株式譲渡の税金!

  • 2019年11月25日
  • 2024年10月8日
  • M&A

M&Aで株式譲渡を行った際、株式の売却に伴い税金が発生する場合があります。

また株式の売却及び譲受けの当事者が個人であるか、法人であるかでも税金の取扱いは大きく異なってきます。

M&Aで株式譲渡時、自分(自社)がどの立場でも、税金がどのようにかかってくるか、知っておくことはとても大事です。

今回は非上場株式の株式譲渡に的を絞り、譲渡時にかかる税金の種類やその計算方法を詳しく解説します。

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非上場株式の株式譲渡に関する税金とは?

上場株式とは、証券取引所を通じて誰でも参加して自由に売買できる株式のことをいい、その取引価格も需給関係を通じて日々形成される仕組みになっています。

一方非上場株式とは、証券取引所に上場しておらず、限られた人しか取引できない株式のことで、日本の中小企業の株式の多くはこの非上場株式となっています。

またその株式の保有者は大半が経営者やその親族です。

そのため、会社の経営が順調である限り、非上場株式が譲渡(売却)される機会は極めて少ないのですが、近年、中小企業の後継者不足問題から、M&Aを通じて会社の売却が行われる事例が増えており、それに係り非上場株式の株式譲渡が行われるケースが増加しています。

そこで同時に非上場株式の株式譲渡に係る税金問題もクローズアップされているのです。

非上場株式の株式譲渡益には譲渡所得税が掛かる

株式譲渡に関する税金には譲渡所得税があります。

またこれは上場株式、非上場株式に関係なく、株式を譲渡した際に得られる利益に課税され、2019年現在の譲渡所得税の税率は20.315%です。

また譲渡所得税は所得税、住民税、復興特別所得税から成っており、ほかの税と損益通算できない分離課税ですので、確定申告の際は取り扱いに十分な注意が必要です。

株式譲渡の税金の種類

非上場株式を譲渡した際、利益が発生すると、その利益は課税対象となります。

また税額を算定するときに出てくる税金の種類には以下のようなものがあります。

  • 所得税
  • 住民税
  • 復興特別所得税
  • 法人税
  • 寄付金扱い

以下、各税金の内容について解説します。

所得税

前述の通り、株式譲渡に係る税金には譲渡所得税が掛かりますが、その譲渡所得税を構成している税金のひとつが所得税です。

所得税は、個人が1年間で得た所得に対して掛かってくる税金のことで、通常は所得の増加に合わせて税率が上がる累進課税制度になっています。

しかし譲渡所得税の所得税は得た利益の額に関係なく一律15%で課税されます。

住民税

株式譲渡に係る税金の譲渡所得税を構成している項目のもう一つが住民税です。

住民税はその地域で生活している住民のために使う地方税で、通常10%掛かります。

また所得税同様、所得の増加で税率が上がる累進課税制度を取っています。

しかし譲渡所得税の住民税では、所得税同様、利益の額に関係なく税率は一律5%です。

復興特別所得税

譲渡所得税を構成している税金項目には、所得税、住民税以外にもう一つ、特別な税金があります。

それが復興特別所得税です。

復興特別所得税は2011年に発生した東日本大震災の復興目的に作られた特別所得税で、2013年(平成25年)から2037年(令和19年)までの24年間、徴収されます。

またその税率は所得税の2.1%と決められていることから、税率に直すと年0.315%になります。

したがって譲渡所得税全体では、税率は所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%の合計20.315%となるのです。

法人税

一方法人税は、会社などの法人が利益を上げたとき、課税される税金のことをいいます。

これは法人自体が非上場株式を保有していて、非上場株式を他社に譲渡(売却)した際、得た譲渡益にも適用され、2019年現在の税率は実質29%~42%の間で課税されています。

また法人税の税率に幅がある理由は、法人の規模やその時々の所得金額の差によるものです。

寄付金扱い

法人の株式譲渡に関し、寄付金という取扱いがあります。

これはたとえば法人が持つ株式を適正な価格より安く社外の個人に譲渡したとき、税務処理上、発生する損金のことを指します。

具体例で説明すると、法人が持つ株式の最初の取得額が10万円、個人に売却した時の適正価格が150万円なら、法人の譲渡益は140万円となります。

しかしこの株式を社外の個人に適正価格より安い100万円で売却すると、譲渡益は90万円ですが、安く売却しているので、差額50万円(150万円-100万円)は法人の損金として計上できるのです。

