デューデリジェンス(DD)とは?目的や行う理由、手続きの流れをわかりやすく解説

  • 2024年2月20日
  • 2024年12月1日
  • M&A

企業がM&Aを行う際、買い手企業にとって非常に重要なプロセスとされているのが、デューデリジェンス(DD)です。デューデリジェンス(DD)を適正に行うことは、M&Aを成功させるためには必要な手続きであると言われています。 

 今回は、企業が行うM&Aの結果の成功か失敗かを決める、とても大切なプロセスであるデューデリジェンス(DD)について、その目的や行う理由、種類や手続きの流れなどをわかりやすく解説していこうと思います。 

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デューデリジェンス(DD)とは

デューデリジェンス(DD)は、M&Aを行う際に、売り手企業または事業についての隠れたリスクを含めた実態を、買い手の企業側が適切に把握するために必要な、最終交渉の前に行う調査・分析のことを言います。 

M&Aを行う際に買い手の企業としては、対象となる売り手の企業または事業が客観的に見て、どのような実態、どのような状況なのかを正確にわからなければ、不当に高い価格で買い取ってしまうリスクがあります。 

これを避けるために買い手の企業は、売り手企業の事業の客観的な実態を、場合によっては弁護士や税理士、コンサルタントなどの専門家のアドバイスを受けながら、デューデリジェンス(DD)を行って様々な角度から調査・分析を行い、買い手としてM&Aに関する適正な判断を行える環境を整えます。 

このように、最終的に適正にM&Aを成功して成立させるために、買い手企業にとってデューデリジェンス(DD)は欠かすことのできない必要なプロセスとなっています。 

デューデリジェンス(DD)の目的や実施する理由

デューデリジェンス(DD)を行う目的は、売り手企業や事業の現状を、資料や現場を見て調査すること、および潜在的なものも含めた、対象となる売り手企業や事業のさまざまなリスクを買い手企業側が事前にできるだけ正確に把握して、M&Aを実施するかどうかの最終的な判断やM&Aの実施後の対応を検討し、適正な買収価格を算定することです。 

売り手企業や事業の現状とリスクを調査・分析することにより、買い手企業はあらかじめM&Aを実施した後のリスクの存在を適切に把握したうえで、買収の最終判断や買収価格の適切な算定を行うことができます。 

デューデリジェンス(DD)では、不良債権や過大評価されている資産がないかなどの財務リスク、効率的でないオペレーションや技術的な問題がないかなどの運用リスク、抱えている訴訟や法律違反などを行っていないかなどの法的リスクなど、様々な側面から潜在的、顕在的リスクの調査・分析を行います。 

デューデリジェンス(DD)を行う理由は、買い手の企業が売り手企業や事業の正確な価値の算定をすることと、買収した後に起こるリスクを含めて売り手企業や事業の状況を正確に知ることで、その企業や事業を買収するかどうかの最終判断をすることにあります。 

デューデリジェンス(DD)の種類

デューデリジェンス(DD)は、売り手の企業や事業について調査・分析する対象にする分野や側面によって、いくつかの種類があります。 

ここからは、一般的にM&Aを行う際に実施されることが多い、次の代表的なデューデリジェンス(DD)についてそれぞれ順に説明していきます。 

  • セルサイドデュージェリジェンス 
  • ビジネスデュージェリジェンス 
  • 財務デュージェリジェンス 
  • 税務デュージェリジェンス 
  • 法務デュージェリジェンス 
  • 人事デュージェリジェンス 
  • ITデュージェリジェンス 
  • その他のデュージェリジェンス 

セルサイドデューデリジェンス

セルサイドデュージェリジェンスは、セラーズデューデリジェンス(DD)とも言われ、その名の通り、売り手側が自らの費用で行うデューデリジェンス(DD)のことです。基本的にデューデリジェンス(DD)は買い手企業が行うものですが、このデューデリジェンス(DD)だけが売り手側が行うデューデリジェンス(DD)になります。 

セルサイドデュージェリジェンスを行うことにより、売り手企業は、ある程度客観的に自社の情報の正確性や真実性を確認することができます。また、自社の様々な隠れたリスクなどをあらかじめ調査することにより、これらに事前に対応することができます。 

