会社分割方式(株式交付型)契約書の逐条解説 会社分割
弁護士法人M&A総合法律事務所のM&A契約書類のフォーマットはメガバンクや大手M&A会社においても、頻繁に使用されています。
ここに弁護士法人M&A総合法律事務所の会社分割方式(株式交付型)契約書のフォーマットを掲載しています。
M&Aを検討中の経営者の皆様でしたらご自由にご利用いただいて問題ございません。
ただし、M&A案件は個別具体的であり、このまま使用すると事故が起きるものと思われ、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
また、このフォーマットは弁護士法人M&A総合法律事務所のフォーマットのうちもっとも簡潔化させたフォーマットですので、実際のM&A取引において、これより内容の薄いDRAFTが出てきた場合は、なにか重要な欠落があると考えてよいと思われますので、やはり、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
なお、詳細な解説につきましては、以下の弊所書籍「事業承継M&Aの実務」をご覧ください。
会社分割方式(株式交付型)契約書の逐条解説 会社分割
■■■前文■■■■■■■■■■
前文である。 株式譲渡契約書と同趣旨であり、説明は省略する。 なお、会社分割方式(株式交付型)であることを明示している。 ■■■第1条■■■■■■■■■■
第1条は、定義に関する規定である。 株式譲渡契約書と同趣旨であり、説明は省略する。 なお、会社分割方式(株式交付型)であることから、会社分割に関する定義も含まれている。 ■■■第2条■■■■■■■■■■
第2条は、会社分割及び株式の譲渡に関する規定である。 本契約は、対象事業を会社分割により新設する対象会社に承継させ、その対象会社の株式を譲渡するための会社分割方式(株式交付型)の株式譲渡契約書であることから、会社分割により新設する対象会社の株式を譲渡することを、端的に明示している。 株式譲渡契約書と同趣旨であり、説明は省略する。 なお、会社分割方式(株式交付型)であることを明示している。 ■■■第3条■■■■■■■■■■
第3条は、会社分割の方法に関する規定である。 会社分割の方法について会社分割のためには、新設分割の場合は、会社法762条及び763条に基づき新設分割契約書を、吸収分割の場合は、会社法757条及び758条に基づき吸収分割契約書を作成し、新設分割の場合は、会社法803条から812条に基づき、吸収分割の場合は、会社法782条から802条に基づき、組織再編としての、会社分割手続きを行う必要がある。 新設分割計画書・吸収分割契約書について新設分割計画書・吸収分割契約書は、法定書面であり、会社法により、詳細に規定事項が規定されており、また、会社分割の効力発生後には、登記申請添付書類として、法務局へ提出することが必要となる。 そこで、本条では、別紙1において、新設分割契約書を作成して添付することとなる。また、新設分割計画書には、実務上一般的に、承継権利義務明細書を添付し、事業譲渡方式の場合と同様、その中で、承継対象資産・承継対象負債・承継対象契約・承継対象従業員・承継対象許認可について、個別に列記している。 この承継権利義務明細書において、承継対象資産・承継対象負債・承継対象契約・承継対象従業員を個別具体的に明記し特定するか、あるいは、対象事業に関する資産・負債・契約・従業員といった形に概括的に記載する程度にするかは、新設会社が、分割会社の簿外債務を承継してしまうか否かにかかってくるため、承継権利義務明細書の記載には特に注意が必要である。 新設分割・吸収分割の手続きについてまた、会社分割は、会社法上の組織再編行為であることから、会社分割の手続きについても詳細に規定されている。 すなわち、会社法上、会社分割のためには、事前備置書類の備置、株主総会の承認決議、債権者異議催告手続き(官報公告手続き及び個別通知手続きを含む)、株主通知手続き、反対株主の株式買取請求権、会社分割登記、事後備置き書類の備置などの手続きが必要であり、このスケジュールについても会社法に厳格に定められている。また、会社分割は、労働契約書承継法も適用があり、同法に基づき、労働者通知や労働者異議の制度が存在する。 会社分割のスケジュールについて、特に留意すべきであるのは、債権者異議催告手続きと、それに関連する官報公告手続き、会社分割登記の手続きである。 債権者異議催告手続きとしては、会社分割の効力発生の1ヶ月前までに債権者異議催告(官報公告手続き及び個別通知手続き)を行う必要があり、この官報公告のためには、官報公告の原稿の作成及び入稿、個別通知の関係でも、対象会社の債権者を抽出し、会社名と所在地を確認し、個別の債権者異議催告書を作成し、郵便で発送の準備を行う必要がある。 