M&Aを成功に導くPMIとは?意味や重要性、プロセスから、成功のためのポイントまで解説

  • 2022年8月24日
  • 2024年11月11日
  • M&A

近年、M&Aは増加傾向にあります。一定の法的手続を行えば形式的なM&Aは可能ですが、実際にはM&Aの目的となるシナジー効果を創出するためにはPMIという手続を行うことが重要です。ここでは、PMIについて、その意味やプロセス、成功のためのポイント等を解説いたします。

⇒M&A会社売却をお悩みの方はこちら!

M&AにおけるPMIとは?

PMIとは、「Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)」の略で、主にM&A成立後に行われる統合に向けた作業のことをいいます。

PMIは、統合の目的を実現させ、統合によるシナジー効果を最大限に発揮させるためにとても重要なプロセスです。

PMIの頭文字であるPは「Post(後)」であるためにM&A後に行う作業のことを指すと思われがちですが、M&Aの成立前の事前準備(譲渡企業・譲受企業がその目的を明確化し、現状把握を行う等)も重要なプロセスとなります。

PMIが必要な理由

まずは、M&AにおけるPMIの重要性、必要な理由について解説いたします。

近年のM&Aの動向とPMIの重要性

近年の日本のM&A件数は、増加傾向にあります。

中小企業におけるM&Aも近年増加傾向にあります。というのも、中小企業の経営者の高齢化が年々進んでおり、事業承継への関心が高まっているからです。対して、後継者不在企業の割合は低下傾向にあり、経営者の事業承継に対する意識の変化はここにも見ることができます。

このようにM&Aの件数が増加する一方で、PMIがきちんと行われているケースは少ないと言われています。M&Aは複数の企業が事業統合、連携を行うことでシナジー効果を期待できる一方で、さまざまなトラブルを招くリスクをはらんでいます。プラスの効果を最大限に発揮し、マイナス要因を低減することこそがPMIの役割であり、M&Aの際にはPMIを行うことがとても重要であるといえます。

参考:中小企業庁「2022年版 中小企業白書・小規模企業白書概要」

M&Aによるシナジー効果を最大限に創出

M&Aの主要な目的としては、複数の企業の統合・連携により企業価値を向上させることにあります。この目的を理解したうえで相手方企業の事前検証を綿密に行い、短期・中長期的なビジョンを持つことで、シェアの拡大や経費削減といったシナジー効果を最大限に創出することができます。

PMIを行わないと、こういった本来の効果を十分に得られなかったり、効果が出るまで時間を要してしまう可能性があります。

統合リスクの低減

内外部の混乱を防ぐ

M&Aは異なる複数の企業を統合する結果として、直後は会社全体に混乱が生じやすく、業務上の重大なミスやシステム障害などが発生しやすい状態となります。こういった混乱に即時に対応しなければ、顧客・従業員の信用を失い、統合効果を得るどころか業績の悪化につながりかねません。そのためには、PMIにより、M&Aの初期段階において相手方企業の特性を理解して事前に阻害要因を検証し、統合後のトラブルを未然に防ぐことが重要となります。

企業文化の理解

M&Aによる混乱は業務上のものに限定されません。異なる複数の企業を統合する結果として、企業風土や文化、人事評価制度などの仕組みの違いが従業員同士の摩擦を引き起こす可能性があります。この摩擦が人材流出に及んだ場合、優秀な人材から流出する可能性が高いです。これを回避するためには事前に統合計画を策定し従業員に周知するとともに、従業員が不利益を被らないようにして不安・不満を払拭することが重要となります。

PMIの手法

PMIの重要性について理解したところで、次は具体的なPMIの実質的な手法について解説していきます。PMIの手法は、経営面・制度面・業務面・事業面・意識面の5つの側面に分かれます。

経営面-経営理念・経営体制

M&Aにより構築された新体制を効果的に運用していくためには、まずは経営の軸が必要となります。将来の指針となる経営の方向性を明確化し、経営理念・経営体制を確立し、社内外の関係者に周知することで、協力を得られる環境を作ります。

特に、譲渡企業がワンマン経営で、M&Aにより組織経営に移行する場合には、経営の軸が大きく変わる可能性が高いです。属人的に行われることの多い経営を可視化し、新しい経営ビジョンに落とし込み、譲渡側企業の従業員に周知することが望ましいです。

