ITデューデリジェンス(DD)は、デューデリジェンス(DD)のうち、売り手企業のITに関するシステム・インフラ構成やシステム組織体制などを調査することを言います。
今回は、企業が行うM&Aの結果の成功か失敗かを決める、とても大切なプロセスであるデューデリジェンス(DD)のうち、ITデューデリジェンス(DD)について、その目的や行う理由、手続きの流れなどを、わかりやすく解説していこうと思います。
ITデューデリジェンス(DD)(IT DD)とは
ITデューデリジェンス(DD)とは、買い手企業が売り手企業のIT関連システムやインフラ構成、組織体制の実態を正確に把握するために、調査・分析することを言います。
企業がM&Aを行う際、買い手企業にとって非常に重要なプロセスとされているのが、デューデリジェンス(DD)です。デューデリジェンス(DD)を適正に行うことは、M&Aを成功させるためには必要な手続きであると言われています。
近年になって、企業には、基本的なインフラとしてITが導入されているのが通常になっており、このことから、企業がM&Aを行う際にITデューデリジェンス(DD)を行うケースが非常に多くなっているというのが現実です。
また、企業のさまざまな活動がITシステムによって運用されていることからも、ITデューデリジェンス(DD)を適切に行うことがM&Aの成否に大きく影響することにもなっています。
ITデューデリジェンス(DD)(IT DD)が必要な理由
近年、企業において、会社資産や機能としてのIT分野の重要性はどんどん高まってきました。よって、デューデリジェンス(DD)を行う分野の中でも、ITデューデリジェンス(DD)の重要性は大きくなってきています。
一般的にデューデリジェンス(DD)は、M&Aを行う際に、売り手企業または事業についての隠れたリスクを含めた実態を、買い手の企業側が適切に把握するために必要な、最終交渉の前に行う調査・分析のことを言います。
デューデリジェンス(DD)を行う目的は、売り手企業や事業の現状を、資料や現場を見て調査すること、および、潜在的なものも含めた、対象となる売り手企業や事業のさまざまなリスクを、買い手企業側が事前にできるだけ正確に把握して、M&Aを実施するかどうかの最終的な判断やM&Aの実施後の対応を検討し、適正な買収価格を算定することです。
売り手企業や事業の現状とリスクを調査・分析することにより、買い手企業はあらかじめM&Aを実施した後のリスクの存在を適切に把握したうえで、買収の最終判断や買収価格の適切な算定を行うことができます。
ITデューデリジェンス(DD)では、その他の分野のデューデリジェンス(DD)と同様、前述したような、一般的な潜在的なものを含めた様々なリスクの把握や対処方法の分析も行います。
同時に、ITデューデリジェンス(DD)においては、買い手企業のITシステムとの互換性やデータ統合の可能性など、ITならではの分析も行われます。
仮に売り手企業と買い手企業が、同じようなシステムとソフトウエアを使っているような場合、システム統合するために必要な費用は非常に安価になる一方、全く異なるシステムやソフトウエアを使っている場合、その統合には多額の費用がかかることが想定されます。
このように、ITデューデリジェンス(DD)は、買い手企業にとって、M&Aを行うにあたってのリスク管理、必要な費用の算出などに重要であり、最終的には買収価格を決める際の重要な基礎データとなるので、とても重要なプロセスであると言えます。
ITデューデリジェンス(DD)(IT DD)の調査項目
ITデューデリジェンス(DD)は、売り手の企業や事業が事業の遂行に要しているITシステムやソフトウエアの内容に従って調査・分析するべき、いくつかの側面があります。
ここからは、一般的にM&Aを行う際に実施される次のようなITデューデリジェンス(DD)の調査項目について、それぞれ順に説明していきます。
- ITシステム・インフラの構成
- IT組織の体制
- ITコスト
- 統合の際のシナジー効果の可能性
ITシステム・インフラの構成
ITデューデリジェンス(DD)を行うにあたって、まず理解をする必要があるのが、売り手企業または事業が利用しているITシステム・インフラの構成です。
ITインフラとは、「ITに関わるものの基盤となる設備や構造物のことを言う」とされています。物理的なパソコンやサーバー、ルーターなどの機器だけでなく、どのようなソフトウエアを使っているかなどもITインフラに含まれます。
これらのITインフラは、当然ながら、ITデューデリジェンス(DD)での調査対象項目です。買い手企業側としては、まず、売り手企業が、どのようなIT設備や機器、ソフトウエアを使って、買収対象となる
