会社分割のメリット・デメリットと手続の流れ!

  • 2019年10月16日
  • 2024年8月18日
  • M&A

会社分割とは「会社の有する権利義務の一部を新しい会社または設立済みの会社に分割(承継させる)会社法上の手続き」のことをいいます。M&Aの手法の1つです。

会社分割は会社法2条29号、30号に定められている手続きになります。会社分割には「新設分割」と「吸収分割」の2つの種類があり、会社の目的や事情、ケースに合わせて使い分けがなされているのです。

会社法2条

29 吸収分割 株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の会社に承継させることをいう。

30 新設分割 一又は二以上の株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させることをいう。

今回の記事では、会社分割の基本的な知識について弁護士が徹底解説します。

会社分割を活用する上で知っておきたい基礎知識を集約しました。ポイントをおさえて、基本事項から確認していきましょう。

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目次

会社分割とは?|会社分割の意義と新設分割及び吸収分割

会社分割の法的な定義をもう少しかみ砕いて説明しましょう。

たとえば、1本の苗木から花が咲いたとします。この1本の苗木と花が会社です。花の管理者(経営者や役員など)が、花の株分けを考えました。

花の一部(子株など)を分ける場合、2つのパターンが考えられるのではないでしょうか。1つは、すでに別の花が植えられている鉢に株分けする場合。もう1つは、新しい鉢に株分けする場合です。株分けする株を会社の一部の権利義務だと考えれば、会社分割がどのような手続きか分かりやすくなるのではないでしょうか。

会社分割は、いわば「花(会社)」を株分けする作業です。鉢の違いは会社分割の手法に違いになります。会社そのものではなく、会社の事業や権利義務などの「会社の一部」を新しい会社や設立済みの会社に移すのです。会社の一部を移すため「会社を分割する(会社分割)」と呼ばれています。

会社分割の種類①「新設分割」

新設分割とは、会社の事業や権利義務の一部を新しく設立する会社に分割する会社分割の手法になります。花のたとえ話で説明すると、新しい鉢を用意して株分けするのがこの「新設分割」です。

会社分割の種類②「吸収分割」

吸収分割は、設立済みの会社に対して、会社の事業や権利義務の一部を分割します。すでに設立された会社に事業や権利義務を移す、要は吸収させるかたちをとるため、会社分割の中でも「吸収分割」の名前で呼び分けられているのです。

花の株分けのたとえ話では、すでに花の苗が植えられている(既存の鉢)に株分けをするタイプになります。

会社分割の対価の受け取りの2つのパターン

会社分割には、吸収分割と新設分割のような手法の違いもありますが、対価による違うもあるのです。

対価による違いは「分社型分割」と「分割型分割」の2種類。この2種類は、誰が対価を受け取るかが異なります。

分社型分割は、分割会社自身が対価を収受するかたちです。分割会社自身が分割により事業を承継した会社の株式を対価として収受した場合、その事業を承継した会社が子会社になるのです。他方、分割型分割は、分割会社の株主たちが対価を受け取ることになります。分割会社の株主が分割により事業を承継した会社の株式を対価として収受した場合、その事業を承継した会社は兄弟会社になるのです。法形式的には、分割会社が事業を承継した会社の株式をいったん取得し、それを株主に配当するという形式をとります。なお、この場合の株式の配当について、財源規制は適用されませんので、とにかく、兄弟会社にすることができます。

会社分割には新設分割と吸収分割の2種類がありますが、2種類にさらに対価の受け取り方の違いを加えて、合計で4パターンになる計算です。

会社分割はどのようなときに使われるのか

会社分割は、社内の事業を切り分けて別会社化する場合や、他社との合弁会社の設立や、会社内の事業整理や再編のためによく使われます。

たとえば、ある企業が複数の事業を手がけていたとします。事業が多く事務が煩雑で、会社内が複雑化していました。複雑化の影響により事業の鈍足化や事務の遅滞なども見られたのです。そこで、経営陣は会社の分割を決断。事業を現企業から分割し、新設会社に一部事業を集約しました。