制度面-各種規則・評価制度・報酬

人事、総務、法務などの領域でも統合が必要となります。特に、就業規則、人事評価制度、報酬制度、退職金制度については従業員の待遇に直接かかわってくるため、変更の要否、時機については細心の注意を払う必要があります。未払い賃金や未消化の有給休暇が存在する場合には、M&Aの際にうやむやにならぬよう支払・有給取得を促します。

また、M&Aにより変化した環境に対応できる人材開発のため、研修制度の充実をはかることも大切です。その他、業績評価制度の見直しを行い、M&Aの効果が計画通りに発現しているかどうか検証できる仕組みを整えます。

業務面-管理系(人事、経理、システム関連)

人事面においては、人員配置の見直しを行うことでノウハウの共有を柔軟に行えるようにすることも重要です。経理面においては、譲渡企業の過去の会計・財務関係の処理の適正性を評価し、是正が必要な場合は早急に対応します。

会計・財務に関する管理規定や、決算手続を早期化する仕組みを整備し、適正な財務基盤を保持する体制を作ります。販売、購買などの業務システムや会計システムの統合など、システム関連の統合には多額のコストが必要となる場合もあります。統合により得られる効果と比較検証しつつ、検討する必要があります。

事業面-商品・サービス、取引先

事業面においては、M&Aによるシナジー効果の創出のため、譲渡企業・譲受企業の顧客、製品・サービスなどの経営資源を相互に活用することによる売上拡大や、重複する管理機能の統合による経費削減などが挙げられます。

具体的には、注力すべき事業の選択、類似商品・サービスなどの統廃合や、取引先の精査、重複する仕入先や資材の分析を行います。また、必要に応じて新部門の創設や、担当する仕事の割り当てを行います。

意識面-従業員の理解、企業文化

意識面についてはこれまでに記述したように、相手方企業との文化の違いや待遇の変化に従業員が不満を抱えないよう新体制を構築すること、統合計画の周知が重要となります。

⇒M&Aで会社をしっかり売却する方法はこちら!

PMIのプロセス

冒頭にも記載しましたが、PMIはM&Aの直後に行う統合作業ではあるものの、M&Aの前の事前準備が非常に重要となります。加えて、段階を進めていくなかで出てくる新たな情報や変化する状況に対応しながら進めていく必要があります。ここでは、各プロセスごとに取り組むべきPMIについて解説していきます。

M&A基本合意前の検討

まず、M&Aの初期段階においては、M&Aの目的を明確化し、成功を定義します。M&A、PMIのプロセスを進める中で、様々な問題・課題に直面しますが、この時立ち返るべき原点を明確にしておきます。

また、何を実現できれば成功といえるかをあらかじめ定義しておくことで、成功に向けた軌道修正を各プロセスで行うことが可能となります。そのうえで、M&A、PMIの計画はなるべく早めに作成します。どのような手順・スキームで統合していくか、DD(デューデリジェンス(DD))での検出事項、業界における競争環境などを総合的に判断して計画を策定します。

デューデリジェンス(DD)後のPMIの策定

M&Aの基本合意締結後、DDを行います。DDの情報をもとにPMI計画の改善を行っていきます。なお、PMI計画の改善はこの後のプロセスにおいても随時行います。

プロジェクトチームの結成

実務担当者、経営企画部門、管理部門から人員を選出し、各方面からM&Aの課題を洗い出せるよう、プロジェクトチームを結成します。担当する仕事の割り当てを行い、各自の進捗状況を共有できるシステムを構築します。また、中小企業においては専門的な知見などが不足することが想定されるため、必要に応じて専門家の支援を得ることも検討しましょう。

課題の洗い出し

M&Aの相手方企業の現状把握は非常に重要です。役員・担当者へのヒアリングを行い、現在の課題を洗い出し、事業の仕組みなどについて確認します。

ランディング・プランの策定・実行

ランディング・プランとは、クロージングしてから3~6ヶ月以内に行うべき統合作業の計画のことをいいます。DDやヒアリング等を通して把握した内容から、行うべき統合作業を洗い出し実行計画を作成します。

このとき、相手方企業の事業のすべてを把握することは難しいため、クロージングまでに何を把握していて、何を把握できていないかを想定しておくことが重要です。また、把握している課題のうち解決すべき優先順位もつけておきましょう。

