独禁法のM&A企業結合の事前届出制度について
独占禁止法は、競争を実質的に制限することとなるM&Aなどの企業結合を禁止しています。
企業結合の事前届出書受理後30日の待機期間が必要
そこで、このような企業結合を、事前に察知して防止するための制度として、以下のような企業結合の事前届出制度(株式取得の届出制度、合併の届出制度、分割の届出制度、共同株式移転の届出制度、事業等の譲受けの届出制度)が存在します。
すなわち、一定の要件に該当する企業結合を行う場合,公正取引委員会に事前に届出を行う必要があります。
そしてその場合、会社は、企業結合の事前届出書の受理の日から30日(待機期間)を経過するまでは、企業結合を行うことはできません。
この30日間(待機期間)ですが、期間短縮の制度が存在しますが、相当特別な事由が無い限り、期間短縮が認められることは少ないようです。
反対に、企業結合の事前届出書受理後、待機期間内に、公正取引委員会から追加資料の提出等が求められる場合もあり、その場合は、最大、企業結合の事前届出書受理後120日又は追加資料受理後90日まで待機期間が延長されることがあります。
そのような場合は、M&Aのスケジュールに非常に大きな悪影響を与えることとなりますが、待機期間が延長されることはそれほど多くはありません。
大きな企業結合のみが対象
しかし、この企業結合の事前届出制度ですが、すべてのM&Aに適用されるわけではありません。
すなわち、買収会社グループが売上高200億円を超える場合であり、かつ、被買収会社(対象会社)グループが売上高50億円を超える場合です。
また、企業結合の事前届出制度に基づき事前届出が必要となった場合であっても、競争を実質的に制限することとなるM&Aであるとして企業結合が禁止されるケースは多くはありません。新日本製鉄と住友金属でも企業結合が許容されたわけですから。特に、事業承継M&Aで競争を実質的に制限することとなるM&Aであると評価される場合は殆ど無いものと思われます。
ただ、企業結合の事前届出書の記載の仕方は留意が必要です。市場の切り出し方などによっては、その市場のシェアが80%以上になってしまう会社もあるものと思います。しかし、それは市場の切り出し方などが誤っているものと思われます。
公正取引委員会の事前相談を活用すべき
企業結合の事前届出書の書き方によっては、公正取引委員会の審査が30日で終了せず、待機期間が延長されてしまう可能性もあります。
また、待機期間の算定起算日は、企業結合の事前届出書の提出日ではなく、受理日であり、企業結合の事前届出書を提出しても、書類に不備があるということで受理してもらえない場合(届出書の内容が不十分な場合も受理してもらえません)は、いつまでたっても待機期間が算定開始しません。
そこで、企業結合の事前届出書を提出すべき場合は、事前に、公正取引委員会に相談し、確実に、待機期間が30日で終了するように、余裕を持って、M&Aのスケジュールを進めておくことが重要となります。