同じ経営ビジョンを持った経営者同士が、手を組んで更なる高みを目指すという考え方があります。
「同志的統合」というのですが、あのソフトバンク創始者の孫正義会長の投資哲学です。
あらゆる企業を買収して、傘下に取り入れていき、ソフトバンク自体も大きく成長していっていますよね。
大手企業の間で、M&Aというビジネススキームは大注目されています。
2018年は、外相産業にとっても多くのM&Aが活用された1年でした。飲食店を経営する上で、ますます深刻化している人手不足問題、オーナーは高齢化しているのに、後継者がいないという問題、これらを解決してくれるのがM&Aだというのです。
今回は、飲食店経営者が、今話題のM&Aを活用して成功できる方法をご紹介していきます。
外食産業の現状とは?
新たな成長戦略としてM&Aが注目されていると冒頭でもお話しましたが、今、外食産業はどのよう状態なのでしょうか。M&Aが注目されている理由を探っていき、そして成長への糸口を探していきます。
M&Aが注目されている理由とは?
オーナーの高齢化がすすみ、事業承継をM&Aで行うケースが増えたから
地方を中心として事業承継を目的としたM&Aが増加傾向にあります。1970年代に創業した企業、つまり高度成長期に外食ブームが起こり、それに伴い開業した外食産業はすでに創業40年となる老舗飲食店へとなっているのです。30代だったオーナーも70代になっているということです。
引退したくても、飲食店を継ぎたがらない実子は多い、廃業しようにも地域に愛された店をたたむのは忍びない、そんな理由からM&Aを検討するオーナーが増えているのです。
老舗と言われるお店を経営している方は、どうしても高齢者が多くなります。長年愛されてきた店を継ぎたいという若い経営者は多く存在します。マンネリ化したサービス内容も、若い経営者に新しい風を吹き込んでもらうことも可能です。買い手側からも多くのファンがついている店を引き継ぐのは大きなメリットになります。
乗っ取られるという敵対的な買収でなく有効的なM&Aが行われるようになったから
経営者が大切に育ててきた店を買いたたかれて、乗っ取られるというイメージが強かったM&Aですが、最近の傾向は、経営者同士がお互いの事業を理解して、お互いの相性を確認しながら行われるようになりました。とにかく買い手も売り手もお互いを尊重しあうという傾向が強くなってきたのです。
特に、外食産業で一番大切なものは、現場で働いてくれるスタッフです。スタッフの対応が良くてずっと店に通い続けるお客様は多いですから。そのようなスタッフは事業価値にもつながります。
このスタッフが働きやすい環境を提供するためにも、友好的なM&Aが行われる必要があるのです。
M&Aを成功させるために
どうやったら、飲食店のM&Aは上手くいくのでしょうか。そういう疑問は出てきますよね。
ここでは、どうやったら成功できるか?について、売り手側と買い手側の心得についてお話させていただきます。
売り手側の心得5つ!
その①惜しいと思えるタイミングで売る
もう少し経営してみたい・・・、そう思えるタイミングで売却することです。惜しいと思える飲食店ならきっと買いたい企業は現れます。売り時は逃さないことです。
その②この条件だけは譲れない!をはっきりしておくこと
大切に育ててきた店なら、これだけは譲れないという条件があるはずです。しかしあまり多く条件を設定しておくのは、買い手側に敬遠される危険性がでてきます。しかしこれだけは!という条件は明確にしておくことです。
その③会社の実態を把握しておく
経営者なら把握しておくべきなのですが、財務状況などつい従業員に任せっきりな事があります。
財務データなどいつも見られるようにしておくことです。また過去3年間の決算内容もいつでも説明できるようにしておくと後々のM&A交渉の場でも役立ちます。不利な情報があったとしても、きっちりと把握して最初の段階で説明しておくと、大した問題にならない場合が多いのです。正確に情報を開示するためにも会社の実態を把握しておいてください。
その④スピーディな決断力が必要!
M&Aをやる!と決めたら、最後まで自分の判断を信じてやり遂げていただきたいのです。
売りたいと思ったら、必ず買いたいという方が出てきます。せっかくの出会いを失わないためにも、初心貫徹、決断をして徹底的にやり切っていただくことがM&A成功の最大の秘訣です。
その⑤信頼できるアドバイザーを見つけておく
M&Aというのは、オーナーが単独でつよい決断力が必要です。しかし、日常の忙しい経営と並行して行う必要がありますから、時間的、労力的な節約のためにも、M&Aアドバイザーは必要です。
飲食店のM&A実績があるか、M&Aを行う上での交渉力は高いかなど基準に選定してみてください。
買い手側心得5つ!
今度は買い手側の心得をご紹介します。
その①買収目的をはっきりさせる!
