M&AにおけるTSAとは?概要や契約内容、手順、締結するメリット・注意点も解説

  • 2022年4月19日
  • 2026年2月5日
  • M&A

M&Aは、譲受側企業にとって生産性の向上や、事業規模の拡大等のさまざまな目的のため行われます。

また、譲渡側企業にとっても、不要な事業や資産や従業員等を切り離すことができ、また譲渡代金を手にすることもできるのです。

このように、M&Aは、譲渡側企業と譲受側企業の双方にとってメリットがあります。

しかし、M&Aは、契約による譲渡側企業の対象事業等の引渡しや、譲受側企業による対価の支払いが行われるクロージングで完了するわけではありません。

譲渡側企業が今までに顧客に対し提供してきたサービス等を、M&Aの移行期間中はどうするか等の問題が残るのです。

今回は、このような問題を解決するために、M&Aの最終段階で締結する「TSA」についての概要、契約内容、手順について解説していきます。

M&AにおけるTSAとは

M&AにおけるTSAとは、M&A成立後の「移行期間(引き継ぎ期間)」に、譲渡側(売り手)がこれまで行っていた業務やサービスを、一定期間に限って譲受側(買い手)へ提供するために結ぶ契約です。TSAは、M&Aの最終局面(クロージング前後)で締結されることが一般的です。

TSAは「Transition Service Agreement」の略称で、日本語にすると「移行期間中のサービス提供契約」といった意味になります。つまり、M&Aが完了してもすぐにすべての業務が買い手側へ切り替わるとは限らないため、その“つなぎ”を担保する仕組みです。

TSAが必要になる理由

M&Aがクロージングを迎えると、譲受側はPMI(経営統合)を進める必要があります。しかし、PMIにはシステム統合・組織再編・業務ルールの整備など、多くの作業が伴い、短期間で完了するものではありません。