さらに、買い手側のデュージェリジェンスでリスクを発見されて、M&A自体が成立しなかったり、売却後に判明して表明保証義務違反に問われて損害賠償請求をされたりするなどの不測の事態を回避できます。 

他のデューデリジェンス(DD)と違ってセルサイドデュージェリジェンスは、売り手側が企業や事業の客観的な状況把握のために行うものと言えます。 

ビジネスデューデリジェンス

ビジネスデューデリジェンス(DD)は、買い手企業が売り手企業または事業のビジネスモデルを分析し、その業界の外部環境なども調査して、競争力や将来性などを把握することを目的として行われます。 

また、売り手企業または事業の強みや弱みと、買い手企業の強みと弱みを合わせて分析することにより、どのようなシナジー効果が期待できるか、市場へのインパクトがどの程度あるのか、などの分析も行うことができます。 

ビジネスデューデリジェンス(DD)は、他のデューデリジェンス(DD)と違って、細かい分野ごとの詳細な調査・分析ではなく、少しダイナミックな業界分析や買収効果などの大きな視点での検討をすることになります。 

財務デュージェリジェンス

財務デューデリジェンス(DD)は、売り手企業または事業の財務について、その状況、リスク、課題などを分析・調査するものです。財務デューデリジェンス(DD)なしには買収する企業や事業の適正な買収価格を決めることはできません。 

また、財務デューデリジェンス(DD)では、貸借対照表や損益計算書などの基本的な財務諸表だけでなく、未払いの時間外勤務の支払いや隠れた買掛金などの簿外債務などがないかも調査します。これらのような外見からはわからない実際上の財務状況を正確に調査することも、財務デューデリジェンス(DD)の重要な目的です。 

さらに、貸借対照表に載っている資産が実際に簿価に見合う価値があるかどうかや、売り手企業が立てている、買収事業の将来の収益性の見込みについての妥当性なども調査する項目として考えられます。 

これらの調査・分析によって、買収する側の企業は売り手側が示す企業・事業価値を鵜呑みにするのではなく、自己の側で算定した企業価値や事業価値を基に最終的な条件交渉に臨むことが可能になります。 

税務デューデリジェンス

税務デューデリジェンス(DD)は、一般的に財務デューデリジェンス(DD)と並行して、買い手側企業がM&A後に不本意な税務リスクを負わないことを目的に行われます。 

税務デューデリジェンス(DD)の主な内容は、税申告が正しく行われているかと、納税状況の確認です。税の申告漏れがあった場合には、M&Aが行われた後に買い手企業が納税の義務を負わなければならない可能性もあります。また、税の申告漏れは、世間的な企業イメージの悪化などの大きなダメージも伴います。 

よって、買い手企業としては、売り手企業または事業において、正しく税務に関する業務が行われているかの確認をしておく必要があります。 

法務デューデリジェンス

法務デューデリジェンス(DD)は、買い手企業が売り手企業や事業の法務的、労務的リスクを洗い出し、チェックすることを目的に行われます。 

法務デューデリジェンス(DD)で調査する主な項目としては、組織の構成、各種会議体、規則・規定、株式の内容、株主の状況、契約についての法的なリスク、法令順守状況、訴訟や紛争、人事労務関係、知的財産権、環境問題などが挙げられます。 

組織の構成、各種会議体、規則・規定をデューデリジェンス(DD)することによって、売り手企業や事業がどのような組織、会議体などで運営され、適正な規則・規定に基づいて進められているのかを確認します。 

次に、株式の内容、株主の状況では、発行株式の種類や内容、株主の変遷や現在の株式がどのような割合で誰が所有しているのかなどが調査されます。 

さらに、契約などが適法に結ばれているか、各種規制や法令が守られているか、抱えている訴訟や紛争がないかなども調べ、訴訟リスクなどがないかなどの確認も行います。 

そのほか、人事労務関係のデューデリジェンス(DD)では、社内でさまざまなハラスメントやサービス残業などがないか、コンプライアンスは守られているかなどを調査、ヒアリングを行い、売り手の企業や事業が持つとされている商標や特許などが適切に登録されているか、事業の実行において、土壌汚染や排水汚染、大気汚染など、環境に対するリスクがないかなども調査を行います。 

