M&AにおけるTSAとは?概要、契約内容、手順について解説

  • 2022年4月19日
  • 2023年7月1日
  • M&A

M&Aは、譲受側企業にとって生産性の向上や、事業規模の拡大等のさまざまな目的のため行われます。

また、譲渡側企業にとっても、不要な事業や資産や従業員等を切り離すことができ、また譲渡代金を手にすることもできるのです。

このように、M&Aは、譲渡側企業と譲受側企業の双方にとってメリットがあります。

しかし、M&Aは、契約による譲渡側企業の対象事業等の引渡しや、譲受側企業による対価の支払いが行われるクロージングで完了するわけではありません。

譲渡側企業が今までに顧客に対し提供してきたサービス等を、M&Aの移行期間中はどうするか等の問題が残るのです。

今回は、このような問題を解決するために、M&Aの最終段階で締結する「TSA」についての概要、契約内容、手順について解説していきます。

M&AにおけるTSAとは

M&AにおけるTSAとは、M&Aの移行期間中も譲渡側企業が提供してきたサービス等を引き続き提供できるように、M&Aの最終段階で締結する契約のことです。

TSAは、「Transition Service Agreement」の頭文字をとって略したものです。

日本語に直すと、「Transition」は遷移、「Service Agreement」はサービス契約という意味になります。

直訳すれば、「遷移中のサービス契約」です。

即ち、TSAとは、「移行期間中のサービスの提供に関する契約」のことになります。

M&Aが最終段階まで進みクロージングのフェーズになった場合、M&Aの契約条件の決定や、最終合意に基づいた各種の引き継ぎが行われます。

システムの統合や組織再編などのM&Aの契約により発生する各種の引き継ぎ作業は、全て契約終了後のクロージングから開始されます。

もちろん、各種の引き継ぎ作業は、M&Aの契約前から計画はしていますが、実際に行われるのは契約終了後です。

中には、譲渡に時間を要する対象事業やサービスもあり、移行期間中も顧客へのサービス等を継続して提供しなければならないものもあります。

場合によっては、提供していたサービスについて、移行期間中にトラブルが発生することも考えられるのです。

このような移行期間中のM&Aの対象事業やサービスの提供については、TSAを契約することで譲渡側企業と譲受側企業との間でどのように管理するかを決定することができ、責任の所在を明確にすることができます。

例えば、譲受側企業が、譲渡側企業の子会社のみを買収したり、事業譲渡により一部の事業のみを取得するようなM&Aだったとします。

この場合には、M&Aの移行期間中に生じるサービスの提供について、譲渡側企業に引き続き継続して受けることを、譲渡側企業と譲受側企業との間で決める必要があるため、TSAの締結が必要となるのです。

事業譲渡や会社分割などのM&Aのスキームを採用する場合は、ほぼTSAが活用されることになります。

譲受側企業は、M&A成立後に買収によるシナジー効果を実現するために、企業価値を向上するための統合プロセスであるPMIと呼ばれる経営統合作業を行う必要があります。

M&AにおいてのPMIは非常に重要なプロセスであり、統合作業には多くの時間と労力がかかります。

そのため、PMIの初期の一定期間はTSAを締結して、譲渡側企業によるサービスの提供を継続して受けている間に、統合作業を進めていくのです。

TSAとは、株式譲渡契約や事業譲渡契約等の最終契約(M&A契約)に付随して、譲渡側企業及び譲受側企業にとって以下の目的のために締結される附随契約のことを指します。

  • M&Aを無事実現するため(M&A取引の実現のため)
  • M&A後に譲渡側企業から切り離されたM&A対象会社や事等が自力で経営、組織運営ができるため(スタンド・アローン問題が生じないため)
  • M&AのメリットをM&A実施後に最大限に引き出すため(M&Aのシナジーが発揮されるため)

TSAが行われるタイミング

M&Aの全体の流れとして、事前検討のフェーズ、交渉のフェーズ、最終段階のフェーズの3つのフェーズを経て成立します。

事前検討のフェーズでは、譲渡側企業も譲受側企業とともに候補先を探し、相手企業への接触を始めます。

譲渡側企業は、M&Aアドバイザリー企業やM&A仲介会社等の専門家への相談や、資料の提出等を行うのです。

一方、譲受側企業も、M&Aアドバイザリー企業やM&A仲介会社等の専門家への相談や、M&Aにおける自社のニーズ等について取り纏めをしておきます。

交渉のフェーズでは、M&Aの専門家を通して、譲渡側企業と譲受側企業双方でお互いに最大の効果が上げられるように交渉し、価格やスキームを検討していきます。

譲受側企業がM&Aを行う対象の譲渡側企業や事業に対して、M&A実施後の企業価値の判断や、M&A実施後のリスク等を総合的に調査するデューデリジェンス(DD)も、この交渉のフェーズ、もしくは次の最終段階のフェーズの初めて行われるのです。