そのため、移行が終わるまでの間に、以下のようなリスクが起こり得ます。

  • 顧客対応が止まる
  • 経理・人事・ITが回らなくなる
  • サービス品質が落ち、クレームやトラブルが発生する

TSAは、こうした混乱を防ぎながら、買い手側が段階的に自走できる状態へ移行するために活用されます。

TSAがよく使われるM&Aのパターン

特にTSAが必要になりやすいのは、次のようなケースです。

  • 子会社だけを買収する(親会社側に機能が残っている)
  • 事業譲渡で一部事業だけを切り出して取得する
  • 会社分割で事業を移転する

これらのスキームでは、譲渡後も「譲渡側に残る機能」を一定期間借りる必要が出やすいため、TSAがほぼセットになります。

TSAで決めること

TSAを結ぶことで、移行期間中のサービス提供について、以下の点を譲渡側・譲受側の間で明確にできます。

  • 何を提供するのか
  • どこまで対応するのか
  • トラブル時の責任は誰が負うのか

TSAの目的

TSAは、株式譲渡契約や事業譲渡契約などの最終契約に付随して締結される附随契約です。目的は大きく分けて次の3つです。

  • M&A取引を成立させるため
  • スタンド・アローン問題を防ぐため
  • シナジーを最大化するため

TSAはPMIを進めるための時間を買う契約

TSAは、単なる事務的な契約ではありません。買い手側がPMIを進めるうえで、現場を止めずに統合を進めるための“安全装置”です。

移行期間中のサービス提供を契約で整理しておけば、責任の所在があいまいにならず、トラブルが起きた場合も落ち着いて対処できます。

TSAが行われるタイミング

M&Aは大きく分けると、次の3つのフェーズを経て成立します。

  • 事前検討フェーズ
  • 交渉フェーズ
  • 最終段階フェーズ

この流れの中で、TSA(移行期間中のサービス提供契約)は最終段階で締結されることが多い一方、検討そのものはかなり早い段階から始める必要があります。

1. 事前検討フェーズ

この段階では、譲渡側(売り手)・譲受側(買い手)がそれぞれ準備を進めます。

  • 譲渡側:候補先の探索、専門家への相談、資料準備など
  • 譲受側:専門家への相談、自社の目的や買収ニーズの整理など

この時点で、将来TSAが必要になりそうかどうかをうっすら想定しておくことが重要です。

2. 交渉フェーズ

交渉フェーズでは、M&Aの専門家(FA、仲介会社など)を介しながら、両社が条件を詰めていきます。

検討する主な項目は次のとおりです。

  • 価格(譲渡価格)
  • スキーム(株式譲渡、事業譲渡など)
  • 条件面(引き継ぎ範囲、リスク、特約など)

また、この段階から、もしくは次の最終段階にかけて、デューデリジェンス(DD)も実施されます。DDは、買い手が対象企業・対象事業について、価値やリスクを総合的に調べる工程です。

3. 最終段階フェーズ

交渉がまとまると、M&Aは最終段階へ進みます。このフェーズでは、次の流れで手続きが進行します。

  1. 最終合意
  2. 最終契約の締結
  3. クロージング(取引完了)
  4. ディスクロージャー(開示)
  5. PMI(経営統合)の開始

そしてTSAは、一般的にこの最終段階フェーズで締結されます。

TSAは、契約書としてはクロージング時に締結されることが多いものの、実務では以下の進め方になります。

  1. 事前検討フェーズから必要性を意識する
  2. 交渉フェーズ~DD期間中に中身を詰める
  3. 最終契約でほぼ内容を確定させる

最終契約でTSAを決めておくべき理由

TSAの内容は、通常は最終契約の時点でほぼ固まり、契約書案が添付されたうえでクロージング時に締結されます。

仮にTSAの細部が決まっていない場合でも、少なくとも概要は最終契約で合意しておく必要があります。

なぜなら、最終契約にTSAの前提が書かれていないと、譲渡側が以下のように拒否する可能性があるからです。

  • 「そんな話は聞いていない」
  • 「TSAは結ばない」

その結果、M&A成立後の業務継続が不安定になります。

TSAの対象になりやすい業務

TSAの対象となるのは、DDの結果を踏まえて以下のように判断された業務です。

  • すぐに買い手側へ移せない
  • 移行難易度が高い
  • 移行中に止まると事業が回らない

最終段階でTSAを締結できないと、M&A後に次のような問題が起きる恐れがあります。

  • 顧客対応が止まる
  • 経理・給与・請求が回らない
  • ITシステムが使えず業務が麻痺する

これを防ぐために、DDを進めながら並行して、以下の準備を進めるのが一般的です。

  • 移行期間に必要なサービスを洗い出す
  • TSAに盛り込む業務範囲を選定する
  • 役割分担・期間・費用の考え方を整理する

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M&AにおけるTSAの対象業務

TSAとは、M&Aにおける移行期間中に実施するサービスの提供のことをいいますが、この頁ではTSAの対象となる業務について見ていきます。

人事・経理・総務など

人事・経理(財務)・総務といったバックオフィス業務を、グループ内で一括して集約・標準化する「シェアードサービス」を導入している企業は少なくありません。

ただし、M&Aが成立したからといって、これらの業務をすぐに譲受側(買い手)へ移せるとは限りません。実務では、資産の所有者変更や名義変更などの手続きと同時に、バックオフィス業務まで一気に引き継ぐのは難しいケースが多いからです。

そのため、M&A後の一定期間に限り、譲受側企業が譲渡側企業のシェアードサービスを継続利用できるかどうかを、事前に決めておく必要があります。ここで活用されるのがTSA(移行期間中のサービス提供契約)です。

ロジスティクス

次に、TSAの対象としてよく挙げられるのがロジスティクス(物流・在庫管理)部門です。

ロジスティクスとは、単に「荷物を運ぶ部署」ではありません。顧客の注文状況や需要の動きを見ながら、在庫量を調整し、無駄なコストを抑えつつ、必要なタイミングで商品を届けるために、物流全体を計画・実行・管理する役割を担います。