これらの法務デューデリジェンス(DD)を行うことによって大きなリスクが存在することが判明した場合には、買い手企業は、その対応を考慮して買収価格を引き下げたり、リスクの内容や大きさによっては、買収を取りやめることを判断したりすることもあり得ます。 

人事デューデリジェンス

人事デューデリジェンス(DD)では、売り手企業や事業に関わる人材のスキル、経験、業績の実態を把握し、M&A後の統合に向けて、組織構造、人事方針、報酬体系などを調査します。 

これにより、M&A後の組織の再編や企業風土の融合の課題を洗い出し、より効果的な統合戦略を進めることが期待できます。 

人事デューデリジェンス(DD)は、法務デューデリジェンス(DD)の分野と重なるような部分もありますが、法務デューデリジェンス(DD)が労務的リスクの調査など、主に過去のリスクに対するものであるのに対して、人事デューデリジェンス(DD)で調査する項目は、企業風土の把握など将来の統合に向けての調査という側面が強いと言えます。 

ITデューデリジェンス

ITデューデリジェンス(DD)は、買い手企業が売り手企業や事業の情報システムの状況や問題点、IT資産の価値を調査することなどを目的に行われます。 

近年では、買収する企業が導入しているITシステムの状況や、利用しているソフトウェアなどを把握することが、M&Aを行う上で重要なポイントになってきています。 

調査する項目としては、買収後にITシステムの想定外の投資やコストが発生するリスクがないか、情報漏洩や情報セキュリティ上の問題がないか、買い手企業のITと統合する際に問題はないかなどが調査・分析されます。 

ITデューデリジェンス(DD)を行うことにより、ITシステム起因の重大なリスクが発生したり、多大なコストが発生することを回避できたりするだけでなく、ITシステム統合もスムーズに進めることができるというメリットがあります。 

その他のデューデリジェンス

ここまでに説明をしてきたデューデリジェンス(DD)のほかに、対象となる企業や事業の分野に応じて、専門家も使って知的財産や不動産、環境などのデューデリジェンス(DD)を行うこともあります。さらに、対象企業の事業性の評価を目的として、SWOT分析等を用いて強みや弱み、業界の状況などを細かく分析する事業デューデリジェンス(DD)などもあります。

対象会社の評価をしっかりできるかどうかで、MAの失敗を防げたり、シナジー効果も大きくできたりするでしょう。

これらのデュージェリジェンスを含めてどれだけのデュージェリジェンスを行うのかは、対象のM&Aにおける、その重要性や時間的な制約、調査のためにかけることのできる費用などによって判断されることになります。 

いずれにしても、買い手企業が買収にあたっての正確な価値の算定と、M&A後に想定外のリスクや損害を被らないために、デューデリジェンス(DD)をどこまで行うかを判断することになります。 

またM&Aを成功させるためには、ビジネスモデル、財務、税務、法務、人事、ITといった各側面をバランスよく網羅的に調査・分析することが大切です。「どれかひとつを重要視すればよい」「XXは軽視してもよい」という考え方はM&Aの失敗に繋がるため注意しましょう。規模に合わせた適切な範囲や優先順位を考慮して行っていきましょう。

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デューデリジェンス(DD)を行うタイミング

M&Aで、デューデリジェンス(DD)を行う一般的なタイミングは、売り手の企業と買い手の企業がM&Aに関する基本合意契約を締結した後で、かつ、最終条件交渉に入る前です。 

これより早いタイミングだと、買い手企業側の関係者が、売り手の企業やM&A対象の部署に調査に入ることによって、さまざまな噂が立ったり、従業員や取引先を動揺させたりしてしまうことになります。 

逆に最終条件交渉前にデューデリジェンス(DD)を行わないと、買い手企業は、売り手の企業や事業の詳細な内容・状況がわからず、適正な買収価格の設定や、買収を行う際に売り手に求める条件設定を適切にすることができません。 