なお、会社分割の株主総会の承認決議に際しては、会社法785条・797条・806条[1]において、反対株主の株式買取請求権が規定されており、売主に敵対的少数株主が存在するような場合は、反対株主の株式買取請求権を行使され、売主としては、その結果、反対株主の保有する株式を買い取る必要が生じる可能性や、株式買取価格について争いになった場合、株式買取価格決定申立が行われ、裁判になる可能性にも注意する必要がある。 また、会社分割登記手続きであるが、新設分割においては、会社分割登記申請が、効力発生要件となっていることから、会社分割登記を申請しない限り、会社分割の効力が発生しない。また、吸収分割においても、会社分割登記が会社分割の対抗要件とされている。この会社分割登記手続きであるが、登記申請添付書類が多岐にわたる。特に注意を要する点としては、債権者異議催告手続きの官報公告の官報の原本を添付する必要がある。また、個別通知との関係では、債権者異議催告の個別通知を発送した先の債権者のリストを、代表取締役の上申書の形式で押印し添付する必要もある。 その他、事前備置書類として、記載すべき事項も多岐に渡っており、事業承継M&Aの専門家の助力なくしては、対応できない手続きであると思われる。 会社分割に必要な日数について会社分割手続きは、上記のとおり、会社法上の組織再編手続きであり、手続きが厳格に規定されているともに、労働者契約承継法の適用もあり、会社分割登記も必要であることから、否応なく、日数が必要であり、厳格なスケジュール管理が必要である。 特に、ボトルネックになるのが、債権者異議催告手続きであり、債権者異議催告手続きとしては、会社分割の効力発生の1ヶ月前までに債権者異議催告(官報公告手続き及び個別通知手続き)を行う必要があり、この官報公告のためには、対象会社がそれまで決算公告などの官報公告を行ったことがあるかないかによって、新規登録手続きに日数が必要な関係で、必要な日数が異なるものの、公告日の15日ほど前までに、官報販売所に官報公告の原稿を入稿する必要がある。また、個別通知の関係でも、対象会社の債権者を抽出し、会社名と所在地を確認し、個別の債権者異議催告書を作成し、郵便で発送の準備を行う必要がある。また、会社分割のスケジュールとしても、法定の手続きであり、間違いは許されないため、また手続きに間違いがあった場合、会社分割無効原因になる可能性もあり、余裕を持った日程を組む必要があろう。そう考えると、会社分割手続きには、正確に行う自信があるのであれば1ヶ月強で足りるものの、一般的には、2ヶ月程度は必要であると考えるべきである。 会社分割と包括承継会社分割は、事業譲渡と異なり、包括承継と呼ばれており、分割会社から新設会社・承継会社に対して、対象事業の権利義務が、包括して承継される手続きであるとされる。 したがって、分割会社から、新設会社・承継会社に対する、資産の所有権の承継に、特段の手続きは必要ではなく、債権譲渡のために、債権譲渡通知などは必要ではなく、契約締結上の地位の移転のために、契約当事者の承諾は必要なく、従業員の転籍のために、従業員の承諾も必要ない。 会社分割の効力が発生すると、新設分割計画書・吸収分割契約書の添付承継権利義務明細書に記載の権利義務(対象資産・対象負債・対象契約・対象従業員)が、分割会社から新設会社・承継会社に対して、承継されるのである。 個別の対抗要件の取得の必要性しかし、対抗要件については別である。 例えば、通常の不動産の取引において、不動産売買契約書の効力が発生すれば、不動産の所有権は移転するものの、所有権移転登記を行わないと、買主は、その不動産の所有権の移転を第三者に対して対抗することができず、その不動産は、その第三者からの差し押さえの対象となるのである。 会社分割も同様であり、会社分割の効力が発生すれば、不動産の所有権は移転するものの、所有権移転登記を行わないと、対象会社(承継会社)は、その不動産の所有権を第三者(分割会社の債権者)に対して対抗することができず、第三者(分割会社の債権者)からの差し押さえの対象となるのである。 そこで、本条3項においては、会社分割の対象資産について、登記、登録、引渡及び対抗要件の具備その他の一切の行為を求めている。 会社分割は、事業譲渡と異なり、包括承継と呼ばれており、分割会社から新設会社・承継会社に対して、対象事業の権利義務が、包括して承継される手続きであるとされ、包括承継なのであれば、登記、登録、引渡及び対抗要件の具備その他の一切の行為などなくても、第三者(分割会社の債権者)に対抗可能なのでないかとも思われるものの、実際はそうではなく、対象資産ごとに、対抗要件の取得も必要となる。 承継対象資産として、会社分割により、対象会社(承継会社)に対して、不動産を承継させたとしても、不動産の移転登記をしない限り、第三者(分割会社の債権者)に対して対抗することができず、第三者(分割会社の債権者)からの差し押さえの対象となるのである。これは、売掛金や貸付金、銀行預金などの債権についても同じであり、別途、確定日付のある債権譲渡通知を行わない限り、第三者(分割会社の債権者)に対して対抗することができず、第三者(分割会社の債権者)からの差し押さえの対象となるのである。 