交渉のフェーズで交渉が成立した場合は、最終段階のフェーズへ移行していきます。

最終段階のフェーズでは、最終合意、最終契約の締結、クロージング、ディスクロージャーが行われて、譲受側企業では、PMIのプロセスが行われるのです。

TSAは、このM&Aの全体の流れなかで、事前検討のフェーズの段階から必要性を考えながら相手方と交渉し、一般的に契約交渉後の最終段階のフェーズで締結されます。

TSAの内容については、ほとんどは最終契約の段階ですでに決まっていて、最終契約時に契約書の内容が添付され、クロージングの際に締結されるものです。

仮に、最終契約の段階でTSAの内容が決まっていない場合であっても、TSAの概要については最終契約で決めなければなりません。

なぜなら、最終契約でTSAの記載がない場合には、譲渡側企業からTSAの締結を断られる可能性もありますので、最終契約の段階では必ず概要を決める必要があるのです。

このTSAの対象となるのは、M&A実施後のデューデリジェンス(DD)の結果で、移行するには難易度が高いと判断された事業等になります。

最終段階のフェーズでTSAを締結できなければ、M&A実施後の業務継続に支障をきたす恐れがあります。

これを避けて最終段階のフェーズでTSAが締結できるように、デューデリジェンス(DD)期間中にTSAに盛り込む内容の検討等の準備を並行して進めておくとよいでしょう。

具体的には、デューデリジェンス(DD)と並行して、M&A実施後の移行期間中に実施するサービスの提供を選定します。

この選定された事業や業務等に対してTSAを締結することで、移行が円滑に進められるだけでなく、リスクヘッジにもなるのです。

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M&AにおけるTSAの対象業務

TSAとは、M&Aにおける移行期間中に実施するサービスの提供のことをいいますが、この頁ではTSAの対象となる業務について見ていきます。

人事・経理・総務など

人事、財務、総務などのバックオフィス業務を、グループ企業内の基幹業務を1か所に集約して標準化するシェアードサービスで運用している企業は多くあります。

これらのシェアードサービスで運用している業務の引き継ぎは、対象資産の所有者移転や名義変更等の手続きと同時進行でできないことが多いです。

そのため、M&A実施後も譲受側企業が、譲渡側企業のシェアードサービスを利用することができるか等を決める必要があります。

その際にTSA契約を設定することで、一定の移行期間、引き続き譲渡側企業のシェアードサービスを利用できるように契約を締結するのです。

また、現状の譲渡側企業では、譲渡対象の事業だけでは専門知識を持った人材やシステムを確保できないため、譲渡の対象でない他の事業から人材やシステムを供給してバックオフィス業務を行っていることがあります。

