役員の免責|株式譲渡契約書を逐条解説!

  • 2019年5月13日
  • 2024年11月6日
  • M&A

株式譲渡契約書の逐条解説 役員の免責

弁護士法人M&A総合法律事務所のM&A契約書類のフォーマットはメガバンクや大手M&A会社においても、頻繁に使用されています。
ここに弁護士法人M&A総合法律事務所の株式譲渡契約書のフォーマットを掲載しています。
M&Aを検討中の経営者の皆様でしたらご自由にご利用いただいて問題ございません。
ただし、M&A案件は個別具体的であり、このまま使用すると事故が起きるものと思われ、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
また、このフォーマットは弁護士法人M&A総合法律事務所のフォーマットのうちもっとも簡潔化させたフォーマットですので、実際のM&A取引において、これより内容の薄いDRAFTが出てきた場合は、なにか重要な欠落があると考えてよいと思われますので、やはり、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。

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なお、詳細な解説につきましては、以下の弊所書籍「事業承継M&Aの実務」をご覧ください。

株式譲渡契約書の逐条解説 役員の免責

■■■第15条■■■■■■■■■■

第15条  (役員の免責)

買主は、株主としての権利行使その他方法の如何を問わず、対象会社の役員による対象会社の役員としての一切の作為又は不作為に関し、当該役員に対して何らの責任も追及してはならず、損害賠償請求権その他の権利を放棄するものとし、かつ、対象会社その他の第三者をしてかかる責任の追及をなさしめてはならなず、損害賠償請求権その他の権利を放棄させるものとする。

第15条は、対象会社の役員の免責に関する遵守条項である。

役員の免責に関する遵守条項について

事業承継M&Aにおいては、通常、対象会社のオーナー経営者は売主であり対象会社の社長である。

戦後まもなく創業し、そのまま会社を経営している場合もあれば、高度成長時代に会社を相続し、長期間、対象会社を経営してきたオーナー経営者が多く存在する。

昭和というのは平成に比べればかなりおおらかな時代であったようで、会社のガバナンスもしっかりしていないし、おおざっぱな事業運営をしていても何とかなった時代のようである。もちろん、オーナー経営者は、当然のように、社長として、会社資産を流用などをしていた。対象会社のオーナー経営者なのであるから、会社資産を流用などをしても問題ないのであるが、少数株主などが存在していた場合、問題が残るのである。

すなわち、会社の役員が善管注意義務違反を行った場合、会社に対して損害賠償責任を負う(会社法423条[1])が、株主全員の同意があれば免責されるものとされており(会社法424条[2])、オーナー経営者は対象会社株主であることから免責されてしかるべきあるが、少数株主が存在した場合などは、制度上、免責されないこととなる。会社法425条から427条まで株主総会による免責、定款の責任免除条項による免責、責任限定契約による免責などの規定が存在するが、これらは、特に、会社との利益相反取引には適用がない(会社法428条[3])。

旧オーナー経営者である売主としては、事業承継M&Aを迫られ、事業承継M&Aの結果、対象会社を買主に売却し、買主が対象会社のオーナーとなり、対象会社から、旧オーナー経営者である売主に対いて、善管注意義務違反などの経営責任を追及される可能性があるのでは、安心して事業承継M&Aを実行できない。また、旧オーナー経営者としては、買主の希望に応じて対象会社を売却したにも拘わらず、また、その買主が何ら損失を被っていないにも拘らず、責任追及されるということになっては、何のために対象会社を売却したのか分からない事態を招くこととなる。旧オーナー経営者としては、過去の会社資産の流用などを理由に、対象会社から責任追及される可能性があるのであれば、対象会社の売却を取り止めようとするのはごく自然である。

したがって、売主としては、買主に対して、対象会社の役員の免責に関する遵守条項を遵守して頂く必要があるのである。

事業承継M&Aの失敗と旧役員の責任の追及

買主としては、対象会社に対して、デューデリジェンス(DD)を実施して、事業承継M&Aを実行しているはずである。いまどきデューデリジェンス(DD)を実施せずに事業承継M&Aを実行したため、対象会社の問題点に気づかなかったなどという言い訳は通らない。買主は、対象会社のデューデリジェンス(DD)を実施して対象会社を買収したのであり、旧オーナー経営者の会社資産の流用などは前提としたうえで、対象会社を買収しているのであり、また、対象会社の現在の決算書をベースに対象会社を買収しているのであるから、粉飾決算などがない限りは、買主の想定した対象会社の企業価値(旧オーナー経営者の会社資産の流用を前提)が毀損されることはなく、買主の株式譲渡価格の前提を崩すような事態は生じない。

筆者らに実際に相談のあったケースでは、旧オーナー経営者が対象会社と取引を行っていることも多く、そのような取引は、会社法356条[4]上の利益相反取引に該当し、会社法424条上、株主の全員の同意がなければ免責されない。

買主としては、これを根拠に、株主の同意書がないため免責されていないとして、旧オーナー経営者の責任追及をしてくることもあり、また、ごく一部の少数株主の同意がないため免責されていないとして、旧オーナー経営者の役員の責任追及をしてくることもある。

特に、買主としては、事業承継M&Aを実行した結果、対象会社の業績が想定外であったとか、対象会社とのシナジーが想定外であったとか、事業承継M&Aが失敗であると感じた場合、とにかく、何につけても、理由をつけて、旧オーナー経営者である売主の責任を追及し、事業承継M&Aの失敗の損失を補填させようとして、これが使用されること多い。

特に、買主としても、対象会社に対して、デューデリジェンス(DD)を実施して、事業承継M&Aを実行しているはずである。いまどきデューデリジェンス(DD)を十分に実施せずに事業承継M&Aを実行したため、事業承継M&Aが失敗したため、旧オーナー経営者に対して損害賠償責任・補償責任をするなどということは困難なのであり、対象会社の現在の決算書をベースに対象会社を買収しているのであるから、株式譲渡価格の前提を崩すような事態は生じないため、経済的も、旧オーナー経営者に対して損害賠償責任・補償責任する理由もない。そこで、買主としては、事業承継M&Aに失敗した場合、自己責任であることを顧みることなく、旧オーナー経営者の役員の責任追及をしてくることが多いことから、売主としては、買主に対して、対象会社の役員の免責に関する遵守条項を遵守して頂く必要があるのである。

[1]会社法423条(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)

1 取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

2 取締役又は執行役が第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第三百五十六条第一項第一号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。

3 第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。

一 第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役

二 株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役

三 当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(指名委員会等設置会社においては、当該取引が指名委員会等設置会社と取締役との間の取引又は指名委員会等設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)

4 前項の規定は、第三百五十六条第一項第二号又は第三号に掲げる場合において、同項の取締役(監査等委員であるものを除く。)が当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、適用しない。

[2]会社法424条 (株式会社に対する損害賠償責任の免除)

前条第一項の責任は、総株主の同意がなければ、免除することができない。

[3]会社法428条(取締役が自己のためにした取引に関する特則)

1 第356条第1項第2号(第419条第2項において準用する場合を含む。)の取引(自己のためにした取引に限る。)をした取締役又は執行役の第423条第1項の責任は、任務を怠ったことが当該取締役又は執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができない。

2 前3条の規定は、前項の責任については、適用しない。

[4]会社法356条(競業及び利益相反取引の制限)

1 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。

三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。

2 民法第108条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号の取引については、適用しない。

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