M&A契約書の表明保証条項(レプワラ)!

M&A最終契約書の表明保証条項について

M&A総合法律事務所では、M&Aにおいて取り扱う主な契約書である秘密保持の契約書・基本合意書・最終契約書・附随契約書などのM&Aの契約書について、10年来、300件以上の豊富な経験を有していますので、契約書の契約者様の権利を守り、リスクを排除するため、適切なM&Aの契約書の作成及びアドバイスを提供させて頂いております。

その中でも、このページでは、M&Aの契約書のうち最も重要な契約書である最終契約書(株式譲渡契約書・事業譲渡契約書等)の「表明保証条項」について説明いたします。

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M&A最終契約書の表明保証条項とは?

この①の表明保証条項とは、売主又は買主候補企業が相手方に対して、一定の事項が真実であり正確であることを表明し、表明したことを保証する条項のことである。

表明保証条項は、最終契約書において、特に重要な規定であるのみならず、M&Aに関するトラブルの多くは、最終契約書のこの表明保証条項を巡って生ずるトラブルであることからも、特に留意が必要である。

M&A最終契約書の多様な表明保証条項について

最終契約書における表明保証条項として重要なものとしては、①対象会社の組織及び構成に事業遂行上の問題の不存在に関する表明保証、②対象会社の財務諸表の正確性・網羅性に関する表明保証、③対象会社の資産の所有及び使用権限等の継続性に関する表明保証、④対象会社の契約の継続性に関する表明保証、⑤知的財産権の侵害の不存在に関する表明保証、⑥情報システムの有効性に関する表明保証、⑦役員の待遇に関する表明保証、⑧従業員の雇用や処遇に関する表明保証、⑨年金及び保険等の未払の不存在に関する表明保証、⑩製造物責任の不存在に関する表明保証、⑪保険の存在に関する表明保証、⑫環境問題の不存在に関する表明保証、⑬公租公課の潜在債務の不存在に関する表明保証、⑭法令の遵守に関する表明保証、⑮許認可届出等の有効性・継続性に関する表明保証、⑯訴訟又は紛争の不存在に関する表明保証、⑰財務状態等の悪化の不存在に関する表明保証、⑱M&A仲介業者との業務委託契約の不存在に関する表明保証、⑳情報開示の正確性・網羅性に関する表明保証などが存在する。

M&A最終契約書の表明保証条項の重要性について

最終契約書に表明保証条項が規定される理由は、すなわち、M&Aに際しては、買主候補企業は、対象会社について、デューデリジェンス(DD)を行うものの、そのデューデリジェンス(DD)の調査には限界があり、必ずしも全てのリスクが明らかになるわけではないため、表明保証条項を規定することにより、買主が、売主に対して、リスクを転換してヘッジし、M&A取引に入り易くするためである。

対象会社のオーナーである売主と、全くの第三者である買主候補会社との、対象会社の事業に関する情報をめぐる情報格差は大きく、買主候補会社が、対象会社を、1週間や2週間、デューデリジェンス(DD)を行ったとしても、完全に埋まることはない。また、そのような状況であることから、売主や対象会社が、対象会社の重要な情報を隠そうと思えば、容易に隠すことができ、売主としては、対象会社の重要な情報を隠したまま、対象会社を、買主候補会社に買収させてしまうことは、難しくはありません。

また、売主としても、買主候補会社による、対象会社に対するデューデリジェンス(DD)の際に、対象会社の不都合な情報を積極的に開示することによって、買主候補会社が、対象会社の事業上のリスクであるとして、対象会社のM&A価格(株式譲渡価格・事業譲渡価格など)を減額するなどという事態が生ずれば、大きな損害なのであり、売主としても、対象会社の重要情報の開示について、積極的になるインセンティブは特段存在しない。特に、事業承継M&Aの対象会社である中小企業・零細企業においては、売主や対象会社は、買主に対して、そのような対象会社のリスク情報を、積極的に開示しようとしないことも多い。

また、事業承継M&Aの対象会社である中小企業・零細企業においては、大企業などでは当然採用されている基準などが採用されていなかったり、オーナー経営者が、独自の事業運営方針を、当然の前提として考えていた場合なども多く、そのような場合、対象会社のリスク情報は積極的に開示されないこととなる。

そこで、買主候補会社としては、最終契約書において、しっかり表明保証条項を規定し、売主に表明保証させることにより、想定外のリスクが存在しないことを確認しつつ、表明保証違反があった場合に、売主に対して、その損害を補償請求できるように、売主に対して、リスクを転換してヘッジしておく必要がある。

M&A最終契約書の表明保証違反の効果について

表明保証に違反した場合、前提条件を充足しないため株式譲渡が実行されないこととなるし、損害賠償条項・補償条項に基づき、表明保証違反に基づく損害について、補償義務・損害賠償義務を負うこととなるし、表明保証違反は解除原因ともなり得る。

