株式譲渡契約書の逐条解説:株式の表明保証
弁護士法人M&A総合法律事務所のM&A契約書類のフォーマットはメガバンクや大手M&A会社においても、頻繁に使用されています。
ここに弁護士法人M&A総合法律事務所の株式譲渡契約書のフォーマットを掲載しています。
M&Aを検討中の経営者の皆様でしたらご自由にご利用いただいて問題ございません。
ただし、M&A案件は個別具体的であり、このまま使用すると事故が起きるものと思われ、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
また、このフォーマットは弁護士法人M&A総合法律事務所のフォーマットのうちもっとも簡潔化させたフォーマットですので、実際のM&A取引において、これより内容の薄いDRAFTが出てきた場合は、なにか重要な欠落があると考えてよいと思われますので、やはり、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
なお、詳細な解説につきましては、以下の弊所書籍「事業承継M&Aの実務」をご覧ください。
株式譲渡契約書の逐条解説:株式の表明保証
■■■別紙1第2■■■■■■■■■■
別紙1の第2項は、対象株式に関する表明保証である。 (1) 対象株式に関する表明保証について本契約は、株式譲渡契約であり、取引の対象物は、対象株式であるため、対象株式について、一定の必要な前提事実が揃っていることが非常に重要となることから、株式譲渡契約書においては、対象株式に関する表明保証の規定を設けることが一般的である。 その具体的な、対象株式に関する表明保証であるが、最も重要なのは、対象株式が適法かつ有効に発行されていることである。 (2) 対象株式の有効性に関する表明保証について第1号において、この対象株式が適法かつ有効に発行されていることの表明保証がなされている。対象株式が適法かつ有効に発行されたものではないのであれば、その対象株式は無効であり、この株式譲渡は成り立たない。 また、事業承継M&Aにおいては、対象株式は、対象会社の発行済み株式の全部であることが一般的であるが、全部ではなく一部であることもまま存在する。売主が少数株式をまとめきれない場合や、買主としては過半数又は3分の1超の株式を取得することができさえすれば、対象会社の経営を支配することができるため、それでよしとする場合も多い。 そういう意味で、対象株式の株式数は、第2条で明記されるものの、対象会社の発行済み株式総数数は何株なのか(すなわち、結果として、対象株式は、対象会社の株式の何%なのか)、を売主には表明保証して頂く必要がある。 また、新株予約権などの潜在株式についても、売主には表明保証して頂く必要がある。潜在株式は、法律用語ではないため、本来は定義が必要であるが、一般的には、新株予約権や、旧商法の時代における新株引受権、契約に基づき新株式を発行する義務を負っている場合のその権利、その他新株予約権類似の株式転換権のような権利全てを含む概念である。そのような潜在株式が存在する場合は、将来的に、対象株式の株式割合が変動する可能性があり、そのままでは、買主の目的(事業承継M&Aの目的)が達成されない可能性があるため、売主には潜在株主が存在しない旨を表明保証して頂く必要がある。 もし仮に、対象会社に潜在株主が存在するのであれば、その潜在株式数や権利内容などを特定し、表明保証して頂くとともに、株式譲渡に伴うその処理方法について、株式譲渡契約書の中に約束条項を規定する必要があるものと思われる。 (3) 対象株券の有効性に関する表明保証について第2号は、株券の真正に関する表明保証である。 現行会社法上、株式会社は、原則として、株券不発行会社となっているが、株券発行会社としている会社も多く存在する。そのような株券発行会社においては、株式譲渡の有効要件として、売主から買主に対する株券の引き渡しが必要となる(会社法128条[1])。株券を引き渡さないと株式譲渡が実行できないのである。そうである以上、株券の真正は、株式譲渡において決定的に重要である。したがって、売主に対しては、株券の真正について表明保証して頂く必要がある。 (4) 対象株式の株主に関する表明保証について第3号は、売主が対象株式全ての所有者であることを確認する表明保証である。株式譲渡を行う以上、当然の前提ではあるものの、表明保証とは、本件取引を実行する前提を規定するものであることから、当然、これも表明保証の対象となる。 なお、取引によっては、売主が対象会社の株式のすべてを保有していない場合、複数又は多数の少数株主が存在する場合、売主が少数株主などから対象株式を買い集めたのち、その買い集めた株式も含め売主が保有するすべての対象株式を買主に譲渡する取引を行うことがある。その場合、第3号の表明保証としては、売主が株式譲渡の実行の時点(クロージングの時点)までに対象株式すべてを買い集めることを前提に、クロージングの時点に限定して表明保証を行うということとなる。 (5) 対象株式の担保権等の負担の不存在に関する表明保証について第4号は、担保権等の負担の不存在に関する表明保証である。 買主としては、対象会社の株式として、質権や譲渡担保権などの負担が存在しない、完全な株式を保有したいと考えることが通常である。対象株式に質権や譲渡担保権などの負担が付着している場合、買主は、その対象株式を最終的又は将来的に保有できなくなることも考えられるし、株主権を行使しようとする場合、自由に行使できないこととなる可能性も存在する。 したがって、株式譲渡契約書においては、売主に、対象株式に、質権や譲渡担保権などの負担が付着していないことを表明保証して頂く必要がある。 また、もし仮に、対象株式に質権や譲渡担保権などの負担が付着していた場合は、売主は、クロージングまでに、その負担を除去して頂く必要があり、株式譲渡契約書においても、そのような遵守条項などを規定する必要がある。 (6) 対象株式の株式譲渡の手続きの履行に関する表明保証について第5号は、株式譲渡の手続きの履行に関する表明保証である。 事業承継M&Aにおいては、対象株式は、通常、譲渡制限株式であり、対象株式を買主に譲渡するためには、対象会社の取締役会又は株主総会の承認が必要である。 株式譲渡契約書には、売主の義務として、対象会社の取締役会又は株主総会の承認を、クロージングまでに取得する義務が約束条項として規定されているものの、株式譲渡の当然の前提事項であることもあり、売主には、重複になるものの、対象会社の取締役会又は株主総会の承認をクロージング時において取得完了していることを表明保証して頂いている。 また、第5号は、もし、対象会社において、株式譲渡の手続きとして、それ以外の手続きも必要な場合は、その手続きの履践完了していることを表明保証して頂いている。 [1] 会社法128条(株券発行会社の株式の譲渡)1 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。 2 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。 |