M&A契約書の前提条件(コンディション)の内容とポイント!

  • 2017年10月29日
  • 2024年11月6日
  • M&A

M&A契約書 前提条件(コンディション)とは?

M&Aの契約書(最終契約書)における前提条件とは、この条件を満たさない限りM&Aのクロージング(株式譲渡実行・事業譲渡実行など)を行わないという意味での前提条件です。

最終契約の前提条件としては、売主に関する前提条件と買主に関する前提条件が存在し、売主の義務(対象会社の株式の譲渡義務)に関する前提条件については、売主は、この前提条件が満たされた場合のみ、株式譲渡の実行義務を負うこととなり、買主の義務(株式譲渡の譲渡代金の支払義務)に関する前提条件については、買主は、この前提条件が満たされた場合のみ、株式譲渡の譲渡代金の支払義務を負うのである。

この契約書(最終契約書)においては、前提条件として、一般的なものとしては、表明保証条項や遵守条項に違反が無いことや、案件によっては、M&Aの前提として官公庁からの許認可が必要な場合は、独占禁止法の届出が必要な場合に、これらを前提条件としてM&Aを実施するということで、この契約書(最終契約書)に前提条件が規定されます。

この契約書(最終契約書)においてよくある規定としては、例えば、以下のような規定です。

【独占禁止法の届出】

  • 「乙が、本件株式譲渡について、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。その後の改正を含み、以下「独占禁止法」という)第10条第2項に基づく株式取得に関する計画届出書の提出(以下「事前届出」という)を行っており、譲渡日までに、独占禁止法第10条第8項に定める期間(公正取引委員会規則に基づく追加の報告書、資料又は情報の要求がなされた場合は、同法第10条第9項本文括弧書に定める期間をいう)が、同法第49条第5項に基づく事前通知なく終了していること」
【業法上の届出】

  • 「本件株式譲渡を実行するために、適用ある法令等に基づき、譲渡日までに取得又は履践することが義務づけられている許認可等及び届出等その他の一切の手続のうち重要なものが全て譲渡日までに適法かつ有効に完了していること、及び行政機関・行政庁から、本件株式譲渡を法律上又は事実上阻害する処分、勧告、指導等がなされていないこと」
【後発事象の不存在】

  • 「対象会社の事業、財務状況若しくは将来の収益計画に重要な悪影響を及ぼす可能性のある事由若しくは事象又はその他乙による本件株式譲渡に係る判断に重要な影響を与える事由若しくは事象が発生しておらず、発生するおそれもないこと」

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M&A最終契約書の前提条件の解説

弁護士法人M&A総合法律事務所では、M&Aにおいて取り扱う主な契約書である秘密保持の契約書・基本合意書・最終契約書・附随契約書などのM&Aの契約書について、10年来、300件以上の豊富な経験を有していますので、契約書の契約者様の権利を守り、リスクを排除するため、適切なM&Aの契約書の作成及びアドバイスを提供させて頂いております。

その中でも、このページでは、M&Aの契約書のうち最も重要な契約書である最終契約書(株式譲渡契約書事業譲渡契約書等)の「前提条件」について説明いたします。

M&A最終契約書の多様な前提条件について

最終契約書においては、前提条件として重要なものとしては、表明保証条項や遵守条項に違反が無いことなどであるが、案件によっては、M&Aの前提として官公庁からの許認可の取得が必要な場合や、独占禁止法の届出及び待機期間の経過が必要な場合に、これらをも前提条件とすることがある。

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M&A最終契約書の前提条件の重要性について

前提条件は、遵守条項とは異なり、当事者の義務ではないものの、この前提条件が充足されない以上、株式譲渡契約の相手方は、自らの義務を履行してくれない(売主は株式を譲渡してくれないのであり、買主は譲渡代金を支払ってくれない)のであるから、当事者としては、何とかして相手方の要請する前提条件を充足させることが必要となることから、事実上の遵守条項ということとなる。

ただし、遵守条項ではないことから、前提条件を充足させなかったとしても、それは遵守条項違反とはならず、それによる損害の補償義務という問題は発生しない。

例えば、最終契約書においては、必要な許認可を取得することなどの規定を、遵守条項においては努力義務に留めて(又はそもそも規定せず)において、前提条項には明確に規定することもあります。その場合、その前提条件を充足しなかったとしても、遵守義務違反にはならないため、それによる損害の補償責任の問題にはならないものの、前提条件は充足していないのでM&Aは実行しないということとなり、損害の補償責任を追及するよりは、その方が、売主と買主の利害調整としては適切な場合もあり、最終契約書においては、特定の事項について、前提条件に規定するか遵守条項に規定するかの配分を個別具体的に検討することとなる。

M&A最終契約書の前提条件を充足しなかった場合の効果について

前提条件を充足しなかった場合、当事者としては、相手方に対して、補償請求・損害賠償請求をするほどではないものの、M&Aの実行については、前提条件を充足していないということで、ひとまずクロージングを中止するということができる。

この場合、相手方としては、クロージングを中止するだけが選択肢ではなく、前提条件の充足を待ってから、再度、M&Aの実行を行うことを取り決めるとか、反対に、前提条件をひとまず放棄し、M&Aの実行後に充足させることで足りることとして、M&Aの実行を行ってしまうか、など、様々な対応策が考えられる。

ただ、M&Aのプロセスはかなり長く、クロージングに至るまで、長期間をかけて、対象会社のデューデリジェンス(DD)を行い、売主と交渉を行い、最終契約書を完成させ、クロージングに至っているのであり、前提条件を充足しなかったからと言って、直ちに、クロージングを中止してしまうと、再度、M&Aのプロセスを動かせることは、必ずしも容易ではない。

とはいえ、前提条件が充足されなかった場合、その前提条件が充足されなかったことに対する当事者の対応や態度、その充足されなかった前提条件の重大性などに鑑み、やむなく、クロージングを中止するべき場合もあろう。

当事者としては、前提条件については、それを充足しなかった場合、状況に応じ、どのような対応を行うかについては、柔軟に検討することが可能であるものの、慎重な検討が必要となる。

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M&A最終契約書の前提条件と表明保証の関係について

M&A案件によっては、最終契約書において、前提条件として、表明保証違反の不存在及び遵守条項違反の不存在のみならず、他にも多数の前提条件が規定されていることも多い。

この点、最終契約書においては、表明保証又は遵守条項が規定されていれば、前提条件としては、表明保証違反の不存在及び遵守条項違反の不存在も規定されているのであるから、間接的に、個別具体的な表明保証違反事由及び遵守条項違反事由についても、それが存在した場合、前提条件を充足しなかったこととなるのであり、理論的には、最終契約書の前提条項に、それらの個別具体的な表明保証違反事由及び遵守条項違反事由の不存在についても規定するのは、前提条件の規定を重複して規定することとなるため、前提条件を重複して規定する必要はないはずであるが、最終契約書でそのような重複した前提条件を規定している契約書をまま散見するが、その契約書は、その前提条件の重要性を強調したいという趣旨で、実質的に重複して前提条件を規定していることが多い。

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