また、デューデリジェンス(DD)を行うのに要する期間も考慮する必要があります。中小企業であれば、スムーズに進めば1~2週間程度で終わらせることができる場合もあります。 

一方で、企業が大きくなれば、調査・分析をしなければならない項目が多くなり、大企業であればデューデリジェンス(DD)を行うのに、1~2か月要することもあります。 

これらのことを理解したうえで、適切なタイミングでデューデリジェンス(DD)を行う必要があります。 

デューデリジェンス(DD)を行う方法と流れ全5ステップ

これまで、デューデリジェンス(DD)の内容について説明をしてきました。次に、実際にどのようにデューデリジェンス(DD)が行われるかについて見ていこうと思います。  

デューデリジェンス(DD)は一般的に次の5つのステップで行われます。 

  • 調査チームの結成、方針の決定 
  • 売り手の資料の分析・精査 
  • 経営陣・担当者へのインタビューの実施
  • 現地調査の実施 
  • レポートの作成

では、その流れを順に追っていきましょう。 

調査チームの結成、方針の決定

まず、デューデリジェンス(DD)を行う調査チームを結成します。一般的に専門知識が必要とされることや、与えられる調査期間が短いため、各分野の専門家に協力を依頼して、デューデリジェンス(DD)の調査チームを結成することが多いです。 

専門家としては、行うデューデリジェンス(DD)の種類に応じて、弁護士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士などが考えられます。 

完全に専門家にデューデリジェンス(DD)の実施を依頼することも考えられますが、費用の問題や会社の意向を適時適切に反映させることなどを考慮して、デューデリジェンス(DD)に携わることを命じられた買い手側企業の社員とチーム編成をすることが多いです。 

逆に、買い手側企業の社員だけでデューデリジェンス(DD)の調査チームを編成することもあり得ますが、社員が行う場合には、通常業務と並行して行う必要があることや、普通、企業内にM&Aを経験している社員がいるというのはまれであることから、専門家と分担して作業を行うのが一般です。  

このようにして結成された調査チームで、デューデリジェンス(DD)の方針やスケジュールなどを決めたうえで、実際の調査にとりかかることになります。 

売り手企業・事業の資料の分析・精査

買い手企業側が結成したデューデリジェンス(DD)チームは、まず、売り手企業や事業に関する資料を集めることから始めるのが一般的です。 

集める資料は、調査チームで実施することに決めたデューデリジェンス(DD)の分野によってさまざまですが、財務諸表、中長期経営計画、納税申告書、関係会社との契約書、社内規則・規定など基本的なものは必須となります。 

これらの資料を分析、精査することにより、デューデリジェンス(DD)チームは売り手企業や事業の概要を全般的に把握することに注力します。 

場合によっては、さらに必要な資料の提出を求めたり、デューデリジェンス(DD)を行っている分野や売り手企業や事業が属する業界の専門家の意見も聞いたりしながら、買収する企業や事業の状況を詳細に分析します。 

このことにより、売り手企業側からの説明だけではなく、自ら買収対象の企業や事業を深く理解し、買収するか否かの最終的な判断や買収額の算定に役立てることになります。 

経営陣・担当者へのインタビューの実施

デューデリジェンス(DD)の調査チームは、一般的に、売り手企業や事業の資料の分析をしたあと、売り手企業の経営陣や担当者に対するインタビューを行います。 

その主な目的は、資料で調査・分析した内容の確認と売り手企業のそれまでの歴史や成り立ち、業界の状況や競業他社との関係、事業に対する思いや考え方などを理解することです。 

このインタビューは主に経営陣を中心に行われますが、場合によってはより詳しい内容を知るために、専門分野の担当者にも行うことがあります。 

インタビューを行うことにより、売り手企業の企業や事業に対するこれまでの考え方や、事業におけるキーパーソンを発見するということもあります。このように売り手の企業や事業の深い理解をするうえで、経営陣・担当者へのインタビューはデューデリジェンス(DD)で大切なプロセスになります。 

現地調査の実施

さらに、デューデリジェンス(DD)を実施するチームは、売り手企業や事業の資料や経営陣・担当者へのインタビューと兼ねて、実際の現場がどのようになっているのかの確認を行うことが多いです。 