100日プランの策定・実行

100日プランとは、クロージング後の100日間に行うべき統合作業の計画のことをいい、ランディング・プランをふまえて作成します。ランディング・プランが全体的な計画であるのに対し、100日プランにおいてはより早期かつ短期集中的に行うべき作業を選定して計画を立てます。

自ずと重要度、優先度の高い課題が多くなるでしょう。プランはクロージング後も随時見直しを行い、新たに発見した課題への対応も行います。

PMIを成功させるポイント

ここまで、PMIの手法、プロセス等について解説してまいりましたが、その過程においてPMIを成功させるために意識すべきポイントを6つに絞って解説します。

自社の経営状況の把握

まず1つ目は、自社の経営状況を把握するということです。M&Aの前提として、相手方に自社の情報を提供するわけですが、自社の状況を詳細、的確に把握し相手方に提供しなければ、統合時に発覚した不測の状況への対応に苦慮する可能性があります。</p>

 早期のPMI案の策定

2つ目は、早期にPMI案を策定するということです。M&Aに期待通りの成果を実感している会社の約6割が、PMIの検討を「基本合意締結前」または「DD実施期間中」にPMIの検討を開始しています。

M&Aプロセスの早い段階から検討を開始することでPMIを開始することで、ビジョンが明確になり、交渉の相手方の信頼を得ることにもつながります。M&Aの各段階でPMIの再検討を重ねることもできますし、適切なDDが可能となります。

参考:三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱「【M&A 実態調査】ポストコロナ時代を見据えた M&A 戦略とは」

スケジュール感、優先度

3つ目は、スケジュールを明確にすること、そして優先度を設定することです。スケジュールを作成するにあたっては、何をゴールとするか、すなわち目標を明確に設定する必要があります。

目標を設定することで向かうべき方向性が明確になり、従業員の理解を得られやすくなります。また、各担当者がいつどのタスクをこなすのかを共有することで、作業の漏れがないか確認することができ、進捗状況を可視化することができます。全体像を把握することで解決すべき課題が明確になります。

こうして浮き上がってきた課題は決して少なくないと思われます。しかし、全ての問題に対処することは現実上困難であり、より多くの課題に対処しようと思えばそれほど多くの時間を要することになってしまいます。

そこで、当初の目標を軸として、何を優先に対応していくかの優先順位をつけていき、より効率よくシナジー効果を得られるよう戦略を立てます。まずはM&Aの目的への適合度合いの高いものや、経営への影響の大きいものを最優先します。

また、M&A直後のPMIの集中実施期においては、早期に成果を得られる取組(クイック・ヒット)を優先させることで、従業員のモチベーションの維持にもつながります。

リーダーシップを発揮したトップダウン型推進

4つ目は経営陣がリーダーシップを発揮し、トップダウン形式を採ることです。M&Aにおいて避けることができないのは「変化」そして「決断」です。ところが多くの人は変化を嫌がりますし、変化をもたらす決断は他人に委ねてしまう傾向があります。

従って、経営陣やプロジェクトチームのリーダーが進むべき方向を示し、具体的に指示し統率する必要があります。これがなければ、PMIに遅れが生じ、想定していた効果を得られない可能性があります。

各部署への人材の確保

5つ目は、各部署へ人材を確保することです。M&Aにおいて最も恐れることは、優秀な人材が退職することです。新体制発足時に各部署へ適切な人員を適切な人数配置しなければ、不満から人材の流出を招きかねません。

また、譲渡企業の会社においてPMIを実行する人員を派遣することや、譲渡企業の従業員からもPMIを実行する人を選定する必要があります。

PMIの経験がある人材であれば最も望ましいですが、そうでなければ、譲渡企業の従業員を引っ張っていけるようなリーダーシップのある人を派遣する必要があります。また、譲渡企業の会社のことを理解している人であれば、より望ましいです。

目標・方向性の発信、従業員への浸透

最後は、目標や方向性の従業員への浸透です。PMIの担当者やM&Aによって業務に変化の生じる従業員はもちろん、そうではない従業員も含めて全体に、M&Aの目的や方向性を明確に示して理解してもらう必要があります。相手方企業への個人的なイメージや業績悪化などを懸念して、退職を考える人が出てくるのを防ぐ必要があります。

この点、曖昧なままM&Aが進むと、従業員の憶測による悪い噂が出回ったり、譲渡企業と譲受企業の従業員のコミュニケーションにも支障が生じる可能性があります。

⇒M&A会社売却のリスク回避方法を見る!