会社分割により事業の鈍足化や事務遅滞が改善されたのです。企業は残った事業に専心でき、さらに組織がスリム化してすっきりしました。このように、企業が複数の事業を手がけている場合は、組織の再編や事業の整理のために会社分割が使われます。

他には、合弁企業の設立のためにも会社分割が使われることがあるのです。合弁企業とは、複数の会社がある目的のために資金などを出し合って企業を設立することをいいます。複数の企業が特定事業を切り離し、集約するかたちで合弁企業を作る場合は、会社分割が積極的に活用されているのです。

会社分割と事業譲渡の違いとは

会社分割とよく混同される手続きに「事業譲渡」があります。会社分割を有効に使うためには、事業譲渡との比較検討が必須です。事業譲渡と会社分割は具体的にどこが違うのか、会社分割を選択する上でおさえておきたい違いについて解説します。

事業譲渡とは

事業譲渡とは、会社の事業を譲渡(売買)することです。会社の一部の事業や権利義務を移すという点で会社分割に似ていますが、会社分割と事業譲渡はまったく違った手続きになります。

事業譲渡は個々の資産債務や権利義務の譲渡ですので、個別の取引は取締役会決議で決めることができるのが原則ですが、一定規模以上の事業の譲渡となりますと株主総会の特別決議が必要とされています。会社分割は会社の組織再編行為ですので、当然、株主総会の特別決議が必要です。ただ、一定規模以下の簡易会社分割は、株主総会の特別決議は必要ではありません。両取引の本来の姿は、すでに大きな違いがあります。

また、事業譲渡は会社の事業をs切って個別に譲渡する個別承継ですが、会社分割は包括承継といって、移転する事業に付随して関連する権利義務も一緒に移転するという特徴があるのです。ですので、分割会社の中に不良債権や潜在債務・偶発債務などがある場合、これを承継してしまう可能性は残るのです。この2つの違いをベースに、もう少し詳しく違いを見てみましょう。

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会社分割と事業譲渡の4つの違い

会社分割と事業譲渡には、手続きを使い分ける上で要点になる違いが4つあります。

1.会社分割と事業譲渡では「契約の移転」が異なる

2.会社分割と事業譲渡では「雇用関係の移転」が異なる

3.会社分割と事業譲渡では「許認可の移転」が異なる

4.会社分割と事業譲渡では「税金の課税」が異なる

会社分割と事業譲渡では「契約の移転」が異なる

会社分割と事業譲渡は「契約の移転」の面で違いがあります。

事業譲渡では、債権などの契約は個別に移転しなければいけません。なぜなら、事業ではなく個別の権利義務を切り離してバラバラに譲渡する取引だからです。事業ではなく個別の権利義務を渡している関係で、その事業に付随する権利義務などがすべて自動的に付いて行くわけではありません。債権など個別の権利義務は、個別に債権譲渡などの手続きを使い、承継会社に譲渡することになります。

会社分割は、債権などの個別の権利義務を契約もまとめて、(包括的に)承継会社に移転します。

この点が会社分割と事業譲渡の大きな違いです。

会社分割と事業譲渡では「雇用関係の移転」が異なる

会社分割はまとめて移転(包括承継)なので、従業員との雇用契約なども移転対象になります。事前に従業員と話し合いをしたり、通知をしたりする必要はありますが、従業員の異議などがない限り、基本的に「全て移転する」のが会社分割です。

事業譲渡は事業ではなく個別の権利義務を切り離して譲渡しているので、従業員の雇用契約を移転するためには従業員から個別に同意を取得しなければいけません。

会社分割と事業譲渡では「許認可の移転」が異なる

事業の中には許認可が必要なものがあります。旅館業や貸金業、介護福祉事業や建設業などが代表的な許認可の必要な事業です。

会社分割の場合は、移転先に引き継ぎできる許認可と引き継ぎできない許認可があります。引き継ぎできる許認可は、飲食店営業やクリーニング業など。これらの許認可は各業法に基づき基本的に引き継ぎできますが、事後的な届出などは必要になります。