サプライチェーン・マネジメント(SCM)と似ていますが、ロジスティクスは特に在庫・出荷・配送の実務を、経営的な視点で最適化する領域だと考えると理解しやすいでしょう。

M&A後に物流や在庫管理の運用が急に変わると、次のような問題が起きやすくなります。

  • 在庫が過剰になり、保管コストが増える
  • 欠品が発生し、販売機会を逃す
  • 出荷のタイミングがずれ、顧客対応に支障が出る
  • 物流費が増え、利益が圧迫される

例えば、これまで顧客ニーズに合わせて「出荷の量」や「出荷のタイミング」を細かく調整していた場合、その管理が崩れるだけで、利益(限界利益)が大きく変わってしまうことがあります。

このようなリスクを避けるために、M&A直後は無理に運用を切り替えず、一定期間はTSAを結び、譲渡側が従来の運用を継続する形を取ることが有効です。

ロジスティクスは一度混乱すると、顧客満足だけでなく収益にも直結します。だからこそ、移行期間中の業務継続を確実にするため、TSAの対象になりやすい代表的な部門といえます。

サプライチェーン・マネジメント

譲渡側企業では、製品やサービスの提供に欠かせない仕入れ・調達・物流を、グループ全体でまとめて管理する「サプライチェーン・マネジメント(SCM)」を採用していることがあります。

  • SCMをグループで一元化すると、たとえば次のような効果が期待できます。
  • まとめ買いによって仕入れ単価を下げられる
  • 調達部門を統合し、間接コストを削減できる
  • 物流の手配を一本化し、効率化できる

企業によっては、仕入れや物流を専門に担う会社をグループ内に設け、そこで全体の調達・配送を回しているケースもあります。

ただし、このような体制はグループ全体を前提に成り立っているため、M&A成立後に別の仕組みに切り替えるとしても、短期間では移行できないことが少なくありません。

そこで有効なのが、M&A後の一定期間に限り、TSAを結んで譲渡側のSCMを継続利用する方法です。移行期間中も仕入れや物流を止めずに済むため、供給の混乱を防ぎ、安定した業務運営につなげることができます。

研究開発・優良顧客情報

譲渡側企業の研究開発部門が、本社や専用の別会社等に集約されている場合には、M&A実施後すぐに移行することは難しいと考えられます。

また、譲渡側企業がグループ全体で優良顧客情報を一元で管理している場合も、譲受側企業がどこまでその情報を触れることができるのか等を定める必要があり、M&A実施後すぐに解決できる問題ではありません。

このような場合の研究開発や優良顧客情報についても、M&A実施後も一定期間TSA契約を締結することが望ましいとされています。

ITのシステム

ITのシステムについてもM&A実施後すぐに移行することは難しいため、譲渡側企業で使用していたシステムを移行期間中も引き続き使用する必要があります。

そのため、M&A実施後も一定期間TSA契約を締結することが多いです。

オフィスや工場などの間借り

譲渡側企業で間借りしているオフィスや工場等も、M&A実施後すぐに他の場所を間借りして移動することは難しいです。

そのため、オフィスや工場等についても、M&A実施後も一定期間TSA契約を締結することが多いです。

経営に深く関わる重要情報

企業によっては、経営に深く関わる重要な情報や社外秘データの受け渡しが、TSA(移行期間の取り決め)の対象になることがあります。どの情報が機密に当たるかは業種や企業によって異なりますが、たとえば研究開発を強みとする企業では、研究データや技術ノウハウそのものが経営の中核を担う極めて重要な情報です。こうした情報は、最終的に会社の所有者が切り替わるまでは、特に慎重に管理する必要があります。