工場などの資産を売り手企業が所有しているような場合、それらの資産の状況や実際に現場で働いている社員の様子などを見ることによって、それまで資料や報告書などからの分析と実態との乖離を埋めることで、より正確に買収価値を見定めることができます。 

レポートの作成

資料の分析、経営陣・担当者へのインタビュー、現地調査の実施を経て、最後にデューデリジェンス(DD)チームは、その結果についてレポートを作成します。レポートの内容は、これまで説明してきたデューデリジェンス(DD)全般に亘ります。 

どのような方針に基づいて、デューデリジェンス(DD)に取り掛かったのか、から始まり、売り手企業から提出された資料、その分析結果、対象事業の業界の状況やその中での対象企業の位置づけなどの検証結果を報告書としてまとめます。 

また、経営陣・担当者へのインタビューの内容ややり取り、最終的にそれらを総合して、買収することや買収価格の妥当性などの結論付けを行います。 

レポートを作成し買い手企業にレポートを提出することによって、デューデリジェンス(DD)の調査チームはその役割を完了することになります。 

買い手企業は、このレポートを基に最終的なM&Aのスキームや買収価格の確定などの売り手企業との最終条件交渉に臨むことになります。 

デューデリジェンス(DD)を行う時の注意点やリスク

ここまで、デューデリジェンス(DD)の種類や手続きの流れなどについて見てきました。そのうえで、買い手企業が実際に売り手企業や事業のデューデリジェンス(DD)を行う上で注意すべき事項はどのようなものでしょうか? 

デューデリジェンス(DD)を行うにあたっての注意点は次のようなものが挙げられます。 

  • 規模に合わせて適正な範囲で行う 
  • 優先順位をつけて行う 
  • リスクを把握して情報管理を徹底する 

では、これらの注意点やリスクについて、1つずつ説明していきます。 

規模に合わせて適正な範囲で行う

デューデリジェンス(DD)は、買収する側の企業が、売り手企業や事業について詳しく理解し、大きな潜在するリスクがないことを確認するために行うものです。 

時間と費用をかけて売り手企業や事業の内容のすみずみまで調査をすることも可能ですが、必要以上に手間をかけることは、結果としてM&Aをするタイミングを逸したり、規模に比較して非常に高額な費用がかかったりする結果になる可能性があります。 

このようなことから、デューデリジェンス(DD)は買収する企業や事業の規模に合わせて、適切な範囲や費用で実施することが、効果的なM&Aのためには重要となります。 

優先順位をつけて行う

前述のとおり、デューデリジェンス(DD)は買収する企業や事業の規模や事業内容によって、重要視するべき項目が変わってきます。 

例えば、さまざまな申請や登録、特許権などの取得、保持が重要な業種であれば、法務デューデリジェンス(DD)などの項目が重要視されることになりますが、商品販売などの事業などの場合には、むしろ財務デューデリジェンス(DD)の重要性が高くなることも考えられます。 

また、大企業であれば、環境への取り組みなどのデューデリジェンス(DD)も重要な場合もありますが、中小企業であれば、大企業と比較して重要視されることはないでしょう。 

このように、買収する企業や事業の規模や業種によって、デューデリジェンス(DD)をする分野の優先順位をつけて、効率的に行うことが、デューデリジェンス(DD)を成功に導くポイントになります。 

リスクを把握して情報管理を徹底する

デューデリジェンス(DD)を行うためには、売り手企業や事業の社員や専門家などにも協力を得て行う必要があります。この時に、これらの関係者から同業他社や取引先などに情報が漏れないように管理を徹底することは、M&Aを行う際に重要となります。 

同業他社や取引先などに漏れた場合、他社からの切り崩しや不穏な噂が立つなどM&Aを成功させる妨げになるような事態が発生し、それらに対する対応に迫られて本来のM&Aが進まなくなったり、やむなく破談になったりする可能性もあります。 

