これからの日本語学校経営にM&Aが必要な理由
日本語学校を修了して、日本の大学を卒業した外国人留学生を「優秀な人材」確保を目的として政府は、就職条件を緩和する方針を実施しています。
しかし、この方針を享受できる外国人留学生は一握りと言われています。
なぜなら日本語学校で学んでいく時点で、「失踪」してしまう留学生が増加しているからです。
大学卒業までもたないということです。
この状況で、今後の日本語学校経営に不安感をもつ経営者は多いのではないでしょうか。
今回は、日本語学校の経営にスポットをあてて、M&Aの必要性をお話していきます。
日本語学校のバブル期は終わったのか?
日本語学校業界が今、バブルに沸いていると言われています。日本語学校に入学を希望する外国人の若者たちがアジア圏をメインに増加しているのです。具体的にどのような状態なのか?をご説明していきます。
定員が4倍に増加?!
昨年度において、外国人留学生の人数は、90,079人に上りました。2012年には24,092人だったころから実に3.7倍に増えています。
それに伴い、日本語学校の数も2007年には全国で308校だったのに、2018年には711校と2倍以上に増加しています。
これは国内の大学の数と匹敵していますし、この増加傾向は大学、専門学校よりも高いといえます。
その上、日本語学校は、大学や専門学校よりも開設が簡単なのです。学校法人でなくても株式会社が母体でも日本語学校は設立できます。人材派遣会社が母体の日本語学校も実際に存在します。
将来の人材を海外の若者の中から育てていこうというわけです。卒業後は人材難に悩んでいる業界へ仕事を斡旋していくというシステムです。
ある日本語学校では、2010年には324人だった学生が、6年後には1380人までに増加して、4倍に膨れ上がっているのです。ベトナムなどからの留学生が増えている結果だと考えられます。
学生が増えるということは、入学金、授業料の納付も増えるわけですから、学校にとっての売り上げが増えるということです。6年間で売り上げが4倍になる企業というのはなかなか存在しませんよね。
学費未納問題と対策
学生数が増えて、入学金、授業料も自然と増えてくるはずなのですが、入学金は何とか支払えて、前期の授業を支払ったけど、どうしても後期の授業料が支払えず途中で退学してしまう学生、すなわち失踪してしまう留学生が後を絶たない状況になっているのです。留学生数が増えたとともに、この「失踪学生」の数も増えてきています。
また「失踪学生」の割合が在学している学生の5%を超えてしまうと、その日本語学校は非適正校とみなされてしまいます。適正校と非適正校では、翌年の入学希望者に対しても大きな影響を与えることになり、入学者が激減してしまいます。日本語学校としてのビジネスが成り立たなくなってしまうというのです。
この失踪学生をなくす対策が今の日本語学校では、あらゆる対策を練っているというのが現状です。
パスポートや在留カードを一時預かるなどする日本語学校も存在するようですが、それは違法ですし、人権侵害にもつながってしまいます。
とにかく、入学選考の時に、本当に卒業まで支払う能力があるのか、また学業に対しての積極性、すなわち勉強がしたくて留学するのか、それとも日本で働くためだけに入学を希望しているのかを見極めることが重要になってきているのです。入学金だけが入れば後はもう知らない、などという無責任な受け入れは絶対にしてはいけないということです。
外国人労働者がこれからぶつかる問題
日本語学校を卒業してから、外国人労働者となったときにも、まだまだ安心できません。
この項目では、日本語学校を卒業した後の問題についてもお話しておきます。
今後の日本語学校経営についても大いに関係のある内容かと思います。
外国人実習制度はブラック企業に派遣されること?!