PMIにおける譲受企業のポイント

PMIを成功させるポイントは上記のとおりですが、特に譲受企業において意識すべきポイントとしては、譲渡企業への配慮が挙げられます。譲渡企業の経営陣や従業員の理解を得られるようコミュニケーションを心がけることはもちろん、相手方企業のこれまでの方針や考え方に耳を傾け、従来の業務のやり方などを否定せず、尊重するようにしましょう。

優越的地位を利用した高圧的な態度は譲渡企業の不信感を買い、M&Aが途中で頓挫してしまう可能性があります。また、M&A後にどのような変化が生じるかをあらかじめ説明しておき、譲渡企業にとっての想定外な事態を防ぎます。そして何より、譲渡企業の情報を多く得て、企業価値を適正にはかることが重要です。

PMIにおける譲渡企業のポイント

譲渡企業において重要なポイントは、やはり第一に従業員の雇用維持が挙げられます。M&A直後においては特に譲渡側企業の従業員はモチベーションが低下する傾向があるため、M&A後の待遇等をきちんと説明し、理解を得る必要があります。また、取引先は譲受企業と取引を継続することになるため、理解を得られるようあらかじめ説明することが重要です。

PMIの成功事例

実際にPMIによりM&Aを成功させた事例を3つ紹介いたします。

日本電産

同社は、これまでに多数のM&Aを成功させています。企業成長の原動力として昭和59年より令和4年8月現在までに68回もM&Aを実施しています。対象会社の中には技術力があるものの債務超過に陥っている会社も多く、M&Aにより再生に導いています。

成功のポイント

  • 譲渡企業とのコミュニケーション

譲渡企業の従業員との多数の夕食懇談会を通じて現場の本音や不満に耳を傾け、課題を抽出し、改革への熱意を伝えることで現場の理解を得ました。

  • 経費削減のため、コストの見直し

人員削減によらずに赤字から脱却するにはコストの削減が必要不可欠です。細かい部分まで経費を洗い出し、また、日本電産グループでの共同の調達によりコストを低減しました。

楽天

同社は、ECサイト「楽天市場」を核としてグループ企業でプラットフォームを構築し、あらゆる分野のサービスをワンストップで提供しています。「楽天市場」を開設した1997年当時は出店店舗数3店舗、初月の流通総額は32万円という規模でしたが、2022年5月時点では56,000以上の出典店舗数、年間流通総額は3兆円を超える大規模なECサイトに発展しました。

成功のポイント

  • 異業種企業を複数買収し、結びつけ

通信販売事業に始まった「楽天市場」でしたが、金融業、旅行業等の異業種へも参画し、それぞれの分野を結びつける「楽天エコシステム(経済圏)」を形成しました。

異業種参画は、主にその業種を専業とする会社を子会社化することで実行しています。また、それらのM&Aは、他社がまだ積極的にM&Aをしていない2000年代から実行しているため、先行者利益を得ています。「楽天エコシステム(経済圏)」構想の実現によりそれぞれの分野を結びつけることで売上増大、コスト削減を実現し、シナジー効果を創出しました。

新栄工業によるアポロ工業の買収

中小企業のM&Aでは、譲渡企業の後継者不在による廃業を防ぎ、譲受企業の事業拡大という目的を達成するためにM&Aを行うケースが多数あります。新栄工業によるアポロ工業の買収もその1例で、雇用継続、技術の継承だけでなく収益向上にもつながり、シナジー効果を創出しています。

成功のポイント

  • 両社の課題解決に直結している

両社とも金属プレス加工メーカーですが、アポロ工業は上述のとおり事業存続の困難という課題を抱えており、新栄工業は事業領域の拡大という目的を持っていました。

経営者同士だけでなく、アポロ工業の従業員も雇用継続を望んでおり、同業であることから親和性も高いといえます。自社の課題を明確にし、相手方へ伝達し、M&Aにいたった成功例です。

  • 適格なPMIの実施

中小企業M&Aとはいえ、単に合体し吸収して終了するのではなく、勤務体制等の制度面から品質に対する考え方等の事業面の相違を洗い出し、シナジー効果の最大化に向けての取組みを行いました。