事業を行っているのかということを構造的に把握することが、ITデューデリジェンス(DD)を行う第一歩になります。
IT組織の体制
次に、買い手企業がITデューデリジェンス(DD)に関して調査・分析する必要がある項目が、売り手企業や事業のIT組織体制です。
買い手企業側としては、ITインフラ構成を把握すると同時に、そのITインフラをどのような組織体制で運用して事業に対するサポートを行っているのかを把握する必要があります。
売り手企業が所有している、具体的な機器や設備、ソフトウエアがITインフラと呼ばれるのに対して、それらのIT機器や設備、ソフトウエアを使って、売り手企業の事業が効率的に行えるようにサポートする人員体制のことをIT組織体制と言います。
売り手企業や事業が、どんなに良いITインフラ設備を持っていたとしても、それらをうまく使いこなせるようにサポートするIT組織体制がなければ事業がスムーズに効率よく行われることは難しくなります。
このため、買い手企業側としては、物理的な資産としてのITインフラ構成だけでなく、それを動かすIT組織体制についても、ITデューデリジェンス(DD)で詳しく調査・分析する必要があります。
ITコスト
買い手企業は、ITデューデリジェンス(DD)で、売り手企業や事業がどの程度ITシステムに対してコストをかけているのかを把握します。
買い手企業としては、買収する事業に対して適正なITコストがかけられているのかどうか、コストに見合った効率化ができているのか、などを把握する必要があります。
ITデューデリジェンス(DD)で売り手企業や事業のITシステムとそのコストを分析して、買収資産として、どのITシステムを買い取るかなども判断します。
ITコストのデューデリジェンス(DD)は、買収価格の算定にも影響があるため、非常に重要だと言えます。
統合の際のシナジー効果の可能性
買い手企業は、売り手企業や事業のITインフラ構成とIT組織体制を調査・分析し、十分に理解をしたのちに、買い手企業自体のITシステム・インフラ、IT組織体制にどのように統合すればよいかを検討する必要があります。
M&Aの大きな効果の一つが、売り手企業や事業と買い手企業の既存の事業とのシナジー効果であることから、IT分野についても、統合することにより、どのようにシナジー効果を発揮することができるのかを探ることは重要です。
買い手企業や事業のIT部門の統合の仕方としても、大きく分けて、売り手企業や事業のITシステムを買い手企業のITシステムに取りこむ方法や、売り手企業の優れたITシステムを取り入れる方法、全く新しいITシステムを構築する方法が考えられます。
ITデューデリジェンス(DD)で売り手企業や事業のITシステムを深く理解したうえで、買い手企業自身のITシステムとどのように統合するかを検討することは、現代のM&Aにおいては非常に重要な課題となります。
ITデューデリジェンス(DD)(IT DD)を行う方法と流れ全5ステップ
ここまで、ITデューデリジェンス(DD)の内容について見てきました。では次に、実際にITデューデリジェンス(DD)がどのように行われるかについて説明していこうと思います。
ITデューデリジェンス(DD)(IT DD)ITデューデリジェンス(DD)は一般的に次の5つのステップで行われます。
- ITデューデリジェンス(DD)チームの結成、方針の決定
- 売り手企業のITに関する資料の分析・精査
- 経営陣・IT担当者へのインタビューの実施
- 現地調査の実施
- レポートの作成
では、その流れを順に追っていきましょう。
ITデューデリジェンス(DD)(IT DD)チームの結成、方針の決定
ITデューデリジェンス(DD)を開始するにあたって、買い手企業はまず、ITデューデリジェンス(DD)を行う調査チームを結成します。
一般的に他の分野のデューデリジェンス(DD)でも、専門知識が必要とされることや、与えられる調査期間が短いため、各分野の専門家に協力を依頼することが多いですが、IT分野は特に専門性が高いことから専門家をチームのメンバーに入れることが多いように思われます。
ITデューデリジェンス(DD)の専門家としては、売り手企業や事業の業務との関連性も見ることができる方が望ましいので、IT自体の専門であることだけでなく、企業の事業や法務、財務にも明るいITベンダーやITストラテジストを選べる方が良いと考えられます。
ITデューデリジェンス(DD)の専門家にデューデリジェンス(DD)の実施を完全に依頼することも考えられますが、費用の問題や会社の意向を適時適切に反映させることなどを考慮すれば、デューデリジェンス(DD)に携わることを命じられた買い手側企業の社員も含めてチーム編成をする方がより適切です。