本来は、最終的な譲渡が完了するまで情報提供を控えるのが理想です。ただし、事業の引き継ぎを円滑に進めるため、移行期間中にどうしても共有しなければならない場合もあります。その際は、あらかじめ秘密保持契約(NDA)を結んでおくことで、万が一情報が漏れた場合のリスクを抑えることができます。TSAでは、このような機密情報の扱い方も明確に定め、移行期間中の情報管理とトラブル防止を図ります。

M&AにおけるTSAとの関連が強い契約

M&AにおけるTSAと関連の強い契約は、M&Aの最終合意段階で締結となる最終譲渡契約と業務委託契約です。

本頁では、最終譲渡契約と業務委託契約のそれぞれの契約が、TSAでの契約に対してどの様に関係してくるのかについて解説していきます。

最終譲渡契約

M&Aの進行は、大きく分けて次の3段階で進みます。

  • 事前検討フェーズ
  • 交渉フェーズ
  • 最終段階フェーズ

このうち、交渉がまとまり、最終的に法的な契約を結ぶ段階で締結されるのが「最終譲渡契約」です。

最終譲渡契約とは、基本合意を交わしたあとに、デューデリジェンス(DD)で相手企業の状況を確認し、その結果を踏まえて締結する最終的な契約書(本契約)を指します。M&Aの手法によって以下のように契約名は変わります。

  • 株式譲渡:株式譲渡契約
  • 事業譲渡:事業譲渡契約

最終譲渡契約は、譲渡側(売り手)と譲受側(買い手)の間で、権利や義務を正式に確定させるものです。そのため、法的拘束力を持つ最終契約となります。

最終譲渡契約には、M&Aを進めるうえで重要な条件がまとめて記載されます。代表例は次の通りです。

  • M&Aの対象となる会社・事業の範囲
  • 譲渡価格(買収金額)
  • 成立の前提条件(クロージング条件)
  • 表明保証(売り手が事実を保証する内容)
  • DDの結果を踏まえた対応(リスクが見つかった場合の扱い)
  • クロージング後の取り決め(必要に応じて)

M&A後も、譲渡側が一定期間サービス提供を続ける必要がある場合、最終譲渡契約だけで細かく定めるのは現実的ではありません。特に、提供する業務や支援が多岐にわたる場合は、最終譲渡契約とは別にTSA(移行期間中のサービス契約)を締結するのが一般的です。

業務委託契約

業務委託契約とは、自社内で完結できない業務等を、自社以外の企業や個人などに外注する契約です。

譲渡側企業で行われていたサービスの提供等を、M&A実施後も一定期間TSA契約を締結して、譲受側企業がM&A実行後も引き続利用するには業務委託契約を交わします。

このように、TSAを締結することにより、M&A実施後もどのようにサービスを継続するかを取り決めて、業務委託契約にて契約を交わすというような、TSAと業務委託契約とは不可分の関係にあるのです。

反対に、他社内で完結できない業務等を自社で受託する契約のことを、業務受託契約といいます。

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M&AにおけるTSAの契約内容

M&AにおけるTSAの契約に盛り込まれる主な契約内容には、以下の事項があります。

  • TSAにおけるサービスの提供者とサービスの受給者
  • TSAにおけるサービスの範囲
  • TSAにおけるサービスの対価と支払条件
  • TSA契約の有効日と終了日

後々のトラブルを回避するためにも、上記の内容はTSAの契約に必ず入れておく事項です。

サービスの提供者と受給者

TSAでは、まず「誰がサービスを提供し、誰が受け取るのか」をはっきりさせます。多くの場合、売り手企業が提供側、買い手企業が受領側になりますが、どの会社がどの業務を担当するのかを明確にしておくことが重要です。

サービスの範囲

TSAでカバーする業務の範囲も具体的に定めます。後の認識違いを防ぐため、「何をどこまでやるのか」をできるだけ細かく書き出します。たとえば経理支援であれば、日々の帳簿管理なのか、決算作業まで含むのか、といったレベルまで明確にします。

サービスの対価と支払条件

サービスには対価が発生するため、金額や支払い方法も契約で決めます。月払い・四半期払いなどの支払タイミングや、追加費用が出る場合の扱いも事前に定めておくと安心です。