すなわち、「表明保証」に違反し、「表明保証」の規定されている事実が真実と異なる場合、前提条件が充足されずに株式譲渡実行義務が発生しないという効果や、損害賠償条項・補償条項に基づき、表明保証違反に基づく損害について、補償義務・損害賠償義務を負うという効果が発生し、「表明保証」の規定されている事実が真実と異なる場合、それが解除事由となり、相手方に株式譲渡契約の解除権が発生してしまうという効果が発生するのである。

このように、「表明保証」は、株式譲渡の多方面において影響を及ぼす重要な規定である。

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M&A最終契約書の表明保証の補償責任・損害賠償責任の無過失責任性

表明保証違反は、必ずしも、債務不履行ではなく、表明保証に違反したからと言って、当事者の帰責事由(当事者の故意過失)があるわけではなく、単に、売主による事実の表明に誤りがあったということに過ぎないのではあるが、相手方当事者はその事実の表明を信頼して取引に入ったのであり、そのような相手方当事者の保護のための規定である。すなわち、表明保証条項に違反する結果として、前提条件を充足せず株式譲渡が実行されない、補償義務・損害賠償義務を負うこととなる、解除原因になるなどの効果を持たせて、相手方当事者を保護することで、当事者間の情報の格差が、相手方当事者が取引に入るための障害になることを防ぎ、取引を促進するための条項である。

そうであるからこそ、この「表明保証」違反に基づく補償責任・損害賠償責任というのは、民商法の過失責任の原則に基づく責任ではなく、真実であると「表明保証」したにも係らず真実でなかった場合に責任を負わせることによって、売主と買主の間の損失分担を調整するための規定であるから、無過失の補償責任ともいうべきものである。

M&A最終契約書の表明保証条項のデューデリジェンス(DD)機能

また、最終契約書の表明保証条項には、デューデリジェンス(DD)機能と言って、売主が、表明保証条項を見ることにより、表明保証条項に違反した場合、後日、その損害を補償請求されることを恐れて、リスクが潜在している場合には、自主的に申告してくれるという付随的機能が存在する。

すなわち、売主としては、最終契約書の表明保証条項を見て、対象会社に表明保証違反となる事実が存在している場合、M&A後に、買主がその表明保証違反の事実を発見し、売主に対して、その損害を補償請求してくることを避けるために、売主は、最終契約の表明保証条項の交渉中に、その表明保証条違反の事実を、買主候補会社に伝え、その該当する表明保証条項の削除または、表明保証条項の除外事由の規定追加を求めてくるのである。また、売主によっては、特定の表明保証条項について、「重大な」と付記することにより、重大な表明保証違反のみが損害の補償請求が可能と規定したり、「知る限り」と付記することにより、売主の知っている表明保証違反のみを損害の補償請求が可能と規定したりして、表明保証違反となる範囲を、極力、限定しようとする行動に出ることとなる。売主は、対象会社の事業のリスクをもっても詳細に熟知しているわけですので、その行動を見ていると、売主が、表明保証条項の細かい点や通常拘らないような点に拘る場合や、非常に細かい文言に拘る場合など、売主が、どこに表明保証違反が存在していることを心配しているのかが分かり、対象会社の事業のリスクの所在が分かるのである。

したがって、買主候補会社としては、最終的には、表明保証条項の項目は減るということになったとしても、最終契約書に表明保証条項を極力多く入れることが好ましい。また、売主が、不自然な形で、表明保証条項にこだわるような場合は、売主に対して、特にその点について、インタビューを行うなど、状況を深掘りし、対象会社の問題点を追及する姿勢が必要でとなる。

他方、対象会社のオーナー経営者である売主としては、最終契約書の表明保証条項については、対応を誤ると、対象事業のリスクを、買主候補会社に見透かされてしまうこととなるものの、とはいえ、現実に、表明保証条項が提案されてしまっている以上、そのまま見過ごすこともできず、非常に悩ましい問題となる。

最終契約書において、表明保証条項の項目は、数十項目になることが通常であり、条項の記載文言について非常に慎重に対応する必要があり、専門家のサポートが必須と思われる。

M&A最終契約書の表明保証に関する認識又は認識可能性の影響

買主が、売主の表明保証違反の補償請求・損害賠償請求などを追及する場合に問題となるのが、表明保証をした事項に関する認識又は認識可能性の問題である。

すなわち、買主としては、事業承継M&Aにより損失を被った場合、売主が、対象会社に関して、何らかの表明保証をしており、その違反があった場合は、表明保証違反を根拠に、売主に対して、補償請求・損害賠償請求を行いたいところである。