この点、会社分割を行うのであれば、たいてい、関係者に対して通知は行うものの、確定日付ある通知までは行うことは多くはなく、確定日付ある通知を行わない限り、第三者対抗要件を取得することができないため、第三者(分割会社の債権者)からの差し押さえの対象となってしまう。会社分割を行ったのに、貸付債権や銀行預金債権を差し押さえられたというケースがままあるのは、このためであり、注意が必要である。 他方、契約については、契約の移転について、会社分割の効力が発生していればよく、契約の相手方の承諾も不要であり、特段、第三者対抗要件は不要である。 また、保険については、債権でもあるし、契約でもあると思われるが、保険自体は契約であることに相違なく、解約に伴い具体的な還付請求権が発生した場合は、具体的な債権が発生するのであり、そのような場合は、対抗要件の取得が必要となるものと思われる。 [1] 会社法806条(反対株主の株式買取請求) 1 新設合併等をする場合(次に掲げる場合を除く。)には、反対株主は、消滅株式会社等に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。 一 第804条第2項に規定する場合 二 第805条に規定する場合 2 前項に規定する「反対株主」とは、次に掲げる株主をいう。 一 第804条第1項の株主総会(新設合併等をするために種類株主総会の決議を要する場合にあっては、当該種類株主総会を含む。)に先立って当該新設合併等に反対する旨を当該消滅株式会社等に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該新設合併等に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。) 二 当該株主総会において議決権を行使することができない株主 3 消滅株式会社等は、第804条第1項の株主総会の決議の日から2週間以内に、その株主に対し、新設合併等をする旨並びに他の新設合併消滅会社、新設分割会社又は株式移転完全子会社(以下この節において「消滅会社等」という。)及び設立会社の商号及び住所を通知しなければならない。ただし、第1項各号に掲げる場合は、この限りでない。 4 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。 5 第1項の規定による請求(以下この目において「株式買取請求」という。)は、第3項の規定による通知又は前項の公告をした日から20日以内に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。 6 株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、当該株式の株主は、消滅株式会社等に対し、当該株式に係る株券を提出しなければならない。ただし、当該株券について第223条の規定による請求をした者については、この限りでない。 7 株式買取請求をした株主は、消滅株式会社等の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。 8 新設合併等を中止したときは、株式買取請求は、その効力を失う。 9 第133条の規定は、株式買取請求に係る株式については、適用しない。 会社法807条(株式の価格の決定等) 1 株式買取請求があった場合において、株式の価格の決定について、株主と消滅株式会社等(新設合併をする場合における新設合併設立会社の成立の日後にあっては、新設合併設立会社。以下この条において同じ。)との間に協議が調ったときは、消滅株式会社等は、設立会社の成立の日から60日以内にその支払をしなければならない。 2 株式の価格の決定について、設立会社の成立の日から30日以内に協議が調わないときは、株主又は消滅株式会社等は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。 3 前条第七項の規定にかかわらず、前項に規定する場合において、設立会社の成立の日から60日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、株主は、いつでも、株式買取請求を撤回することができる。 4 消滅株式会社等は、裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。 5 消滅株式会社等は、株式の価格の決定があるまでは、株主に対し、当該消滅株式会社等が公正な価格と認める額を支払うことができる。 6 株式買取請求に係る株式の買取りは、設立会社の成立の日に、その効力を生ずる。 7 株券発行会社は、株券が発行されている株式について株式買取請求があったときは、株券と引換えに、その株式買取請求に係る株式の代金を支払わなければならない。 |