契約の有効日と終了日

最後に、いつから始まり、いつ終わる契約なのかを明確にします。途中解約や延長ができるかどうかも含めて決めておくことで、移行期間中の運用がスムーズになります。

M&AにおけるTSAを開始するまでの流れ

TSAの締結は、M&Aの最終段階のフェーズで行われますが、本頁ではM&Aの検討からTSA開始までの流れを見ていきます。

M&Aの事前検討

M&Aを進める場合、最初に行うのが「事前検討」のフェーズです。この段階では、いきなり相手探しに入るのではなく、まずはM&Aを実施する必要が本当にあるのかを冷静に整理します。

事前検討のフェーズでは、譲渡側(売り手)・譲受側(買い手)それぞれが、M&Aアドバイザリー会社やM&A仲介会社などの専門家に相談しながら、次の準備を進めていきます。

  • M&Aの目的・優先順位の整理
  • M&Aが必要かどうかの検討
  • 相手企業(候補先)の選定

特に譲受側企業は、買収を検討している事業や業務が、M&A後に自社だけで問題なく運営できるかを確認しておく必要があります。

もし、単独では回らない業務が含まれている場合は、M&A成立後の移行期間に備えて、最終段階で**TSA(移行期間中のサービス契約)**を結ぶ可能性が高くなります。

TSAを結ぶとなると、移行期間中に支払う費用や、サービス範囲の調整が必要になります。
そのため、TSAの必要性は、次のような意味で相手選びの重要な判断材料になります。

  • TSAの費用がどれくらいかかるか
  • どの業務を、どれくらいの期間支援してもらう必要があるか
  • TSAがないと業務が止まるリスクがあるか

M&Aを成立させるためにも、また買収後のシナジーを最大化するためにも、どのようなTSAが必要になりそうかを事前検討の段階で考えておくことが重要です。

譲渡側企業は、事前検討の段階で専門家と連携し、主に次の手続きを進めます。

  • 秘密保持契約(NDA)の締結
  • アドバイザリー契約の締結
  • ノンネーム登録(匿名での案件登録)
  • 企業価値評価の実施
  • 売却希望価格の設定
  • 企業概要書(インフォメーション・メモランダム)の作成

このように事前検討フェーズは、M&Aの方向性を固めるだけでなく、後工程で必要になるTSAの有無や内容を見極めるための重要な準備期間でもあります。

アドバイザリー契約

アドバイザリー契約とは、M&Aに係る業務を譲渡側企業の代わりに、M&Aアドバイザリー企業やM&A仲介会社等の専門家が行うことが記載された「業務委託契約書」のことです。

実際のM&Aは、代理人を立てて進めていきますが、アドバイザリー契約を締結することにより、M&A全般に関する疑問について、サポート、回答、助言、提案等を受けることができます。

M&Aを進めていくためには、譲渡側企業が独自に対象企業を見つけることは困難です。

M&Aアドバイザリー企業やM&A仲介会社等の専門家のように情報を保有していなければ、自社に適した対象企業を見つけることはできません。

専門家にも秘密保持契約があるため、契約していない企業に情報を提供することはありません。

秘密保持契約

秘密保持契約は、開示者から得た情報を第三者に公開しないこと、M&Aの目的以外に利用しないこと等について譲渡側企業とM&Aアドバイザリー企業やM&A仲介会社等の専門家とで締結する契約書です。

また、この契約を違反した場合の損害賠償や、契約期間等についても記載します。

M&Aにおいては、このような秘密情報が外部に漏れてしまうことにより、契約合意に結びつかないこともあります。

外部に漏れてしまうと同業他社の妨害が入る可能性もありますので、秘密保持契約を締結することは、最も重要ことでもあるのです。

ノンネーム登録

譲渡側企業の企業名が特定されると、企業内容でM&Aが進めにくくなります。

企業名が特定されるのを防止して、業種、企業規模、譲渡理由、企業の特徴などから判断するために、譲渡側企業が特定されないよう匿名で要約書を作成する契約をノンネーム登録といいます。

