解除条項|株式譲渡契約書を逐条解説!

  • 2019年5月13日
  • 2024年10月27日
  • M&A

株式譲渡契約書の逐条解説:解除条項

弁護士法人M&A総合法律事務所のM&A契約書類のフォーマットはメガバンクや大手M&A会社においても、頻繁に使用されています。
ここに弁護士法人M&A総合法律事務所の株式譲渡契約書のフォーマットを掲載しています。

M&Aを検討中の経営者の皆様でしたらご自由にご利用いただいて問題ございません。
ただし、M&A案件は個別具体的であり、このまま使用すると事故が起きるものと思われ、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。

また、このフォーマットは弁護士法人M&A総合法律事務所のフォーマットのうちもっとも簡潔化させたフォーマットですので、実際のM&A取引において、これより内容の薄いDRAFTが出てきた場合は、なにか重要な欠落があると考えてよいと思われますので、やはり、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。

なお、詳細な解説につきましては、以下の弊所書籍「事業承継M&Aの実務」をご覧ください。

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株式譲渡契約書の逐条解説:解除条項

■■■第22条■■■■■■■■■■

第22条  (解除)

売主及び買主は、相手方に重大な表明保証違反があることが判明し、その結果本契約を維持することが困難になった場合、相手方に本契約上の重大な義務の違反があり、当該当事者に対する書面による催告後その違反が是正される見込みがない場合、又は相手方について、破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始その他これらに類する法的倒産手続きの申し立てがなされた場合には、クロージング日前に限り、相手方に対して書面で通知して本契約を解除することができる。

第22条は、株式譲渡契約書の解除規定である。

株式譲渡契約の解除について

株式譲渡契約も、契約である以上、契約の解除条項は存在する。

株式譲渡契約にも、一般的な契約と同様、契約の相手方に遵守条項違反を含む債務不履行がある場合は、契約は解除されてしかるべきである。また、契約の相手方に債務不履行が生ずることが確実である場合、例えば、契約の相手方が倒産状態に陥ったような場合、契約は解除されてしかるべきである。

また、買主が、株式譲渡代金を支払えないことが確実になった場合のように、債務不履行が確実になった場合も解除されてしかるべきかもしれない。売主であるオーナー経営者としては、そのような買主との契約は早々に解除して、新しい信用力のある買主を探したいと考えてしかるべきである。

表明保証違反などによる株式譲渡契約の解除と損害賠償責任・補償責任について

その他、株式譲渡契約書に特有の解除事由は、表明保証違反があった場合である。表明保証違反があるということは、株式譲渡の前提条件が満たされないということであり、そもそも買主の株式譲渡の実行義務が発生しないことが多く、また、買主としてもそのような株式譲渡を実行して対象会社を買収しても、想定通りにはならず、買主の想定する株式譲渡価格の前提を欠くため、不利益を被る可能性が高いため実行したくないのである。

他方、売主と買主は株式譲渡の実行のために、それまでの間、時間と労力と資金を投入して交渉し、多大なるエネルギーを費消して株式譲渡契約書の締結にも至っているのであるから、売主から見ると、表明保証違反があっても、それが重大なものでない限り、株式譲渡契約書は解除まではせずに、クロージングは行った上で、買主が被るであろう表明保証違反などによる損害は、表明保証違反などによる損害賠償責任・補償責任により事後的に調整することも可能であり、この方が経済的である。

また、契約の解除という、影響の大きい方法を採用するのではなく、表明保証違反などに基づく損害賠償責任・補償責任により、当事者の利害関係を適切に調整できる可能性も高い。表明保証違反などが存在し、株式譲渡を実行することで、当事者に取り返しのつかない損害が発生しない限り、株式譲渡を実行しつつ、表明保証違反に基づく損害賠償責任・補償責任により利害関係を調整したほうが良い場合は多いであろう。

表明保証違反などによる株式譲渡契約の解除と前提条件に基づく株式譲渡の実行の延期について

また、表明保証違反の場合には、株式譲渡の前提条件が充足されないわけであるから、買主としては、株式譲渡の実行を延期しつつ、売主に表明保証違反への対処を求め、それが解消した場合に(あるいはそれが一定程度解消した場合に)、株式譲渡を実行し、それでも発生した表明保証違反に基づく損害については、損害賠償責任・補償責任により調整するというように、株式譲渡契約書においては、前提条件条項・補償条項・解除条項により、売主と買主の利害を調整しつつ、株式譲渡が実行することが好ましい場合が多い。