このケースでは、M&A実施後は、譲渡の対象でない他の事業の人材やシステムを引き続き利用することはできません。

そのため、TSA契約を設定することで、一定期間、譲渡の対象でない他の事業の人材やシステムを引き続き利用できるようにするのです。

ロジスティクス

次に、TSAの代表的な対象業務として挙げられるのは、ロジスティクス部門です。

ロジスティクスとは、顧客のニーズに合わせながら在庫を調整していき、物流の効率化とコストを削減するべく計画、実行、管理を行う部門のことをいいます。

ロジスティクスは、サプライチェーン・マネジメントとよく似た部門ですが、より経営的視点から管理して需要と供給のバランスを図るのです。

ロジスティクスは、顧客のニーズに合わせて需要と供給のバランスを図るため、M&A実施後も一定期間TSA契約を締結して業務を行うことが望ましい部門です。

例えば、顧客ニーズに合わせて在庫管理や出荷のタイミングと出荷の量を調整していた場合に、この管理が崩れてしまうことにより限界利益が大きく変わってきてしまいます。

そのため、M&A実施後の一定期間は、TSA契約を締結して引き続き業務が行われることが望ましいのです。

サプライチェーン・マネジメント

譲渡側企業が、製品やサービスに必要な資源の仕入れ、調達、物流をグループ企業で賄うサプライチェーン・マネジメントを行っているケースもあります。

グループ企業が一括でまとめて仕入れを行うことにより、仕入れ原価を抑えることが可能であり、調達部門を統一することでコストの削減が図れるのです。

また、企業によっては、仕入れ、調達、物流専用の会社を傘下に設置することで、コストの削減を図っている場合もあります。

譲渡側企業がこのようなサプライチェーン・マネジメントを利用している場合、M&A実施後に違う手段を取り入れるとしても、移行するまで時間がかかることがあります。

このような場合、M&A実施後も一定期間TSA契約を締結して、仕入れ、調達、物流等のサプライチェーンマネジメントを継続することが、安全に業務を進めるために最も望ましい方法なのです。

研究開発、優良顧客情報

譲渡側企業の研究開発部門が、本社や専用の別会社等に集約されている場合には、M&A実施後すぐに移行することは難しいと考えられます。

また、譲渡側企業がグループ全体で優良顧客情報を一元で管理している場合も、譲受側企業がどこまでその情報を触れることができるのか等を定める必要があり、M&A実施後すぐに解決できる問題ではありません。

このような場合の研究開発や優良顧客情報についても、M&A実施後も一定期間TSA契約を締結することが望ましいとされています。

ITのシステム

ITのシステムについてもM&A実施後すぐに移行することは難しいため、譲渡側企業で使用していたシステムを移行期間中も引き続き使用する必要があります。

そのため、M&A実施後も一定期間TSA契約を締結することが多いです。

オフィスや工場などの間借り

譲渡側企業で間借りしているオフィスや工場等も、M&A実施後すぐに他の場所を間借りして移動することは難しいです。

そのため、オフィスや工場等についても、M&A実施後も一定期間TSA契約を締結することが多いです。

M&AにおけるTSAとの関連が強い契約

M&AにおけるTSAと関連の強い契約は、M&Aの最終合意段階で締結となる最終譲渡契約と業務委託契約です。

本頁では、最終譲渡契約と業務委託契約のそれぞれの契約が、TSAでの契約に対してどの様に関係してくるのかについて解説していきます。

最終譲渡契約

M&A流れとしては、事前検討のフェーズ、交渉のフェーズ、最終段階のフェーズの3つのフェーズに分けられますが、最終譲渡契約はM&A交渉後の最終段階のフェーズに行われます。

最終譲渡契約とは、M&A交渉後の基本合意を締結した後に、デューデリジェンス(DD)の結果を踏まえ企業の経営状態などを把握した後に締結する契約で、「最終譲渡契約書」のことです。

M&Aの方式が「株式譲渡」の場合は、「株式譲渡契約」を締結し、「事業譲渡」の場合は、「事業譲渡契約」を締結します。

最終譲渡契約とは、譲渡側企業と譲受側企業との間で当事者間の権利義務を決定するものであり、法的拘束力を有する最終契約のことです。

最終譲渡契約では、M&Aの対象となる企業や事業を決定するとともに、譲渡企業や事業の譲渡価格、前提条件、表明保証デューデリジェンス(DD)の結果への対応等が決定されます。

また、クロージング後の譲渡側企業と譲受側企業の各種取り決めや、権利義務が、契約書に記載されることもあります。

譲渡側企業がM&A実施後も継続して提供する業務やサービスが多岐に渡る場合は、最終譲渡契約で決定されるのではなく、別途TSA契約を締結するのが一般的です。

業務委託契約

業務委託契約とは、自社内で完結できない業務等を、自社以外の企業や個人などに外注する契約です。

譲渡側企業で行われていたサービスの提供等を、M&A実施後も一定期間TSA契約を締結して、譲受側企業がM&A実行後も引き続利用するには業務委託契約を交わします。

このように、TSAを締結することにより、M&A実施後もどのようにサービスを継続するかを取り決めて、業務委託契約にて契約を交わすというような、TSAと業務委託契約とは不可分の関係にあるのです。

反対に、他社内で完結できない業務等を自社で受託する契約のことを、業務受託契約といいます。

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M&AにおけるTSAの契約内容

M&AにおけるTSAの契約に盛り込まれる主な契約内容には、以下の事項があります。

  • TSAにおけるサービスの提供者とサービスの受給者
  • TSAにおけるサービスの範囲
  • TSAにおけるサービスの対価と支払条件
  • TSA契約の有効日と終了日