逆に、買い手側企業のIT関連部門の社員だけでITデューデリジェンス(DD)の調査チームを編成することもあり得ますが、自社のITシステムに長けていても、他社のITシステムの調査・分析までできるような社員がいるというのは、かなりまれであることから、専門家と役割分担してチームを編成するほうがより正確な分析ができるでしょう。
このようにして結成されたITデューデリジェンス(DD)調査チームで、デューデリジェンス(DD)の方針やスケジュールなどを決めたうえで、実際の調査にとりかかることになります。
売り手企業のITに関する資料の分析・精査
買い手企業側が結成したITデューデリジェンス(DD)チームは、まず、売り手企業や事業のITシステムに関する資料やシステム構成、IT組織体制などの書類などを集めて内容を把握し、分析、精査を行います。
これらの資料を分析、精査することにより、ITデューデリジェンス(DD)チームは売り手企業や事業に関するITシステムや組織体制の役割や概要を全般的に把握します。
場合によっては、さらに必要な資料の提出を求めたり、担当者にITシステムや組織体制の役割を聞いたりしながら、買収する企業や事業のITシステム部門の役割や利用状況を詳細に分析します。
このことにより、売り手企業側からの説明だけではなく、自ら買収対象の企業や事業のITシステムや組織体制を深く理解し、買収する場合にどのようにITシステムや組織体制を継承するのかの最終的な判断や買収する際のIT部門評価額の算定に役立てることになります。
経営陣・IT担当者へのインタビューの実施
Tデューデリジェンス(DD)の調査チームは、売り手企業や事業のITシステムや組織体制などの資料の分析をしたあと、売り手企業の経営陣やIT担当者に対するインタビューを行います。
その主な目的は、ITシステムや組織体制の資料で調査・分析した内容の確認と売り手企業のそれまでのITシステム導入や組織体制の歴史や成り立ち、業界のシステム導入状況や競業他社との比較、IT分野に対する思いや考え方などを理解することです。
このITシステムや組織体制に関するインタビューは、経営陣とIT部門の担当者を中心に行われますが、場合によってはよりITシステムの企業内での役割について詳しい内容を知るために、他の部門のITに関わる担当者対しても行うことがあります。
インタビューを行うことにより、売り手企業の企業や事業のIT部門対するこれまでの考え方をより正確に把握し、時には、インタビューによって、IT部門におけるキーパーソンを発見するということもあります。
このように売り手の企業や事業のITシステムや組織体制を深い理解をするうえで、経営陣・IT担当者へのインタビューはITデューデリジェンス(DD)で大変重要なプロセスになります。
現地調査の実施
さらに、ITデューデリジェンス(DD)を実施するチームは、売り手企業や事業の実際の現場でITシステムがどのように使われているのかの確認を行います。
実際に売り手企業や事業の職場で、売り手企業や事業の持っているITシステムがどのように使われ、IT部門の組織がどのような役割をしているのかを、現場で働いている社員の様子などを見ることによって、それまで確認してきた分析内容と実態との乖離を埋めることができます。
このことにより、ITデューデリジェンス(DD)チームは、売り手企業や事業のITシステムや組織体制の現実を、より詳細に見定めることができます。
レポートの作成
ITデューデリジェンス(DD)チームは、売り手企業や事業のITシステムに関する資料やシステム構成、IT組織体制などの内容の分析、経営陣・IT担当者へのインタビュー、ITシステムや組織構成についての現地調査の実施を経て、最後にその結果についてレポートを作成します。レポートの内容は、これまで説明してきたITデューデリジェンス(DD)全般に及びます。
Tデューデリジェンス(DD)チームは、どのような方針に基づいて、デューデリジェンス(DD)に取り掛かったのか、から始まり、売り手企業から提出されたITシステムやIT組織体制に関する資料、その分析結果、対象事業の業界でのITシステムの導入状況との比較や、対象企業のIT化がどの程度進んでいるのかなどの検証結果、そして、買い手企業のIT部門とのシナジー効果の可能性を報告書としてまとめます。
また、経営陣・IT担当者へのインタビューの内容ややり取り、最終的にそれらを総合して、どのようにIT部門を継承するのか、その継承するIT部門の範囲や買収価格の妥当性などの結論付けを行います。
レポートを作成し、買い手企業にレポートを提出することによって、ITデューデリジェンス(DD)の調査チームはその役割を終了することになります。