このことから情報管理を徹底し、できるだけ短期間で効率的にデューデリジェンス(DD)を行うことが、デューデリジェンス(DD)を成功させるためには重要となります。 

デューデリジェンス(DD)が不十分だったため問題が発生した事例

では、最後にデューデリジェンス(DD)が不十分だったためにのちに問題が発生して、失敗したと言われている事例を3つご紹介します。これらの事例を見ると、デューデリジェンス(DD)が重要であることがより理解できると思います。 

  • パナソニックによる三洋電機買収子会社化 
  • 第一三共によるランバクシー・ラボラトリーズ買収 
  • キリンホールディングスによるスキンカリオールの買収 

パナソニックによる三洋電機買収子会社化

大手家電メーカーのパナソニックは、2009年に同じ家電メーカーの三洋電機を買収し子会社化しましたこの際に、買収に投じた金額は6,600億円と言われています。 

一方で買収当時、三洋電機の買収額のうち5,180億円がのれん代(営業権)として評価されていましたが、わずか2年後の決算でそののれん代の約半分の2,500億円をパナソニックは減損処理することになってしまいました。すなわち、三洋電機ののれん代(営業権)は2,500億円程度の評価が妥当であったということが買収後に判明したということになります 

これは、主に財務デューデリジェンスでの無形固定資産(のれん代)の評価が甘かったということの結果であると考えられます。 

第一三共によるランバクシー・ラボラトリーズ買収

製薬大手の第一三共は、2008年のインドの後発医薬会社のランバクシー・ラボラトリーズを5,000億円で買収しました。買収の目的は、新興国、後発医薬での事業の拡大を狙った戦略によるものでした。 

しかし、買収後にFDA(米国食品医薬品局)が、ランバクシー・ラボラトリーズのインド2工場の品質管理体制を指摘し、対米輸出禁止されてしまいました 

これによりランバクシー・ラボラトリーズ株が暴落し、株価が66%も下落することになってしまいました。第一三共は、その後の決算でこの株価暴落額を特別損失で計上せざるを得なくなりました 

最終的には、第一三共は、ランバクシー・ラボラトリーの対米輸出の状況等が改善しなかったことから、6年後に他のインド後発医薬会社に売却する結末となりました。 

このように第一三共のM&Aが失敗したのは、主に法務デューデリジェンスにおける重要な販路(アメリカ)の確保に必要な品質管理体制の確認が十分でなかったことが原因と考えられます。 

キリンホールディングスによるスキンカリオールの買収

ビールメーカー、清涼飲料水メーカーを傘下に持つキリンホールディングは、2011年にブラジルでビール事業及び清涼飲料事業を展開するスキンカリオール社を、3,000億円かけて買収しました。 

日本が人口減少して飲料市場が縮小する可能性がある中、世界第3位のビール市場を持つブラジルでの売り上げを狙った買収でした。 

しかし、2014年ごろからブラジルでの売数量が減り、2015年には、スキンカリオール社は約1,100億円もの減損損失を計上するような状態になってしまいました。 

結局、キリンホールディングスは2017年に同社をオランダのハイネケンに770億円で売却しました。買収価格と売却価格の差だけで見ると約2,000億円以上の損失です。 

これは、買収の際のビジネスデュージェリジェンスで、ブラジルのビール、清涼飲料水の販売状況や今後の見通しを見誤ったことが主な原因であると見られます。 

デューデリジェンス(DD)のまとめ

今回は、買い手企業や売り手企業や事業を買収するM&Aで非常に重要なプロセスであるデューデリジェンス(DD)について説明してきました。 

M&Aにおいて、売り手企業が提出する資料のみで判断をして、M&Aの実施の最終判断や買収価格を決めるということは、買い手企業には大きなリスクを伴います。 

買収する側の企業が主導して、売り手企業や事業を調査・分析するデューデリジェンス(DD)は、買収後に隠れたリスクが露呈するなどの不本意な結果を避け、M&Aを成功させる上でとても大切なステップです。 

買い手企業は、デューデリジェンス(DD)の重要性を十分認識して、弁護士などの専門家の協力を得ながら、適切なデューデリジェンス(DD)を行うことが、M&Aには欠かせないということが理解いただけたと思います。 

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