法務省の調査によれば、失踪した留学生は2012年には2005人だったのに対して、2017年には7089人にのぼり大幅に増加しました。この原因は賃金の低さによるものです。
実習生に支払われる賃金は、日本人と同等以上と定められています。ただし、同等というのは「最低賃金」に同等ということです。そこから社宅費を差し引かれます。多くの実習生の手取りは10万円以下となり、借金して学費を作っていますから、そこから返済する必要があります。失踪するのも無理はありません。
国会での審議期間中には、野党と歩調を合わせ、実習生に対する人権侵害を批判する報道が目立ちました。その多くが「ブラック企業が実習生を搾取している」という指摘でした。しかし、実習生の低賃金や失踪、人権侵害 といった問題は、以前からずっとあった問題です。10年以上から問題があり、ずっと指摘されたのにも関わらず、ずっと実習制度は拡大してきて、失踪する留学生の数は増えるばかりです。
野党も鋭い質問をすることなく、マスコミも切り込んだ報道はしてきていないのです。
これほど批判されてきたのに、改善されることなく「実習生制度」は拡大してきたのでしょうか。
外国人労働者受け入れ緩和と政官財の利権
2017 年 11 月に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」( 技能実習法)が施行され、実習生の受け入れが拡大しています。最長3年だった実習生の就労期間は5年に延び、「介護」分野 での受け入れも可能になりました。新法が施工されたのですが、実際には、「技能実習の適正な実施」や 「実習生の保護」を 前面に押し出し、制度の枠を広げたに過ぎません。
また、 技能実習法では、 監督機関 として「 外国技能実習機構」がつくられました。この団体を設立に伴い、官僚の新たな天下り先が出来上がりました。天下り先が増えても、実習制度が適正化して外国人労働者が働きやすくなればいいのですが、相変わらず失踪件数は減っていません。
その証拠に、2-1の項目でも話しましたが、新法施行以降も実習生の失踪はさらに増えています。改正入管法の国会審議でも問題になりました。新制度がいくら作られても失踪者が減らないのは、制度そのものの設計が良くないのです。とにかく外国人労働者の労働にみあっていない低賃金にあります。低賃金になる原因は、母国で留学ブローカーにまず手数料を支払い、また日本でも仲介を行う監理団体があります。
一応農協、商工会などの公的な団体ということになっていて、事業協同組合という組織が運営はしていますが、中身は民間の派遣業と大差ないのです。留学性の母国での送り出し機関と日本での就職先企業と両方から監理料をもらっているのです。
日本の受け入れ企業としてもかなり大きい出費となっています。この監理料がなければ外国人労働者の給与をもっと高くできるはずです。
日本語学校ができること
まず受け入れ体制を整えることに尽きると考えられます。
留学生を受入れ際に、入管当局に経費支払い弁済能力があるのかを証明する書類を提出必要があります。この書類のチェック機能が果たせているかが問題となっているのです。銀行残高証明書など本当に学費ローンをかえるのかどうかをしっかり確認する必要があります。
それと入学してから、スピーチコンテストや独自の検定試験を作るなど、早く日本語を習得させるシステムを作ることも大切です。
これらのことを実現しようと思えば、日本語教師など人員を増やす必要があります。また、書類のチェック機能を増やそうと思えば、事務スタッフも必要です。かなりの人件費もかかってくるわけです。
資金が潤沢にある大企業に経営を譲るという選択も必要なのではないでしょうか。
日本語学校経営者にこそM&Aが必要な理由
国、企業との連携など今後様々な問題が出てくる日本語学校経営ですが、このまま経営継続が難しいと考えてしまって、閉校してしまうオーナーも少なからずいらっしゃいます。閉校してしまったら、在学生、取引先にも多大な影響を与えてしまうのは想像がつきますよね。日本語学校で閉校とは企業では「廃業」ということになります。この項目では廃業を選ばずに、M&Aというビジネススキームを選ぶとどうなるのか?をご説明します。
M&Aとは?どんなメリットがあるの?