買い手企業は、このレポートを基に最終的に売り手企業や事業のどのようなITシステムや組織を引き取るのかの決定や、M&Aのスキームの中でのIT部門の役割の確定をし、全体的な買収価格の確定などの売り手企業との最終条件交渉に臨むことになります。
ITデューデリジェンス(DD)(IT DD)を任せるべき人と必要な専門知識
ITデューデリジェンス(DD)はこれまで見てきた通り、非常に専門的な知識と経験などが必要になります。
それぞれの企業のITシステムを構築するベンダーや構築されたシステムを利用している企業の担当者は、自社のシステムについての知識は豊富で詳細ですが、他社のシステムについての知識や経験は少ないと考えられます。
このようなことから、ITデューデリジェンス(DD)の専門家としては、M&Aを行った企業のITシステムを統合した経験のある専門家やITストラテジストなどに任せるのが望ましいでしょう。
その専門家やITストラテジストをサポートする、売り手企業、買い手企業それぞれのITシステムに詳しいベンダーや担当者が配置されると、さらに着実にTデューデリジェンス(DD)が進めることが可能になると考えられます。
ITデューデリジェンス(DD)(IT DD)を行う時の注意点やリスク
ここまで、ITデューデリジェンス(DD)の項目や方法と流れなどについて見てきました。そのうえで、買い手企業が実際に売り手企業や事業のITデューデリジェンス(DD)を行う上で注意すべき事項はどのようなものでしょうか?
ここからは、ITデューデリジェンス(DD)を行うにあたっての注意点やリスクについて説明していきます。ITデューデリジェンス(DD)を行う際の注意点やりすくには、次のようなものが挙げられます。
- 対象企業の性質を見極めIT DDを実施すること
- 開示された情報の管理を徹底すること
では、これらの注意点やリスクについて、1つずつ説明していきます。
対象企業の性質を見極めIT DDを実施すること
ITデューデリジェンス(DD)は、企業のIT化が進んでいる近年においては、その重要性は高まっています。しかし、買収する企業や事業によっては、それほどIT化が進んでいないということもあり得ます。
また、顧客に対して、ITシステムを使って事業を展開している場合、より詳細にITデューデリジェンス(DD)を行い、売り手企業や事業のITシステムと買い手企業のITシステムの統合を慎重に行う必要があります。
よって、売り手企業や事業の性質を見極め、実施するかどうかも含めてITデューデリジェンス(DD)の実施の範囲を決める必要があります。
開示された情報などの管理を徹底すること
ITデューデリジェンス(DD)では、売り手企業や事業で実際に使われているITシステムを詳しく調査、分析することになります。
よって、売り手企業や事業の様々な内部データや機密資料に接する可能性が高くなります。これらのデータや資料は外部に漏れることがあると、大きな損害になります。
ITデューデリジェンス(DD)を行う際に、デューデリジェンス(DD)に関わる買い手やIT専門家は売り手企業と秘密保持契約を結ぶことになりますが、それらの秘密保持が確実に行われているかどうかを常に確認し続ける必要があります。
秘密保持が守られない場合、買収後に競合他社に機密が漏れていて、買収した買い手企業が実損害を被ることになったり、買収がまとまらなかった場合に、売り手企業側から機密が漏れたことによる損害賠償訴訟を起こされたりする可能性もあります。
これらのトラブルを避けるために、売り手企業から開示された情報などの管理を徹底することは、適正なITデューデリジェンス(DD)を行う上では重要となります。
ITデューデリジェンス(DD)(IT DD)が不十分だったため問題が発生した事例など
では、最後にITデューデリジェンス(DD)が不十分だったことも原因と考えられる、M&A後に問題が発生して、失敗したと言われている事例などをご紹介します。
これらの事例を見るとITデューデリジェンス(DD)(IT DD)ITデューデリジェンス(DD)が重要であることがより理解できると思います。
みずほ銀行のシステム統合後の不具合発生
みずほ銀行は、2002年に日本興業銀行、富士銀行、第一勧業銀行が統合する形で誕生しました。
銀行は、それぞれ独自の銀行システムを持っていることが一般的なため、その統合の際には、どのようにITシステムの一種である銀行システムを統合するのかが課題になります。
みずほ銀行の場合は、合併する3行が、自行の銀行システムに統合することを譲らずに、それぞれの銀行システムを継続して使い、それを連携するシステムを作る形でスタートしました。