後々のトラブルを回避するためにも、上記の内容はTSAの契約に必ず入れておく事項です。

M&AにおけるTSAを開始するまでの流れ

TSAの締結は、M&Aの最終段階のフェーズで行われますが、本頁ではM&Aの検討からTSA開始までの流れを見ていきます。

M&Aの事前検討

M&Aを行うには、まずはM&Aの事前検討のフェーズになります。

事前検討のフェーズでは、譲渡側企業と譲受側企業のそれぞれが、M&Aアドバイザリー企業やM&A仲介会社等の専門家へ問い合わせを行い、M&Aが本当に必要なのかを検討したうえで相手企業を選定していきます。

相手企業や事業を選定していく上で、譲受側企業は譲受対象になる事業や業務について、自社単独で機能するのかどうかを検討していく必要もあります。

自社単独で機能しない事業や業務等は、最終段階のフェーズでTSA契約を締結する必要があるため、TSAにかかる費用等についても相手企業や事業を選定していく上で重要なポイントになるのです。

また、M&Aを無事実現するためや、M&AのメリットをM&A後に最大限に引き出すためにも、どのようなTSA契約を締結するかを、事前検討のフェーズで考えておく必要があります。

譲渡側企業は、事前検討のフェーズでM&Aアドバイザリー企業やM&A仲介会社等の専門家と、秘密保持契約、アドバイザリー契約、ノンネーム登録を締結します。

その後、企業価値評価を行い、売却希望価格を設定し、企業概要書を作成するのです。

この事前検討のフェーズで締結される秘密保持契約、アドバイザリー契約、ノンネーム登録の3つの契約書と、企業概要書の作成について詳しく見ていきます。

アドバイザリー契約

アドバイザリー契約とは、M&Aに係る業務を譲渡側企業の代わりに、M&Aアドバイザリー企業やM&A仲介会社等の専門家が行うことが記載された「業務委託契約書」のことです。

実際のM&Aは、代理人を立てて進めていきますが、アドバイザリー契約を締結することにより、M&A全般に関する疑問について、サポート、回答、助言、提案等を受けることができます。

M&Aを進めていくためには、譲渡側企業が独自に対象企業を見つけることは困難です。

M&Aアドバイザリー企業やM&A仲介会社等の専門家のように情報を保有していなければ、自社に適した対象企業を見つけることはできません。

専門家にも秘密保持契約があるため、契約していない企業に情報を提供することはありません。

秘密保持契約

秘密保持契約は、開示者から得た情報を第三者に公開しないこと、M&Aの目的以外に利用しないこと等について譲渡側企業とM&Aアドバイザリー企業やM&A仲介会社等の専門家とで締結する契約書です。

また、この契約を違反した場合の損害賠償や、契約期間等についても記載します。

M&Aにおいては、このような秘密情報が外部に漏れてしまうことにより、契約合意に結びつかないこともあります。

外部に漏れてしまうと同業他社の妨害が入る可能性もありますので、秘密保持契約を締結することは、最も重要ことでもあるのです。

ノンネーム登録

譲渡側企業の企業名が特定されると、企業内容でM&Aが進めにくくなります。

企業名が特定されるのを防止して、業種、企業規模、譲渡理由、企業の特徴などから判断するために、譲渡側企業が特定されないよう匿名で要約書を作成する契約をノンネーム登録といいます。

企業概要書の作成

企業概要書とは、M&Aアドバイザリー企業やM&A仲介会社等の専門家が、譲受側企業に譲渡側企業の詳細情報を公表する目的のために、譲渡側企業の企業価値評価を実施して作成する書類です。

企業概要書では、譲渡側企業が所有している資産をすべて公開するため、譲渡側企業の業務価値が仮に低かったとしても、所有している不動産の価値が高ければ、全体として譲渡側企業の企業評価が上がる可能性もあります。

譲受側企業にとって、企業概要書は譲渡側企業の詳細情報を得られるため、M&Aに対する判断の重要な資料となるのです。

また、譲受側企業は、企業概要書を見た段階で、最終契約書の内容のみならず、M&Aの実現やM&Aのシナジーが発揮されるためにはどういうTSAが必要かを考え始めないといけません。

M&Aの交渉

M&Aの事前検討が終了したら、M&Aの交渉から基本合意までについてのフェーズになります。

このM&Aの交渉のフェーズで行われることは、トップ会談と基本合意であり、基本合意に至ればデューデリジェンス(DD)が行われて最終合意、最終契約へと進んでいきます。