これを法人の寄付金扱いと言います。

この取扱いは以後の株式譲渡税の事例で何度も出てきますのでよく覚えておいて下さい。

非上場株式の譲渡所得の計算方法

ここでは非上場株式の譲渡所得の計算方法について解説します。

株式の譲渡所得の出し方については、上場株式、非上場株式関係なく、同じ計算式で出すことができます。

  • 譲渡所得=譲渡価格-必要経費(取得費用+委託手数料)

ここで取得費用とは、その株式を最初に取得したときの費用のことです。

もし非上場株式の最初の取得者がその会社オーナーの場合、株式のほぼ100%が経営者個人の所有と想定でき、取得費用は払込み済みの資本金の額そのものになります。

また個人の場合、最初の取得から長い年月が経っていて、当初の取得費用が分からなくても、譲渡額(売却額)の5%を取得費とできる概算取得費が認められています。

ちなみに非上場株式の最初の取得者が法人だった場合、この概算取得費のルールは適用されませんので注意が必要です。

一方委託手数料とは、M&A等で株式譲渡を行ったとき、仲介会社に利用者が支払いした手数料のことを言います。

確定申告及び税金の納付時期

税金となると、その種類に拘わらず、いつ確定申告が必要で、またどんな形で納税するかも読者の関心ごとのひとつではないでしょうか?

この章では譲渡所得税に係る税金の申告時期、及びその納付方法、さらに法人税の申告時期など解説します。

譲渡所得税に係る税金として所得税、および復興特別所得税がありますが、こちらは翌年の3月15日までに税務署に確定申告を行い納税します。

また確定申告時に所得税は納税しますが、住民税は後から納付するシステムになっているので知っておいて下さい。

なぜなら住民税は地方税であり、確定申告で当該年度の所得確定の通知を受けてから地方自治体が住民税額を計算するので、どうしても次期がずれてしまうからです。

具体的には、確定申告を行った年の4月~5月頃(遅いと6月頃)、自宅に住民税の納付書が送られてきます。

住民税の納付方法も納付書を見れば分かりますが、一括か、4回に分けて支払うシステムになっています。

一方法人税に関しては、その法人の決算期日から2ヶ月以内の納税が基本ルールとなっています。

個人も同じですが、法人でも納付期限を過ぎるとペナルティとして延滞税が課されるので注意が必要です。

また平成26年度10月から法人税にあらたに地方法人税が創設されたので、現在は法人税と言えば、かつての法人税に地方法人税を合わせたものを「法人税」と表記しています。

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非上場株式の株式譲渡、事例別税金の種類

非上場株式の株式譲渡と言っても取引の当事者によって色々な組み合わせがあります。

一般的な組み合わせとして考えられるのは以下の4種類です。

  • 譲渡人が個人、譲受人が個人の場合
  • 譲渡人が個人、譲受人が法人の場合
  • 譲渡人が法人、譲受人が個人の場合
  • 譲渡人が法人、譲受人が法人の場合

しかし譲渡取引をM&Aに係る非上場株式の株式譲渡に絞ると、株式譲渡の譲受人は法人である場合がほとんどなので、この記事では以下の2つのケースに限定し、その税金の種類及び処理方法について解説します。

  • 株式譲渡の譲渡人が個人、譲受人が法人の場合
  • 株式譲渡の譲渡人が法人、譲受人が法人の場合

株式譲渡の譲渡人が個人、譲受人が法人の場合

M&Aに係る株式譲渡の譲渡人が個人、譲受人が法人のとき、譲渡価額が時価(適正価格)か、時価よりも安いか無償か、あるいは時価より高く売るかなどで、色々な取引例が考えられます。

またそれに伴い税金の種類や適応税率も変わってきます。

そこでこの章ではそれを4つに分けて解説します。

  • 時価(適正価格)で株式譲渡したとき
  • 時価の1/2未満で株式譲渡したとき
  • 無償で株式譲渡したとき
  • 時価より高く株式譲渡したとき
  • 時価(適正価格)で株式譲渡したとき