しかし、統合当日からATM停止を起こすなど、その後も何度もシステム不具合を繰り返し、みずほ銀行の銀行システム統合は、もっとも有名なシステム統合の失敗例として挙げられてしまうことになってしまいました。
これは、ITデューデリジェンス(DD)の結果のみが原因ではない部分はあるものの、徹底的なITデューデリジェンス(DD)を行ったうえで、適切な判断が行われれば、避けられた可能性もあった事例だと考えられます。
売り手企業や事業のIT体制の脆弱性がのちに問題となる事例
買収の対象となる売り手企業や事業のIT体制に脆弱性があったことが、M&A後に判明して、結果として買い手企業の負担になる事例もあります。
システム障害が起こる原因はさまざまで、ハードウエアの不調と人為的なミスが重なったり、外部からの攻撃によってデータが漏洩やシステムダウンが起こったりするような事例が考えられます。
ITトラブルは、サーバーの処理速度や容量、ハードウエアのスペックが不足している、トラブルなどの対応のマニュアルなどが整備されていない、セキュリティ対策が不十分などの内的要因や、外部からの攻撃やアクセス集中、自然災害などの外部要因で発生します。
しかし、これらの脆弱性は、いずれも対応可能なものであり、ITシステム体制への対応意識の高い企業であれば、適切に対応されているものです。
買い手企業としては、売り手企業のIT体制がどのような状況で、常に適切な対応がされているのかをITデューデリジェンス(DD)を十分に行うことで、脆弱性の存在を把握して、必要な対応の有無や費用も考慮した買収交渉を行うことができます。
その他一般的に起こるITデューデリジェンス(DD)(IT DD)不足による問題
みずほ銀行のように、社会を巻き込むようなシステム統合障害というのは、そう頻繁には起こりません。というのも、そのような障害が起こすと企業として莫大な損害が発生するためです。
社会的な影響や企業イメージへのダメージを考慮して、特に一般の人や企業に関わるシステム統合は慎重に行われます。
しかし、ITデューデリジェンス(DD)が不十分であったために、M&Aをした後にシステム統合が上手くいかずに問題が発生する事例はいくつもあります。ただ、社内で問題の影響が収まるために、外部に出てこないだけという面があります。
例えば、経理システムであっても、売り手企業も買い手企業も一般的な規制品のソフトウエアを極めてシンプルに使っているだけであれば、データの統合も比較的容易にできることもあり得ます。
しかし、通常、企業の業務のやり方に沿ったカスタマイズや取集データの違いなどがあることによって、システムの統合が難しくなることは想像に難くないでしょう。
特に、企業が大きくなったり、グループ企業でのシステム連携があったりするような場合には、そのシステムは独自のシステム構成やカスタマイズがされていることが多く、他のシステムとの統合には困難を伴うとともに統合後の不具合も発生しやすいです。
一般的には、売り手と買い手の2つのシステムを統合するような方法、どちらかのシステムに片寄せする方法、全く違ったシステムを作ってそこに売り手と買い手のデータを移行する方法などが考えられます。
これまでに行われたシステム統合の成功例で挙げられるものに、日本航空(JAL)と日本エアシステム(JAS)と東京三菱銀行とUFJ銀行の統合があります。
これらの統合はいずれも、いわゆる片寄せと言われる方法が採られ、日本航空(JAL)と日本エアシステム(JAS)の統合ではJALのシステムに、東京三菱銀行とUFJ銀行の統合では東京三菱銀行のシステムに他方のシステムを合わせた形で統合がされました。
結果、2つの統合ともに、一般のお客さまに対するサービスでの大きな不具合を起こすことなく、統合後も業務を行うことができた成功例とされています。
ITデューデリジェンス(DD)(IT DD)のまとめ
今回は、M&Aで非常に重要なプロセスであるデュージェリジェンスの中でも、その重要性が増してきているITデューデリジェンス(DD)について説明してきました。
現在のM&Aにおいて、ITシステムの統合はM&A後の企業経営に大きな影響を与えます。このため、売り手企業のITシステムや組織体制を正確に把握し、統合後のビジョンを持つことが非常に重要となってきています。
しかし、様々なシステムの知識や統合の手法を熟知しているシステム専門家は、企業内にはなかなか見つけることができません。
このような場合には、買い手企業は、ITデューデリジェンス(DD)の専門家の協力を得ながら、デュージェリジェンスを進めるような形で
ITデューデリジェンス(DD)を進めるなど、十分考慮することが必要です。