企業概要書の作成

企業概要書とは、M&Aアドバイザリー企業やM&A仲介会社等の専門家が、譲受側企業に譲渡側企業の詳細情報を公表する目的のために、譲渡側企業の企業価値評価を実施して作成する書類です。

企業概要書では、譲渡側企業が所有している資産をすべて公開するため、譲渡側企業の業務価値が仮に低かったとしても、所有している不動産の価値が高ければ、全体として譲渡側企業の企業評価が上がる可能性もあります。

譲受側企業にとって、企業概要書は譲渡側企業の詳細情報を得られるため、M&Aに対する判断の重要な資料となるのです。

また、譲受側企業は、企業概要書を見た段階で、最終契約書の内容のみならず、M&Aの実現やM&Aのシナジーが発揮されるためにはどういうTSAが必要かを考え始めないといけません。

M&Aの交渉

M&Aの事前検討が終了したら、M&Aの交渉から基本合意までについてのフェーズになります。

このM&Aの交渉のフェーズで行われることは、トップ会談と基本合意であり、基本合意に至ればデューデリジェンス(DD)が行われて最終合意、最終契約へと進んでいきます。

M&Aの交渉のフェーズで譲渡側企業が行うことは、トップ会談と基本合意です。

一方、譲受側企業が行うことは、トップ会談と基本合意の他に、秘密保持契約や譲渡側企業の企業概要書を確認してM&Aアドバイザリー企業やM&A仲介会社等の専門家とアドバイザリー契約を締結することです。

この交渉の段階で、譲渡側企業と譲受側企業とのトップ会談をして、お互いにM&Aの内容に対して合意ができたら、基本合意締結書を締結します。

基本合意

基本合意で確認することは、 譲渡価格や取引の形態、今後のM&Aのスケジュール等です。

基本合意を締結した場合、譲受側企業が譲渡側企業と独占的に交渉できる「独占交渉権」が発生します。

基本合意における注意点として、既に企業概要書を見ているので、わかる範囲で必要なTSAを合意書に記載する必要があります。

分かっていたのに記載しない場合は、TSAの締結に応じてもらえない可能性もありますし、聞いていないと抗議をされてM&Aが頓挫することもあります。

デューデリジェンス(DD)の段階

M&Aの交渉のフェーズで基本合意に至った場合には、デューデリジェンス(DD)に進んでいくのです。

デューデリジェンス(DD)では、譲渡側企業の事業、財務、人事、システム等、さまざまな調査が行われます。

この調査により、譲渡側企業のどの事業や業務がTSA契約が必要かどうかがある程度わかります。

そのため、M&Aの交渉のフェーズにおけるデューデリジェンス(DD)が、最終契約時のTSA契約の内容に繋がっていくのです。

また、デューデリジェンス(DD)により、M&Aのシナジーが発揮されるためにはどういうTSAが必要になるのかが明らかになるため、M&Aアドバイザリー企業やM&A仲介会社等の専門家はそれを検討してアドバイスしないといけません。

M&Aの最終段階

基本合意、デューデリジェンス(DD)が行われた後は、M&Aの最終段階のフェーズへと進んでいきます。

M&Aの最終段階のフェーズでは、最終合意が行われて最終契約の締結、ディスクロージャー、クロージング監査や譲渡価格の修正、株式の譲渡と対価の支払い、TSAの実施等が行われます。