買主としては、売主の行ったその表明保証を信用して、この事業承継M&Aに取り組んだのであるから当然である。

ただ、買主が表明保証を信用してこの事業承継M&Aに取り組んだというのであれば、買主がその表明保証違反について、認識又は認識可能性があった場合まで、買主の表明保証違反に基づく補償請求・損害賠償請求を認めるべきなのか否かということが問題となる。

この点、平成18年1月17日の東京地方裁判所判決平成16年(ワ)第8241号(アルコ事件)では、表明保証違反につき、売主がデューデリジェンスに資料を開示していたことに関連して、買主が悪意又は重過失がある場合、表明保証違反に基づく補償請求・損害賠償請求が認められない可能性があることを判示しつつ、売主が表明保証違反の事実を故意に秘匿したとして、売主の表明保証違反の責任を認めている。

すなわち、売主が表明保証をしたとしても、買主が表明保証違反の事実を認識していたり、認識可能性があったのに重大な過失により認識していなかった場合には、買主は、売主に対して、表明保証違反の補償請求・損害賠償請求を行うことができないのである。

また、売主は、デューデリジェンスに資料を開示していたとしても、表明保証違反の事実を故意に秘匿した場合は、表明保証違反の責任を免れないのである。

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M&A最終契約書のサンドバッキング条項について

上記のとおり、裁判例にて、買主が表明保証違反の事実を認識していた場合には、買主は、売主に対して、表明保証違反に関する認識の有無に係らず表明保証違反の補償責任・損害賠償責任を問うことができる旨を規定すれば、買主が表明保証違反の事実を認識していた場合でも、表明保証違反の補償請求・損害賠償請求を行うことができるのではないかとも思われる。

そのような規定が、いわゆるサンドバッギング条項(表明保証違反に関する認識があった場合にも表明保証違反の補償責任・損害賠償責任を認める規定)である。

なお、株式譲渡契約書において、このいわゆるサンドバッキング条項を規定する場合もあれば、いわゆるアンチ・サンドバッキング条項(表明保証違反に関する認識があった場合には表明保証違反の補償責任・損害賠償責任を認めない規定)を規定することもあれば、いずれも規定しない場合もある。いずれも規定しない場合は、上記の裁判例の立場がそのまま適用されることに相違ない。

事業承継M&Aにおいては、結果として、いずれも規定しない場合が多いように見受けられるものの、いわゆるサンドバッギング条項を規定する場合も多くみられる。

買主は、対象会社に対してデューデリジェンスを実施するため、実際は、特定の事項について、表明保証違反の状態にあることを認識するに至ることは多い。例えば、売主は対象会社における未払残業代の存在について否定し、表明保証を行うものの、買主は、対象会社をデューデリジェンスした結果、実際は、対象会社に未払残業代が存在することを発見するような場合である。

このような場合、買主は、そのような表明保証違反の状況があることを認識しつつ対象会社を買収するのであるから、そのような表明保証違反のリスクが顕在化して、例えば、従業員から対象会社に対して未払残業代の請求が行われたとしても、そのような場合は表明保証違反の責任追及を行うべきではないという考え方もある。上記の裁判例は、このようなスタンスであるものと思われる。

ただ、買主が労力とコストをかけてデューデリジェンスを実施し、売主の表明保証違反の事実を発見した時、売主に対する表明保証違反の責任追及を禁止することは経済合理的ではないと思われる。また、買主が売主の表明保証違反の事実を発見したとしても、その問題の詳細や影響の大きさなどまでは容易に判明するものではなく、表明保証違反の事実を認識していただけですべての売主に対する表明保証違反の責任追及を禁止することも経済的不合理とも思われる。

このような検討から、事業承継M&Aにおいては、現在においては、多くの場合で、いわゆるサンドバッキング条項を規定することが多くなっている。

ただ、他方、事業承継M&Aの交渉中に、表明保証違反を知っていたのなら、売主に対して補償請求・損害賠償請求をするのはおかしいのではないかという見解が売主から出されることもあり、最終的に、株式譲渡契約書にいわゆるサンドバッキング条項を盛り込まないこととなることも多い。

ただ、株式譲渡契約書にいわゆるサンドバッキング条項を盛り込む場合においても、このいわゆるサンドバッキング条項が、裁判所で有効と判断されるか否か現状明らかではない(サンドバッキング条項を規定したとしても、裁判になった場合、上記の裁判例の立場が貫かれ、表明保証違反に関する認識があった場合には、表明保証違反の補償責任・損害賠償責任が認められない可能性もある)ということもある。

したがって、近時においては、買主が、デューデリジェンスにおいて、表明保証違反の状態を発見した場合には、表明保証条項のみならず(表明保証条項ではなく)、特別補償条項を別途規定することにより、例えば、未払残業代などが発見され、そのリスクが顕在化した場合に、売主に対して、特別補償条項を発動することにより、その損失について補償請求を行えるように規定することが一般的となっている。

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