引き継ぎのために行政庁の許可が必要な許認可は、一般自動車の運送業や旅館業など。引き継ぎが認められず、取得し直さなければならない許認可は、宅地建物取引業や貸金業になります。会社分割では引き継ぎできる許認可と、引き継ぎできない許認可があるのです。

事業譲渡の場合は、事業ではなく個別の権利義務を引き継ぐのですから、当然、許認可は再取得が基本になります。

会社分割と事業譲渡では「税金の課税」が異なる

会社分割と事業譲渡では、適用される税金の課税関係が違ってきます。

事業譲渡は、事業ではなく個別の権利義務を売買するのですから、消費税が課税されます。ただ、事業という有機的一体の資産を移転するのですから、課税資産の合計額(譲渡額ではない)に対して消費税が課税されるのです。物の売買と似たような感覚になります。

会社分割には、個別の権利義務の移転ではなく、会社の組織再編なのですから、消費税の課税はありません。また、手続きの過程で発生する不動産取得税や登録免許税についても、個別の権利義務の移転ではないのだからということで、軽減措置を受けることができるのです。

会社分割のメリットとデメリットとは

会社分割にはメリットとデメリットがあります。

事業譲渡との違いを把握した上で、メリットとデメリットも知って、自社に会社分割という手続きが合っているかを判断することが重要です。

会社分割のメリット

会社分割には4つのメリットがあります。

会社の事業や組織をスリム化できる

会社分割をすることで、会社内の組織や事業をスリム化することが可能です。多くの事業を抱えていると、会社内の組織が複雑化し、事務も煩雑になります。組織が大きくなったことにより、仕事の効率化にも影響が出て、収益性が下がる可能性があるのです。

会社分割によって事業や組織を整理し、スリム化によって業務などを効率化できれば、収益性においてもプラスに働くと考えられます。

事業に必要な契約などをまとめて移転できる

事業譲渡では契約関係を個別に移転する必要がありました。そのため、債権譲渡などの手続きを用いる必要があります。会社分割なら、契約などをまとめて移転することが可能です。事業譲渡よりも手続き的な負担が軽減できるというメリットがあるのです。

現金を用意しなくてもできる

会社分割の大きなメリットは、現金を準備する必要がないところです。会社分割の対価を株式にすることができるので、会社分割を目的に大金を調達する必要がありません。株式を対価にすることで、より迅速かつ簡便に会社のスリム化や組織再編が可能なのです。

会社分割は税金の軽減措置がある

会社分割は事業譲渡のような消費税の課税がなく、登録免許税などの負担が軽減される措置も用意されています。会社再編や事業の移転を検討する場合に、税金負担が軽減される方法を選択することにはメリットがあるはずです。

会社分割のデメリット

会社分割の最大のデメリットは、予想外の債務を引き継ぐリスクがあることです。

すでに説明した通り、事業譲渡では契約関係は基本的に引き継がれませんが、会社分割では契約関係を包括的に引き継ぐことになります。契約関係を引き継いだ結果、簿外債務や偶発債務といった予想外のマイナスを引き継いでしまう可能性があるのです。

一つの手続きで多く資産負債・権利義務を引き継ぐことができるところは会社分割の魅力ですが、引き継ぐことによって思わぬマイナスに繋がってしまうことがあります。

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会社分割の手続きの流れ

会社分割の手続きは、新設分割と吸収分割のどちらを選択するかによって変わってきます。

手続きについて、2つの種類それぞれの手続きを見ていきましょう。

会社分割の手続き①吸収分割

会社分割の手続きに要する期間の目安は約2ヶ月です。最短で1ヶ月半くらいで会社分割ができます。

すでに設立している会社に分割するため、2つ以上の会社が吸収分割に関与します。

吸収分割はすでに花が植えられている鉢に株分けするため、「吸収する側(承継会社)」と「分割する側(分割会社)」の会社があることを明確にしておきましょう。

吸収分割手続きは次のような流れで行われます。

1.吸収分割の準備

2.吸収分割を承認するための取締役会

3.吸収分割契約の締結

4.事前備置書類の事前備置

5.官報公告と債権者異議催告個別通知

6.株主通知

7.株主総会の特別決議

8.労働契約承継法

9.効力発生と登記

会社分割の準備

会社分割の準備段階として、手続きのパートナーになる弁護士や弁護士事務所の選定を行います。また、会社内で会社分割に向けて分割する権利義務や事業などについて話し合ったり、社員などに通知したりするなどの準備が必要です。