個人が法人へ時価(適正価格)で株式譲渡して利益が出たとき、課税関係は割とシンプルです。

すなわち売り手である個人には譲渡所得税が課せられ、買い手である法人には課税されません。

時価の1/2未満で株式譲渡したとき

個人が法人へ時価の1/2未満で株式譲渡したとき、売り手の個人には譲渡所得税が掛かります。

一方買い手である法人には、時価と譲渡価格の差額が受贈益と見なされ、法人税が課されることになります。

無償で株式譲渡したとき

前項同様に、個人が法人へ株式を無償譲渡としたときには、売り手である個人には譲渡所得税が課せられます。

このとき、売り手の個人は無償譲渡しているので譲渡益はありませんが、課税逃れを防ぐため、税務上は時価で譲渡したと見なされ、「みなし」譲渡所得税が掛かります。

「みなし」譲渡所得税の税率は譲渡所得税と同じ税率の20.315%です。

一方買い手である法人は、株式を無償で手に入れているので、時価との差額が受贈益と見なされ、法人税が課されます。

時価より高く株式譲渡したとき

個人が法人へ時価より高く株式譲渡したときは税金に対する処理がこれまでと比べるとやや複雑です。

またこの処理は株式譲渡した個人が売り手の法人と直接的な雇用関係があるかないかでも変わってきます。

まず売り手の個人ですが、時価より高く株式譲渡しているので、時価までで利益を上げた分には譲渡所得税20.315%が掛かります。

また時価を超えた売却益には、その差額に対して給与所得(雇用関係があった場合)、または一時所得(雇用関係がなかった場合)として税金が掛かります。(これらの所得は他の所得と損益通算されて計算されます)

一方買い手である法人は、株式を時価以上で買っているので、超えた分についての取扱いは賞与(雇用関係があった場合)、あるいは寄付金(雇用関係がなかった場合)として処理することができます。

また法人では寄付金は損金処理が可能なので、利益を節税できる効果も見込めます。

株式譲渡の譲渡人が法人、譲受人が法人の場合

M&Aに係る株式譲渡の譲渡人が法人、また譲受人も法人の場合も、上記の例も同じように、譲渡価額の違いによって4つの取引事例が考えられます。

以下、詳しく解説します。

時価(適正価格)で株式譲渡したとき

株式譲渡の売り手、買い手とも法人で、時価(適正価格)で株式譲渡したとき、その課税関係はシンプルです。

売り手の法人にはその譲渡益に対して法人税が課税され、一方買い手の法人には一切課税されません。

時価の1/2未満で株式譲渡したとき

株式譲渡の売り手、買い手とも法人で、時価の1/2未満で株式譲渡したとき、売り手の法人には、時価で株式譲渡したと見なされて、その株式譲渡益に法人税が掛かります。

さらに売り手の法人は時価より低く株式譲渡しているので、寄付金処理が認められ、時価からの損失分を損金算入できます。

一方買い手である法人には、時価と譲渡価額の差が受贈益と見なされて同じく法人税が課されます。

無償で株式譲渡したとき

株式譲渡の売り手、買い手とも法人で、無償で株式譲渡が行われると、その取引は時価で行われた株式譲渡として取り扱われるので、時価の1/2未満で株式譲渡したときと同様、取引した両社に対して法人税が課税されます。

また売り手の法人は、株式を無償譲渡しているので寄付金扱いが認められ、時価との差額を損失分として損金算入が可能です。

時価より高く株式譲渡したとき

最後に株式譲渡の売り手、買い手とも法人で、時価より高く株式譲渡した場合の課税関係についてです。

この取引では、売り手の法人に対しては、時価の部分まではその譲渡益に対して法人税が、また時価より高く株式譲渡して得た差額分に対しては、同じく受贈益とみなされて法人税が課せられることになります。

一方買い手である法人に対しては、時価より高く買っていることからその差額が寄付金と見なされ、損金算入が可能になります。

まとめ

M&Aに伴う非上場株式の株式譲渡に係る税金について、課税される税金の種類やその計算方法、取引事例など、詳しく解説してきました。

税金のような複雑でテクニカルな話題については、本来、経営で忙しい会社代表者や後継者が全て理解しておく必要もないと思います。

しかしM&Aのような会社の将来を左右する決定をするときには、たとえ経営者といえども税金の問題を避けて通るわけにはいきません。

M&Aで公認会計士や税理士から税金の説明を受けて、最終きちんと意思決定するためにも、最低限、この分野での税金に係る知識は身につけておくべきだと考えています。

※ なお、株式譲渡の課税関係につきましては、当事務所は、法律事務所であり税理士事務所ではないこともあり、最終的には、税理士先生にご確認を頂けましたら幸いです。

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