英語表記では、Mergers(合併)and Acquisitions(買収)となります。
合併と買収という意味で、報道などでも、大手企業が他業種の企業を買収して傘下に入れたということを聞かれたこともあるのではないでしょうか。
1-1の項目でも、人材派遣業が日本語学校を経営しているとお話しました。
ですから、今、人材派遣業、人材紹介業などで日本語学校を買収する動きが出てきているのです。
日本語学校を、学生、設備、教師などをすべて買い取った方が、初期投資を抑えて経営を始めることができます。また、人材派遣会社というのは、人材を確保しして、企業を派遣することを業務としていますから、人手不足の業界へある程度日本語ができるようになってから、派遣することも可能となってきます。
留学性の立場から考えても、人材派遣会社が母体の日本語学校ですと、学びが終わった後すぐに職業を紹介してもらえますから入学するメリットは大きいといえます。
日本語学校との相性の良い事業を行っている企業から、日本語学校M&Aは注目されているのです。
今は、まさに日本語学校は売り手市場となってきています。
経営者が単独でM&Aを行うことはできるのか?
経営している日本語学校について、売却を検討していることを、なるべく外部に知られたくないという気持ちは出てくると思います。実際に学生を抱えているのですから、学生やまたは教師たちに不安な気持ちを与えてしまう心配もあります。M&Aを検討すること自体を、オーナー単独で行うのは全く問題がないのですが、M&Aを実際に行っていく場合は、オーナー単独でも不可能ではありません。
しかしデューデリジェンス(DD)など、買収に関する監査が行われる際には、口頭だけでなく書類を提出する必要がでてきます。その内容も財務、労務、学生データ、各種申請内容など多岐にわたります。経理スタッフなどとの連携も必要ですが、やはりM&Aの経験がある外部のエージェントに依頼することをお勧めいたします。
日本語学校M&Aに経験と実績にあるエージェントですと、複雑なデューデリジェンス(DD)なども強力にサポートしてくれます。普段の業務に支障なくM&Aを完了することができるのです。
M&Aアドバイザーの選び方が知りたい
日本語学校の経営は、国や企業との連携が必要というお話をさせていただいています。
国と連携するということは、煩雑な申請業務がありますし、外国人を留学生として迎える手続き、また企業に卒業生を斡旋する職業紹介など、様々な業務があります。
日本語学校の売却を検討して、買い手企業が見つかってからもM&A完了までは交渉が続きますから、前述しましたM&Aエージェントには、交渉のプロであり、法律に強いというスキルが必要となってきます。
学校経営では特に法律の知識は必要です。交渉のプロであり、法律に強いとなると真っ先に浮かぶのが弁護士ではないでしょうか。
弁護士をM&Aのアドバイザーに選定するということは、M&Aの交渉中も、M&Aを完了した後も、何かトラブルがあった時の対応策をとってくれるだけでなく、先々でトラブルが起こらないよう未然に防ぐアドバイスを受けることができます。
様々なメリットがある弁護士をM&Aアドバイザーに選定することを是非ご検討ください。
まとめ
ここまで、日本語学校経営の現状とM&Aについてお話してきました。
今後の日本語学校の経営は厳しい局面を迎えることが予測されますが、これからの経営に今回ご紹介したM&Aというビジネススキームを是非活用していただきたいと思います。
また、M&A実績があり、法律の専門家でもある弁護士を力強いアドバイザーとして、迎えることも一度ご検討してみてください。
弁護士法人M&A総合法律事務所の強み
弁護士法人M&A総合法律事務所では、これまでに200件以上ものM&A案件・株式譲渡・合併・会社分割・株式交換・株式移転・事業譲渡・資本業務提携・グループ内組織再編案件を取り扱っており、M&Aに関する高い専門性と豊富な経験がございます。
また、M&A総合アドバイザーズには、M&A総合法律事務所・M&A総合会計事務所が併設されています。弁護士・公認会計士・税理士とも協働してM&Aに対応いたしますので、ここでも信頼と安心が違います。
介護業界のM&Aにおいても、非常に数多くの実績がございます。