とはいえ、事業承継M&A実務上、株式譲渡の前提条件を充足されていないことを理由に一度延期された株式譲渡を、再度軌道に乗せて、株式譲渡の実行を行うことは、その間において、売主と買主との間の信頼関係が毀損されてしまっていることが多く、それほど容易なことではない。

また、特に、買主が中堅企業・大企業である場合など、社内手続きや各部署に対する説明などの関係で、一旦、事業承継M&Aを中断することも困難であり、また、いったん中断した事業承継M&Aを再開することはさらに困難を伴う。

このように考えると、事業承継M&Aにおいては、表明保証違反などが存在したとしても、ひとまず株式譲渡の実行は完了させることとし、売主と買主は引き続き協議し、クロージング後も引き続き、表明保証違反などの解消に努めて頂くことについて合意し、売主が、最大限、買主の想定する対象会社の企業価値が毀損されないようにすることに合意することが、最も実務的であるものと思われる。

そのうえで、どうしても表明保証違反などが解消されず、それが重大な損害をもたらしている場合は、やむを得ないのであるから、売主は、買主に対して、表明保証違反に基づく損害賠償責任・補償責任により利害関係を調整したほうが好ましい場合も多いものと思われる。

クロージング後の解除の制限について

事業承継M&Aにおいて、事業承継M&Aを実行し、買主が対象会社の事業の運営を開始してしまった後に、その取引を解除するとなると、その後、売主が対象会社の事業の運営を継続することとなるが、そのようなことが生ずると、対象会社の事業の運営に大変な混乱をもたらすこととなる。

すなわち、事業承継M&Aにおいて、株式譲渡のクロージングが行われるまで、売主であるオーナー経営者が対象会社を経営し、クロージング直後から、買主が対象会社を経営することが一般的である。クロージングにより、対象会社の所有権が、売主から買主に移動するのだから、これは当然のことである。

そうであるからこそ、対象会社においては、株式譲渡契約書締結後、対象会社のオーナーが変更になることについて、取引先や金融機関、役員・従業員その他のステークホルダー(関係者)に周知し、売主であるオーナー経営者としては、クロージング以降、買主に対して、対象会社の事業の運営の引継ぎを開始し、又は、すでにクロージング前から買主に対する引継ぎを開始しているケースも多い。

また、株式譲渡のクロージング以降は、買主は、買主の独自の経営戦略をもって対象会社の事業の運営を開始している場合も多く、取引先や金融機関などに対する独自の対応や、役員・従業員などに対しても独自の対応を開始している可能性があり、かつそのようなことを行うことが可能な状態になっている。

売主であるオーナー経営者としては、株式譲渡のクロージング以降、株式譲渡契約を解除して、原状回復を行った場合(株式を売主に返還し、株式譲渡代金を買主に返還した場合)、売主に返還されるのは、買主がそのような独自の対応に基づく事業の運営を行った対象会社であるのであって、クロージング前の対象会社と同じ会社ではない。

すなわち、売主に返還される対象会社は、すでに株式譲渡のクロージング前の対象会社とは異なっているのである。具体的に考えても、買主が取引先や金融機関などを変更してしまっている場合や、買主の対応やフォロー又は引き継ぎが悪く、取引先や金融機関などとの関係が悪化していたり、取引継続が困難になっていたり、取引が中断されてしまっていたりすることもある。

また、買主としては、役員・従業員などを入れ替えたり、買主の対応やフォロー又は引き継ぎが悪く、役員・従業員などが退職してしまったり、特に重要な従業員(キーマン)が退職してしまったり、組織体系を変更してしまっていたり、さらには、従業員から未払残業代を請求されてしまったりすることもある。

売主としては、株式譲渡契約の解除に伴い、原状回復として、そのような対象会社を返還してもらったとしても、原状回復することができないのである。すなわち、株式譲渡のクロージング以降は、対象会社という意味では同じではあるが、クロージング前のそれとは異なった会社になってしまっているのであり、対象会社の企業価値が変動してしまっているのである。

そうであるからこそ、株式譲渡契約書を含むM&A契約書においては、通常、クロージング後は、契約の解除を行うことはできないものとされている。

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