会社分割はあくまでM&A類似の手法です。「会社分割しよう」と検討していても、他のM&A手法の方がより問題解決に即している可能性もあります。会社の状況を考えると、他の手法の方がより会社にシナジー効果をもたらしてくれる可能性もあるのです。

パートナーとなる弁護士が決まったら、会社分割が会社の問題解決や現状に即しているかを弁護士の経験や実績、法的な視点などで再考することも必要になります。そのため、会社分割のパートナー弁護士は、会社分割をはじめとしてM&Aの知識と経験、実績のある弁護士を選ぶことがポイントです。

会社分割を承認するための取締役会

会社分割の承認のために取締役会が必要になります。取締役会の話し合いの内容は取締役会議事録にまとめ、会社分割が承認された旨を忘れないように記録しておきましょう。株主総会の招集についても、この段階で決めておくことが重要です。

議事録作成の段階で弁護士にアドバイスを受けていれば、記載漏れなどの可能性が限りなく低くなります。取締役会で出た疑問点については、早めに弁護士に確認してクリアにしておきましょう。また、会社分割についての懸念(吸収分割後の組織作りなど)がある場合も、弁護士と連携の上で早めに対策しておくことが重要です。

会社分割契約の締結

会社分割の契約書を作成と締結です。会社分割の契約書には次のような内容を記載します。

1.分割会社と承継会社の商号や所在地

2.吸収分割の対象になる資産

3.吸収分割の対価など

4.会社分割の効力発生日

5.分割型分割の場合は一定の事項

会社分割の契約書は会社分割の基礎になる大切な契約書です。法的な要件を欠いていないか、弁護士にチェックを受けることをおすすめします。

ネット上では会社分割契約のテンプレートも配布されていますが、会社分割はそれぞれの会社の事情やニーズに合わせて行われるオーダーメイド的な契約です。契約書や計画は会社に合わせて作成するオンリーワンのものになります。ネット上のテンプレートをそのまま使ってしまうと、自社のニーズや契約内容とずれてしまう可能性があるのです。

テンプレートをそのまま使うことにはリスクもあるため、弁護士と連携し、自社に合わせた会社分割契約書をオーダーメイド作成しましょう。

また、親会社と子会社の間の吸収分割や、グループ内の会社間の吸収分割であれば不要なのですが、事業を外部の第三者に承継させる吸収分割であれば、第三者との取引であるという関係上、M&Aと全く同じとなりますので、M&Aの各種条件を定めた会社分割基本契約書または会社分割覚書の作成及び締結も必要になります。

事前備置書類の事前備置

会社分割の当事者は株主や債権者の保護のために、効力発生日から6ヶ月を経過するまで、会社分割に関する一定の事項を記載した書面を本店に備え置きする必要があります。これは、分割会社・承継会社のどちらも行う必要があるのです。株主や債権者を保護するため「契約内容や会社分割の中身を見えるようにしておく」という狙いになります。

一定の事項とは、以下のような事項のことです。決算書などの計算書類は、会社分割の条件が適切か否かを株主や債権者が判断する資料となります。

1.会社分割契約の内容

2.分割対価の相当性に関する事項

3.分割型分割である場合はそれにかかる一定の事項

4.計算書類等に関する事項

5.効力発生日以降の承継会社の債務履行の見込みについての事項

なお、事前備置書類は、会社分割の登記申請添付書類として必須ではありませんので、最悪、忘れたとしても何とかなるという話もあります。

官報公告と債権者異議催告個別通知

会社分割をすることを官報で公告し、かつ債権者に個別に通知する必要があります。会社の中には、公告方法として、官報ではなく、新聞公告や電子公告を定めている会社もあることでしょう。その場合でも、官報公告は必要になります。