M&Aの交渉のフェーズで譲渡側企業が行うことは、トップ会談と基本合意です。

一方、譲受側企業が行うことは、トップ会談と基本合意の他に、秘密保持契約や譲渡側企業の企業概要書を確認してM&Aアドバイザリー企業やM&A仲介会社等の専門家とアドバイザリー契約を締結することです。

この交渉の段階で、譲渡側企業と譲受側企業とのトップ会談をして、お互いにM&Aの内容に対して合意ができたら、基本合意締結書を締結します。

基本合意

基本合意で確認することは、 譲渡価格や取引の形態、今後のM&Aのスケジュール等です。

基本合意を締結した場合、譲受側企業が譲渡側企業と独占的に交渉できる「独占交渉権」が発生します。

基本合意における注意点として、既に企業概要書を見ているので、わかる範囲で必要なTSAを合意書に記載する必要があります。

分かっていたのに記載しない場合は、TSAの締結に応じてもらえない可能性もありますし、聞いていないと抗議をされてM&Aが頓挫することもあります。

デューデリジェンス(DD)の段階

M&Aの交渉のフェーズで基本合意に至った場合には、デューデリジェンス(DD)に進んでいくのです。

デューデリジェンス(DD)では、譲渡側企業の事業、財務、人事、システム等、さまざまな調査が行われます。

この調査により、譲渡側企業のどの事業や業務がTSA契約が必要かどうかがある程度わかります。

そのため、M&Aの交渉のフェーズにおけるデューデリジェンス(DD)が、最終契約時のTSA契約の内容に繋がっていくのです。

また、デューデリジェンス(DD)により、M&Aのシナジーが発揮されるためにはどういうTSAが必要になるのかが明らかになるため、M&Aアドバイザリー企業やM&A仲介会社等の専門家はそれを検討してアドバイスしないといけません。

M&Aの最終段階

基本合意、デューデリジェンス(DD)が行われた後は、M&Aの最終段階のフェーズへと進んでいきます。

M&Aの最終段階のフェーズでは、最終合意が行われて最終契約の締結、ディスクロージャー、クロージング監査や譲渡価格の修正、株式の譲渡と対価の支払い、TSAの実施等が行われます。

以下一つ一つ見ていきます。

最終合意、最終契約の締結

デューデリジェンス(DD)の内容を基にして、譲渡金額等の最終合意が行われます。

そして、この最終合意を基にして、最終契約書を締結することによりM&Aのクロージングが行われるのです。

最終契約書が締結された場合には、株式等を用いた実際の売買実務が進められます。

同時にM&AにおけるTSA契約がある場合は、その契約も進めていくのです。

ディスクロージャー

最終契約書を締結したら、ディスクロージャーで株主などの利害関係者に対して、経営実績、財務状況、業務状況、M&Aの説明、プレスリリース等を公開します。

クロージング監査や譲渡価格の修正

クロージングを終えた後に、場合によってはクロージング監査や譲渡価格の修正が行われることがあります。

クロージング監査とは、クロージングが行われた日の財務諸表を基に、デューデリジェンス(DD)を実施することです。

クロージング監査の結果、当初の譲渡価格からの変更がある場合は、この時点で最終調整が行われます。

株式の譲渡と対価の支払い

最終契約書で締結した契約の通り、譲受側企業は譲渡側企業の株主から株式が譲渡され、対価として現金もしくは譲受側企業の株式等が支払われます。

TSAの実施

この最終段階のフェーズから、TSA契約が実施されます。

M&Aの移行期間中のTSAが完了した場合に、M&Aが完結となるのです。

M&Aは、一般的に準備から完結まで、TSAを含めて1年程度の時間がかかると考えておいた方がよいでしょう。

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まとめ

M&AにおけるTSAとは、M&A実施前に譲渡側企業が提供してきた業務やサービス等を、M&A実施後も引き続き提供できるように、M&Aの最終段階で締結する契約のことをいいます。

即ち、M&Aの移行期間中に譲受側企業単独ではできない業務やサービス等について、一定の期間譲渡側企業に引き続き提供してもらうための契約なのです。

TSAはM&Aを行う上であまり聞かない契約かもしれませんが、M&A実施後の事業や業務をうまく進めていくにはとても重要なのです。

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