また、譲渡企業であるアポロ工業は社名を残し、旧来の信頼を失わぬよう顧客分析も行い、顧客の喪失を防いでいます。また、異なる企業文化を無理に統一することはせず、相手方を尊重しながら徐々に統一化を進めるという選択も功を奏しているといえます。

PMIの失敗事例

PMIの失敗により、M&Aが失敗に陥った例についても2つ紹介いたします。

パナソニックによる三洋電機の買収

パナソニックは2009年、三洋電機の議決権株式の過半数を取得し連結子会社化、2011年には完全子会社化しました。「SANYO」は「Panasonic」へ製品統合を進め、国内最大手電機メーカーとなり業績の向上を目指しましたが、買収から2年後には三洋電機の企業価値は半値近くまで下落し、巨額の投資損失が生じる結果となりました。

失敗の原因

  • 期待事業の価値の低迷

パナソニックは三洋電機の事業の中でもリチウムイオン電池事業に期待しM&Aを進めようとしましたが、大きな市場であるアメリカにおける独占禁止法の審査の遅れにより子会社化までに1年を要してしまいました。

その間に中国や韓国のメーカーが台頭することで製品価格が下落し、円高が競争力の低下に拍車をかけ、それに伴って三洋電機の企業価値も下落しました。赤字事業の補填のため、その他の事業を売却し、残った事業でも早期退職等により人員削減が進められ、優秀な人材の多くが流出する結果となりました。PMIの観点においては、「事業面」:事業の成長性を図れていなかったことや、「人事面」:役員クラスや優秀な人材の多くが流出したことが失敗の大きな要因といえます。

キリンHDによるスキンカリオール社の買収

キリンHDは2011年、ブラジルのビール大手であるスキンカリオール社の持株会社であるアレアドリ社の株式を取得し、子会社化を試みました。新たな海外市場の基盤を獲得することが狙いでしたが、スキンカリオール社の他の株主であるジャダンジル社が、相談なしにキリンHDに株式譲渡したことは定款違反であるとして無効を求める裁判を提訴しました。結果として取下げ合意にいたり完全子会社化できたものの、買収総額は当初予定の1.5倍に跳ね上がり、また、2014年ごろから販売数量が減少、2015年には約1,100億円の特別損失を計上。最終的には2017年にハイネケン社に770億円で赤字売却することとなりました。

失敗の原因

  • 経営者環境の分析不足

スキンカリオール社は同族経営であり、経営をめぐる創業家間の争いで有名でした。キリンHDもそれを把握していたようですが、訴訟案件にいたるようなリスクを秘めているという危機意識を十分にもって経営判断すべきであったといえます。

  • 競合分析、DD不足

買収の段階でスキンカリオール社のブラジル市場ビール販売量は2位であったものの、シェアは15%とあまり高くなく、1位のアンベブ社がシェア60%で一強を極めていました。

買収時の財務状況も期待ができるような状況ではなかったにもかかわらず、現地経営を信頼しての経営を続ける中、市場競争の激化やブラジル経済の低迷も伴い3位に後退、自主再建を進める中でハイネケン社に買収される結果となりました。競合分析・DDを入念に行い、M&A自体の断念、または課題に対応できるよう経営方針に刷新するなどの対応をすべきであったと考えられます。

⇒M&A会社売却をお悩みの方はこちら!

まとめ

ここまで、M&AにおけるPMIの意味から、手法、プロセス等についてご紹介してきました。M&Aの目的や手法によって対処すべき課題も異なり、PMIは経験者にとっても難しい作業となります。成功に向けて、まずは早期に準備に取り掛かり、上記を踏まえたうえで解消できない点については専門家への相談をおすすめいたします。

お問い合わせ   

この記事に関連するお問い合わせは、弁護士法人M&A総合法律事務所にいつにてもお問い合わせください。ご不明な点等ございましたら、いつにてもお問い合わせいただけましたら幸いです。

    ■対象金額目安

    ■弁護士相談料【必須】

    ■アンケート

    >お気軽にお問い合わせください!!

    お気軽にお問い合わせください!!

    M&A相談・株式譲渡契約書・事業譲渡契約書・会社分割契約書・デューデリジェンスDD・表明保証違反・損害賠償請求・M&A裁判訴訟紛争トラブル対応に特化した弁護士法人M&A総合法律事務所が、全力でご協力いたします!!

    CTR IMG