この公告の中で、債権者に対して、一定期間内に会社分割をすることに対して異議を申し立てることができる旨を伝えることも必要です。債権者が不測の損害を被らないようにするための債権者保護手続きです。

官報への掲載は時間がかかるという特徴があるため、注意が必要です。即日申し込んで、即日掲載してもらうことは、まず不可能になります。会社分割のスケジュール調整をしながら、2~3週間ほどの期間を見て、早めに申し込みの準備をすることが必要です。申込前に官報側に掲載までに要する期間や手続きの混雑具合を確認しておきましょう。

官報公告の他には、債権者に対しての個別催告も必要になります。債権者への個別催告は、公告方法を新聞公告や電子公告と定めている場合であれば、官報公告も必要となりますが、個別公告は必要ではありません。公告方法を官報にしている場合は、債権者への個別催告を省略できません。

たとえば、新聞公告+官報の場合は、債権者はどちらかを見ている可能性が高くなります。しかし、官報での公告と定めていて官報公告だけだと、官報自体を一般の人が頻繁にチェックしている可能性が低いため、債権者の目に触れない可能性があるのです。官報での公告を定めている会社は「見ていない可能性があるため、債権者へ個別に教えてあげてください」という意図になります。

株主通知

株主に対する会社分割の通知は効力発生日の20日前までに必要となります。ただし、株主が1人しかいないなどの場合は、基本的に「会社分割を行う」という通知をするだけで差し支えありません。株主に対して会社分割をする旨の通知は、株主総会の招集通知などとセットで行うことも少なくありません。また、株主通知書は、会社分割の登記申請添付書類として必須ではありませんので、最悪、忘れたとしても何とかなるという話もあります。

株主総会の特別決議

会社分割の場合は、原則的に効力発生日前に株主総会の特別決議によって会社分割の承認を受けなければいけません。ただし、株主全員が書面や電子媒体で承認の意思を示した場合は、株主総会は書面決議を行うことができ省略可能です。

なお、株主総会を開催するためには、株主総会招集通知も行うことが必要です。株主総会招集通知は、公開会社は2週間前までに発送が必要であり、非公開会社は1週間前までに発想が必要であり、注意が必要になります。

一定の要件のもとで株主総会決議を省略できる「略式分割」「簡易分割」などの手法もあるため、弁護士に株主総会の可否などをチェックしてもらうといいでしょう。

労働契約承継法

従業員との間の労働契約ですが、契約なのですが、会社分割に伴い、一方的に包括的に承継会社に承継されるのかというとやや異なります。会社分割が、会社の組織再編行為であり、包括承継であるということとなると、労働契約も一方的に包括的に承継会社に承継されるはずなのですが、それだと、労働者の保護にかける場合があるということで、労働契約承継法という法律が制定されています。これによると、会社分割の効力発生日の13日前までに、会社は、労働者に対して、全体通知・個別通知・労働者異議通知などを行い、会社分割や承継会社での労働条件を説明した上でないと労働契約を一方的に包括的に承継会社に承継できません。また、一定の労働者には異議を出す権利があり、異議が出された場合は、その労働者は、承継会社に転籍されることを拒否し、分割会社に残ることができるのです。

効力発生と登記

吸収分割契約で定めた効力発生日に会社分割の効力が発生します。

また、効力発生日より2週間以内に登記の手続きが必要です。

登記申請は、分割会社と承継会社において、申請を同時に行います。登記に必要になるのは、会社分割契約書や債権者保護手続き関係書類、株主総会議事録などですが、会社分割が会社法の要件に則って行われたかを確認するための商業登記法上の各種書類(資本金の額の計上に関する証明書、異議を述べた債権者がいない旨の証明書、債権者異議催告個別通知書面及び発送先リスト、官報公告原本)も必要となります。登記の必要書類から法務局側が適正な会社分割手続きを踏んだのかチェックします。