以下一つ一つ見ていきます。

最終合意、最終契約の締結

デューデリジェンス(DD)の内容を基にして、譲渡金額等の最終合意が行われます。

そして、この最終合意を基にして、最終契約書を締結することによりM&Aのクロージングが行われるのです。

最終契約書が締結された場合には、株式等を用いた実際の売買実務が進められます。

同時にM&AにおけるTSA契約がある場合は、その契約も進めていくのです。

ディスクロージャー

最終契約書を締結したら、ディスクロージャーで株主などの利害関係者に対して、経営実績、財務状況、業務状況、M&Aの説明、プレスリリース等を公開します。

クロージング監査や譲渡価格の修正

クロージングを終えた後に、場合によってはクロージング監査や譲渡価格の修正が行われることがあります。

クロージング監査とは、クロージングが行われた日の財務諸表を基に、デューデリジェンス(DD)を実施することです。

クロージング監査の結果、当初の譲渡価格からの変更がある場合は、この時点で最終調整が行われます。

株式の譲渡と対価の支払い

最終契約書で締結した契約の通り、譲受側企業は譲渡側企業の株主から株式が譲渡され、対価として現金もしくは譲受側企業の株式等が支払われます。

TSAの実施

この最終段階のフェーズから、TSA契約が実施されます。

M&Aの移行期間中のTSAが完了した場合に、M&Aが完結となるのです。

M&Aは、一般的に準備から完結まで、TSAを含めて1年程度の時間がかかると考えておいた方がよいでしょう。

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M&AにおけるTSA締結のメリット

M&AにおいてTSAを締結するメリットは、主に以下のとおりです。

業務を止めずに引き継げる

M&A直後は新しい体制づくりに時間がかかります。TSAを結んでおけば、移行期間中もこれまでの業務を継続でき、顧客対応や社内業務が滞るのを防げます。混乱や信用低下を避けられる点が大きな利点です。

統合効果を早く引き出せる

買収後すぐに売り手側の知見や人材、仕組みを活用できるため、両社の強みを組み合わせた効果を早期に発揮できます。TSA期間を活用して連携を進めることで、新体制の立ち上がりを早められます。

トラブルを未然に防げる

サービス内容や責任範囲を契約で明確にしておくことで、移行期間中の行き違いやトラブルを減らせます。問題が起きた場合も、契約内容に沿って対応できるため、予期せぬ紛争リスクを抑えられます。

計画的に業務を移せる

業務の範囲や期間、サービス水準を事前に決めておくことで、無理のないスケジュールで引き継ぎが進められます。調達や物流など重要な業務も、混乱なく移行できるのがメリットです。

M&AにおけるTSA締結時の注意点

M&Aにおいて、TSAを締結する際は、以下の点に注意しましょう。

売り手側の負担が増える

TSAでは、売却後も一定期間、売り手企業が業務支援を続ける必要があります。そのため、人員や時間を割かなければならず、新しい事業や次の計画に集中しづらくなる場合があります。報酬が支払われるとはいえ、体制に余裕がないと、現場の負担が大きくなる点には注意が必要です。

買い手の依存が長引く可能性

TSAは買い手にとって心強い仕組みですが、頼りすぎると自社で体制を整える動きが遅れがちになります。結果として、TSA終了後に準備不足が表面化し、慌てて対応することになりかねません。契約期間中に、段階的に自社運営へ切り替える計画を立てておくことが重要です。

契約内容を巡る認識のズレ

契約で決めた範囲を超える対応を求められたり、サービスの質やスピードに対する考え方が食い違ったりすると、トラブルに発展することがあります。こうした事態を防ぐためにも、対応水準や連絡窓口、問題が起きた際の話し合い方法まで事前に明確にしておくことが、スムーズな運用につながります。

まとめ

M&AにおけるTSAとは、M&A実施前に譲渡側企業が提供してきた業務やサービス等を、M&A実施後も引き続き提供できるように、M&Aの最終段階で締結する契約のことをいいます。

即ち、M&Aの移行期間中に譲受側企業単独ではできない業務やサービス等について、一定の期間譲渡側企業に引き続き提供してもらうための契約なのです。

TSAはM&Aを行う上であまり聞かない契約かもしれませんが、M&A実施後の事業や業務をうまく進めていくにはとても重要なのです。

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