株式譲渡契約書の逐条解説 仲介契約の不存在の表明保証
弁護士法人M&A総合法律事務所のM&A契約書類のフォーマットはメガバンクや大手M&A会社においても、頻繁に使用されています。
ここに弁護士法人M&A総合法律事務所の株式譲渡契約書のフォーマットを掲載しています。
M&Aを検討中の経営者の皆様でしたらご自由にご利用いただいて問題ございません。
ただし、M&A案件は個別具体的であり、このまま使用すると事故が起きるものと思われ、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
また、このフォーマットは弁護士法人M&A総合法律事務所のフォーマットのうちもっとも簡潔化させたフォーマットですので、実際のM&A取引において、これより内容の薄いDRAFTが出てきた場合は、なにか重要な欠落があると考えてよいと思われますので、やはり、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
なお、詳細な解説につきましては、以下の弊所書籍「事業承継M&Aの実務」をご覧ください。
株式譲渡契約書の逐条解説 仲介契約の不存在の表明保証
■■■別紙1第3第21号■■■■■■■■■■
第21条は、業務委託契約の不存在に関する表明保証である。 業務委託契約とはここで業務委託契約とは、典型的には、すなわち、M&A仲介業者との仲介契約のことを言う。 事業承継M&Aにおいて、近時、多いのであるが、M&A仲介業者が、売主ではなく、対象会社と、M&A仲介契約を締結し、事業承継M&Aが実行されたのち、売主ではなく、対象会社から、成功報酬を得ることが多くなっている。 M&A仲介業者の仲介料とは、一般には、レーマン方式と呼ばれ、概要、下記のように、成功報酬の額が、M&A価格に応じて変動する料率表に基づいて計算される。 ここで、M&A価格とは、株式譲渡では株式譲渡価格、事業譲渡では事業譲渡価格、とされることが多いが、特に、対象会社が経営不振会社や債務超過会社などの場合、株式譲渡価格はとかく著しい低い価格である1円や100万円といった備忘価格となることもあるため、場合によっては、対象会社がM&Aされるということは、対象会社の事業を構成する総資産が譲渡されるのだということで、対象会社の総資産価格(正確には、株式価格と負債の合計額)がM&A価格とされ、これを基準に、成功報酬が計算されることとなる。 記
業務委託料の支払義務者についてしかし、事業承継M&Aの売主としては、会社ではなく個人である場合が多く、個人にとって、対象会社の譲渡価格の5.0%もの成功報酬は非常に高額であり、これの支払いを避けたいという意識が働くものと思われ、対象会社がM&A仲介業者に高額の成功報酬を支払わなければならないことを隠したうえで、又はそのことを特に知らせることなく、事業承継M&Aの実行(クロージング)に持ち込もうとするケースが多く、また、実際に実行(クロージング)しているケースも多く、買主としては、クロージング後に、M&A仲介業者から、対象会社に対して、高額の仲介料の請求が来て、驚き、トラブルに発展するケースが多く存在する。 すなわち、そのような売主側のM&A仲介業者の手数料というものは、本来、買主ではなく、売主が負担するべきものであるところ、対象会社がM&A仲介業者と仲介契約を締結し、対象会社が成功報酬を支払うこととされている場合は、事業承継M&Aの実行(クロージング)に伴い、対象会社が、売主から買主へとオーナーシップが移動することから、結果として、実質的に、買主が売主のM&A仲介業者の成功報酬を負担する事態が発生するのである。 なお、売主によっては、事業承継M&Aの実行(クロージング)前に、M&A仲介業者に成功報酬を支払う主体を対象会社から売主個人に変更する合意を、M&A仲介業者との間で行うケースも多く、また、買主が、対象会社をデューデリジェンス(DD)する過程で、M&A仲介業者との仲介契約の存在を認識し、売主に対して、M&A仲介業者に成功報酬を支払う主体を対象会社から売主個人に変更する合意をするよう要請し、それを前提として、事業承継M&Aの実行(クロージング)を行うケースも多い。 しかし、そのようなこともなく、対象会社が、対象会社の譲渡価格の5.0%もの成功報酬をM&A仲介業者に支払うということとなると、それは、対象会社の企業価値が5.0%毀損されるということであり、買主としては、予めそれを想定して株式譲渡価格を決定していたのならともかく、そうではないのであれば、買主の想定する株式譲渡価格の前提を崩すものである。 買主としては、もしそのような場合、クロージング後に、対象会社がM&A仲介業者に対して、売主の成功報酬を支払うこととなった場合、売主に対して、その損害の賠償又は補償を請求できるようにしておくことが必要となる。 したがって、事業承継M&Aにおいては、買主としては、売主に、対象会社における業務委託契約の不存在に関する表明保証をして頂く必要がある。 業務委託料の支払義務者を対象会社にする場合の問題点についてなお、事業承継M&Aにおいて、対象会社がM&A仲介業者と仲介契約を締結し、対象会社が成功報酬を支払うこととなることにより、売主としては、M&A仲介業者に対する成功報酬の支払いを免れることができて、一見、経済的利益を得た又は得をしたような感覚になるかもしれないが、いずれにしろ、前述のとおり、買主がこの事実を認識すれば、いずれ、株式譲渡価格が減額されるなり、M&A仲介業者に対する成功報酬は売主が負担することを求められるなど、この成功報酬は最終的には売主が負担することとなるのであるし、もし買主がこれを見逃し、買主が成功報酬の負担をすることとなったとしても、買主との間でトラブルになる可能性がある。 また、それよりも問題を深刻化するのは、筆者らに実際に相談のあったケースでは、売主としては、買主の反対にあうことなく、対象会社に、M&A仲介業者に対する成功報酬を負担させることができたのだが、対象会社とM&A仲介業者が仲介契約を締結することにより、売主とM&A仲介業者との間に契約関係がなかったため、売主からM&A仲介業者のコントロールが法的にはできない点、すなわち、事業承継M&Aの実行(クロージング)後、売主が、何らかの理由により、対象会社の責任を追及し、損害賠償請求をしようとしても、契約関係が存在しないということで、これに応じてもらえなかったり、情報開示や資料の提供すらも、契約関係が存在しないということで、これすら拒否される事態が生している。 |