官報公告を忘れたらどうにもなりません。会社分割手続きをやり直すしかありません。

会社分割においては、効力発生日を登記日付と勘違いしがちですが、効力発生日はあくまで吸収分割契約で定めた日付になります。契約書で定めた日付が効力発生日になるため、土日祝日などを効力発生日にすることも可能です。

なお、会社分割の事後備置書類の備置も必要です。効力発生日から6ヶ月間、会社の本店で備え置かなければいけません。

会社分割の法律上必要とされる手続きはこれらの手続ですが、実際は、会社分割をした場合、その後の会社の組織内の労働契約・就業規則などの見直しや会社内の組織体制の見直しなども行う必要があります。また、分割したおのおのの会社において資金が回るのか、ビジネスが回るのかの検証および手続きも必要です。法律上必要とされる手続のみならず、会社という事業体を運営するために必要なビジネス上の手続きも必要なのです。

会社分割手続きだけして会社内の統制が取れず、会社内部が分割状態になっては意味がありません。弁護士などに相談し、適宜、会社分割後の計画も立てるようにしましょう。

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会社分割の手続き②新設分割

新設分割の手続きは、基本的に吸収分割の手続きの流れとほぼ同じです。

1.新設分割の準備

2.新設分割計画を立てる

3.新設分割を承認するための取締役会

4.事前備置書類の事前備置

5.官報公告と債権者異議催告個別通知

6.株主通知

7.株主総会の特別決議

8.労働契約承継法

9.効力発生と登記

新設分割と吸収分割の違い

新設分割と吸収分割では「相手会社」が異なる

吸収分割はすでに花が植えられている鉢に株分けする手法です。対して新設分割は新しい鉢に株分けするという手法になります。吸収分割には既存の鉢、つまり相手会社が存在しますが、新設分割は会社設立を伴うため相手会社が基本的に存在しません。

相手会社が存在しないというのは、効力発生日まで、会社分割した後の事業の運営について準備をすることができないのです。会社が存在しないのですから。ですので、新設分割の場合は、会社分割をしてからしか、許認可の取得の手続きなどを行うことができず、事業の開始が遅れてしまう可能性があります。ですので、許認可の取得が必要な場合は、まずはペーパーカンパニーを設立し、その会社において許認可の取得の手続きなどを進めておいて、会社分割の効力発生日に、事業を承継したらすぐに事業を開始することができるように準備するということが行われます。

新設分割と吸収分割では「効力発生日」が異なる

吸収分割では契約で定めた日が効力発生日になり、後から登記する流れでした。新設分割の場合は新しく会社を設立するという関係上、効力発生日は登記申請の日になります。

登記により効力発生となるので、土日祝日などを効力発生日にすることはできません。法務局が閉まっているからです。吸収分割の効力発生日を土日祝日に定めることが可能だった点と比較してみてください。

「略式分割」と「簡易分割」

略式分割とは、基本的に、90%以上の親子会社関係の場合、子会社において、株主総会の特別決議を経なくてもよいという制度です。90%以上の親子会社関係の場合、子会社において株主総会を開いても、会社分割がスムーズに可決されるに決まっているからです。結果が分かり切っているため、子会社においては、株主総会を開催しなくて良いということになります。

簡易分割とは、基本的に、分割会社の5分の1未満の小規模な事業の会社分割については、株主総会の特別決議を経なくてもよいという制度です。5分の1未満の小規模な事業の会社分割の場合、会社分割を容易にするため、株主総会を不要としたものであり、、分割会社において、株主総会を開催しなくて良いということになります。

最後に

会社分割とは、会社の事業や権利義務の全部または一部をそのまま分割し承継させる手続きです。

M&Aの手法の1つとしてよく使われており、現金の準備がほぼ必要ないなどのメリットがあります。状況に合わせて効果的に使えば、さらにメリットが大きくなることでしょう。

会社分割の手続きには、深い法的な知識が必要になります。会社の規模によっても準備に必要な時間などが変わってくるのです。会社分割を計画している段階で弁護士にサポートしてもらい、手続き的なミスがないかなどを確認しながら進めていきましょう。

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