これは売り手にも言えることですが、目的がはっきりしていないM&Aは成功しません。
買収を通して自社がどのように成長できるかを常に想定しておく必要があります。どのような出口があり、何を実現できるのかを明確にしておいてください。
その②売り手企業を尊敬すること
冒頭で、孫正義氏の「同志的統合」についてお話しました。売り手企業はともに成長しあえる大切なビジネスパートナーとなるのです。お互いに尊重しあって、敬意を払う必要があるのです。
その③買い手にもスピーディな判断力は必要
M&Aは企業と企業の出会いです。出会いとうのはタイミングを逃してしまっては、二度と同じ相手とは巡り合えません。自社の事業を成長させてくれるか、相性が良いかを念頭に入れて、スピーディな判断力でM&Aを成功させていただきたいのです。
その④リスクについて把握しておくこと
買収後に少なからずリスクがあるということを想定しておく必要があります。
なんとか対応できるリスクならば、買収して事業を傘下に入れた方が大抵の場合はメリットがあります。
どのようなリスクかを常に正確に把握しておく必要があります。
その⑤買収してからが勝負だと認識しておくこと
買収がゴールではありません。M&A成立後は当初の目的を果たすために買収してからが勝負だということを認識していただきたいのです。
特に、飲食店スタッフが働きやすい環境作りなどは、買収している過程で常に考慮しておく必要があります。売り手企業のスタッフの雇用継続はもちろんのこと、その待遇改善も必要です。
M&A4つの手法とは?
- 事業譲渡
- 株式譲渡
- 合併
- 株式交換
という大きくわけて4つが挙げられます。
飲食店M&Aということでよく使われるスキームは、①事業譲渡、②株式譲渡となります。
中小企業のM&Aでもこの2つのスキームが良く使われます。
飲食店M&Aを行う上での、「株式譲渡」とは、株式を51%以上所得して経営権をとる場合ということを指して、それ以上の株式を所有する場合は、資本提携とします。
事業譲渡に関しては、ちょっと手続きが複雑になってきます。事業の全部、または一部を譲渡することも可能ですが、一つ一つ契約をし直す必要があるのです。
店舗を3店以上あり、それを譲渡したい、譲り受けたいという場合は、株式譲渡が手続きとしては簡単です。なぜなら店舗には賃貸借契約が存在すると思いますが、この契約を引き継ぐ負担が軽くなります。
飲食店M&Aで気をつける点とは?
ここでは、飲食店M&Aを成功させるうえでの注意点をご説明していきます。
店舗の賃貸借契約
先程の項目でもご説明している店舗の賃貸借契約は、重要な注意ポイントです
店舗を借りるときに、賃貸借契約書というのを取り交わしていると思うのですが、今一度確認していただきたいのです。契約条文に関しては様々なスタイルがあるのですが、ここでは、特に以下にご紹介する2か所について確認していただきたいのです。
通知義務が必要な場合
契約者は、その商号、氏名、住所、代表者、営業目的、資本金、資本構成、その他の商業登記事項もしくは、身分上の時効に重要な変更が生じたときは遅滞なく書面より家主に通知すること
などの条文の場合は、通知すればOKです。
承諾義務が必要な場合
上記のような変更(商号、氏名、住所、代表者、営業目的、会社組織など)があったとき、事前に文書で届け出て、家主の事前の書面承諾が必要という条文がある場合は、ちょっと厳しくなってきます。通知だけではなく、家主の承諾が必要で、承諾されなければ、株式譲渡などができないということになります。
これ以外に、借主に上記の変更があっても何もしなくてよい契約もあります。
買収を考えている場合は、買収希望の店舗の賃貸借契約内容がどのようなになっているかチェックを行う必要があります。
飲食店経営者とM&Aアドバイザーの付き合い方
2‐1の項目では、契約内容の把握の重要性についてお話させていだきました。
また、売り手の心得⑤のところでも、信頼できるアドバイザーを見つけておくことをお話しています。
飲食店に必要な、M&Aアドバイザーとはどんな人物でしょうか?
飲食店経営には、店舗の賃貸借契約以外にも様々な契約行為があります。
また従業員と、お客様とのトラブルなどもあります。従業員トラブルと言えば、最近になって有名になりました、「バカッター」と呼ばれる人種です。アルバイト従業員による管理者が見ていないところで、不届きな動画をSNSにアップして、仲間内で共有する行為です。
仲間内だけならいいのですが、外部にも流出してしまって、日本国中、全世界の人々にさらしてしまっているのです。多大な損害がでることから外食産業の企業としては、損害賠償を、アルバイト本人、保護者に求める裁判を起こしていることが報道などでも目にします。報道されて、被害に遭っている企業というのはかなり大企業なことが多いです。報道されるレベルなので、有名な企業が多いということも考えられます。
これが個人経営のお店だったら、泣き寝入りなんてこともあり得るのです。
対策としては、従業員を採用するときに、人物を見極めることがとても大切ですし、現場のスタッフリーダーに使用を任せっきりにするのではなく、経営者本人が採用現場に立ち会うことが必要です。
また、アルバイトであっても、損害を与えた場合は、賠償する責任があるという契約内容をはっきりさせることも重要です。
そして今後の飲食店経営には、法律に明るい専門家の存在が必要になってくるのではないでしょうか。
飲食店M&Aに経験値が高い、実績のあり、法律にも精通している存在と言えば弁護士となってきます。
M&Aだけでなく、様々なトラブル回避について協力にサポートしてもらえます。
まとめ
今回は、飲食店M&Aについてお話してきました。
ここまでお話してきて、お分かりいただけたと思うのですが、想定外のトラブルになった時、事業価値を下げてしまうような事態になった時に、法律の専門家である弁護士をアドバイザーとして顧問契約する必要性がでてきているのです。
普段の日常業務においても、また今後M&Aを検討して実行していく過程で、弁護士を是非、アドバイザーとして選定することをお勧めいたします。