作成し、会社の概要や財務内容などの大まかな情報を提示するのが通例です。

買主は、専門業者等からノンネームシートを取得したり、独自に調査したりすることで、購入する候補の企業を探索します。

ノンネームシートで関心が生じた企業について詳細な情報を得たいときは、IM(インフォメーションメモランダム)などを取得して分析します。

基本合意書の作成

資料に基づいて購入対象の候補を絞り込めたときは、基本合意書の作成に進みます。

休眠会社の場合は、基本合意書を作成する際にトップ面談を行わずに書類のやり取りで終えるのが通例です。

基本合意書では、購入価格やM&Aスキーム、以後の進め方等をまとめます。

デューデリジェンス(DD)の実施

基本合意を締結した後は、デューデリジェンス(DD)を実施します。

デューデリジェンス(DD)は買収監査と呼ばれることもあり、対象企業を法務・税務・財務などの専門的な視点から調査します。

基本合意の段階では顕在化していないリスクが、買収の完了後に現れると大きな損害を被るおそれがあります。

そのような危険性を排除するため、デューデリジェンス(DD)を徹底的に行うことでリスクを明らかにする必要があります。

最終契約

最終契約の段階では、基本合意までの条件にデューデリジェンス(DD)の結果を加え、最終的な条件を確定させていきます。

最終的な条件をもとにして交渉し、最終契約を締結します。

交渉が成立した場合は、表明保証条項やクロージング条項などが盛り込まれた最終契約書が作成されます。

クロージング段階

クロージングの段階では、最終契約書の内容に基づき、売主が所定のクロージング日までに会社を引き渡すために必要な準備を行います。

クロージング日には、会社の購入対価を支払うのと引き換えに株式の譲渡を受け、会社の取得が完了します。
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休眠会社を売買する際の注意点

休眠会社を売買する際には注意すべき点がありますので、ここで解説します。

繰越欠損金の扱い

節税を目的として、休眠会社の繰越欠損金を活用するために会社の取得を検討するケースがあります。

しかし、繰越欠損金の扱いには厳格なルールがあるため注意が必要です。

繰越欠損金については、法人税法57条の2で、休眠会社規制とも呼ばれる制約があります。

この規制では、例えば休眠会社を取得した日から5年以内に新しい事業を開始する場合など、繰越欠損金を利用できない場面が定められています。

休眠会社の繰越欠損金の扱いは複雑なため、慎重な検討が必要になります。

売買費用以外の必要経費

休眠会社の取得には、直接の売買費用以外にも事後的に必要になる経費があります。

代表的なところでは登記費用があります。

取得した会社について、役員・本店所在地・目的・商号などを変更することが考えられますが、これらの登記事項を変更した場合は2週間以内に登記を行う義務があります。

登記をするためには登録免許税が必要になるほか、専門家に依頼する場合は報酬も必要になります。

また、休止していた事業を再開するためには、新規に事業を開始するのと同様の費用が必要になることもあります。

これらの売買費用以外の必要経費についても、留意しておく必要があります。

登記懈怠による過料

登記懈怠とは、登記を怠ったまま放置しているという意味です。

休眠会社は本来すべきであった登記をしていないおそれがあります。

会社法では、登記を怠ったときは100万円以下の過料が科せられることが定められています。

過料はいつ科せられるか定まっていませんので、会社を取得した後に制裁を受けるおそれがあります。

その場合、売主と買主のどちらが負担するか取り決めがない場合には、トラブルになることも想定されます。

休眠会社を購入する際には、登記懈怠についても確認するようにしましょう。

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休眠会社の売買に弁護士が関与するメリット

休眠会社の売買に弁護士が関与するメリットは、大きく分けて以下の3つがあります。
・トラブルの予防
・交渉のサポート
・M&A全般の支援

トラブルの予防

会社の売買では売主と買主の間で把握している情報の量に差があるため、リスクの存在に気づかないまま契約を締結してしまう危険性があります。

M&Aでは重要な契約書を作成する必要がありますが、リスクを反映させずに不備があると、事後にトラブルに発展する可能性があります。

特に、簿外債務が存在していると予期しない損害を被るおそれがあります。

弁護士は、法律の専門家としてデューデリジェンス(DD)や契約書の作成・チェックを行い、法的リスクを明らかにした上で必要な対策をとるので、そのようなリスクを低減することができます。

交渉のサポート

会社を売買するためには、相手企業との条件交渉が必要になります。

交渉はM&Aの成否に大きく影響するため慎重に進めることが重要ですが、単独で交渉を行うと不利益な条件や問題点に気が付かないおそれもあります。

弁護士は、法的知識や経験をもとにして、依頼者の利益になるように交渉をサポートします。

弁護士をM&Aアドバイザーにつけることで、安心して交渉に臨めるようになります。

M&A全般の支援

弁護士事務所の中には、会社売買の全般に渡るサポートを提供しているところもあります。

このような事務所は、M&A戦略の立案や企業のマッチング、デューデリジェンス(DD)、企業価値算定、プロジェクトの進行管理などの必要な業務をまとめて行っているため、ワンストップでM&Aの依頼を行うことができます。

まとめ

この記事では、休眠会社の売買について解説してきました。

休眠会社を購入すると、許認可や資産を取得することができ、事業を立ち上げる際のコストや時間を削減することができます。

休眠会社の売買にはメリットがありますが、デメリットも存在するため、売買を検討している場合は、M&Aを専門分野にしている弁護士に相談してサポートを受けることをお勧めします。

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