顧問弁護士と契約すべき場合と、契約しなくてよい場合 判断の分かれ目となる事情
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顧問弁護士を置く判断に関するメインのページです。本ページは、取引の件数や従業員の数など六つの事情から必要性を測る方法を、M&Aの契約の頻度とあわせてご説明します。契約書の条項は別のページをご参照ください。
▶ 顧問弁護士とは何をする弁護士か 契約の形、費用の考え方及び依頼するかどうかの判断
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顧問弁護士を置くべきかどうかを決めかねておられる、従業員が数名から数十名程度の会社の経営者の方からのご相談をいただきます。取引先が顧問弁護士を置いていると聞いた、金融機関や取引先から勧められた、社内で労務の問題が続いているといった事情が、ご相談のきっかけになることが多いところです。本記事は、顧問弁護士を置くべき会社と、置かなくてよい会社との分かれ目がどこにあるのかという1点に絞って整理したものです。
先に結論を申し上げます。顧問弁護士は、すべての会社に必要なものではありません。置くかどうかは、会社の規模や業績ではなく、法律上の判断を求められる場面が1年間に何回生じているかで決まります。回数が少なければ、必要が生じたときに個別に依頼するほうが合理的です。回数が多ければ、そのつど依頼するより顧問契約のほうが早く、結果として費用も抑えられます。
その回数を見積もるための手掛かりが、取引の件数、契約書の量、従業員の数、許認可の有無、紛争の頻度、そして経営者が交渉に費やしている時間という6つの事情です。以下では、この6つを1つずつ数える方法を申し上げたうえで、置かなくてよい会社の姿と、迷われた場合の中間の選び方についても正直に記します。
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顧問弁護士という同じ主題であっても、決めなければならない事柄は段階ごとに異なりますので、次のとおり頁を分けています。
- 置くかどうかを決める場面(要否の判断)……本記事
- 実際に何を任せられるのかを知りたい場面……企業法務における顧問弁護士の役割 法務担当者がいない会社が何を任せられるか
- 費用に見合うかどうかを検討する場面……顧問弁護士を置くと費用はかえって下がるのか 中小企業における費用対効果の考え方
顧問弁護士が必要かどうかは、6つの事情を数えることで判断できます
顧問弁護士を置くかどうかは、印象で決められがちな事柄です。しかし、数えることのできる事情に置き換えれば、社内で説明のつく判断になります。当事務所がご相談を伺う際に用いている手掛かりは、次の6つです。
| 事情 | 数える対象 | 置く方向に傾く状況 |
| 取引の件数 | 1か月の新規の取引先の数 | 相手方の書式で契約している |
| 契約書の量 | 1か月に確認する通数 | 確認が経営者本人の仕事になっている |
| 従業員の数 | 常時使用する労働者の数 | 採用と退職が続いている |
| 許認可 | 保有する許可及び登録の数 | 更新や変更の届出が定期的に生じる |
| 紛争の頻度 | 1年間に生じた争いの件数 | 同じ型の争いが繰り返している |
| 経営者の時間 | 交渉に費やす1か月の時間 | 本業の時間が削られている |
数えることのできるものだけで判断してください
「不安だから」という理由だけで置きますと、費用の割に使わない状態になりがちです。逆に「これまで何もなかったから」という理由だけで置かないでいますと、初めての事案が起きたときに対応が遅れます。数えた結果を根拠にしていただくのが、最も確かです。なお、株式会社と取締役との関係は委任に関する規定に従いますので(会社法第330条)、取締役は善良な管理者の注意をもって職務を行う義務を負い(民法第644条)、任務を怠ったときは会社に対する損害賠償の責任を負い得ます(会社法第423条第1項)。重要な財産の処分及び譲受け並びに多額の借財が取締役会の決議事項とされていること(会社法第362条第4項第1号、第2号)も、判断の手続を軽んじることができない理由です。
業種によって、6つの重みは異なります
建設業や運送業のように許認可と下請の取引が中心となる業種では、許認可と契約書の重みが大きくなります。小売業や飲食業のように従業員の入替わりが多い業種では、労務の重みが大きくなります。自社の業種でどの事情が重いのかを、先に見定めてください。
「今」ではなく「1年後」の姿で考えてください
顧問契約は、会社の事情を弁護士の側が理解して初めて機能します。理解には数か月を要しますので、いま必要かどうかではなく、1年後にどの程度の取引と人員になっているかで考えていただくほうが実際に即しています。
取引の件数と契約書の量 1か月に何通を確認しているか
最も分かりやすい手掛かりが、契約書の通数です。通数が増えるほど、法律上の判断を求められる回数も増えます。
契約書の確認が、誰の仕事になっているか
経営者本人が案文を読んでいる会社は、置く方向に傾きます。経営者の時間は会社の中で最も高い時間であり、そこに契約書の確認を積み上げるのは効率的ではありません。管理部門の担当者が読んでいる会社でも、判断の責任を引き受けられる人がいなければ、実質は同じです。
相手方の書式で契約している会社ほど、危険は蓄積します
相手方が用意した書式は、相手方に有利に作られているのが通常です。損害賠償の上限、解除の要件、支払の期日、契約の期間といった箇所に、自社に不利な定めが入っていることがあります。1通ずつは小さな差でも、数十通が積み上がれば会社の体質になります。
売掛金は、消滅時効の期間の内に動かす必要があります
債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅します(民法第166条第1項第1号)。例えば、支払期日を令和3年9月30日と定めた売掛金について、その日に請求できることを知っていた場合には、令和8年9月30日の経過により時効が完成し得ます。回収の可否は、気付いた時期で決まります。
従業員の数と、人事・労務の問題が起きる頻度
労務は、件数が読みやすい分野です。従業員を雇用している以上、採用、就業規則、労働時間、退職、解雇のいずれかの場面は必ず生じます。
常時10人以上の労働者を使用する事業場には、就業規則の作成義務があります
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならないとされています(労働基準法第89条)。この規模に達する前後は、規程の整備を求められる時期にあたります。整備の内容は、後に紛争が生じたときの結論を左右します。
解雇及び雇止めは、予告の期間から逆算します
使用者は、労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前に予告をしなければならず、予告をしないときは30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法第20条第1項)。令和8年10月31日をもって解雇するのであれば、遅くとも令和8年10月1日までに予告をする必要があります。手続の適否は、この逆算を誤らないところから始まります。
労働審判は、申立てから40日以内に第1回の期日が指定されます
労働審判官は、特別の事由がある場合を除き、申立てがされた日から40日以内の日に第1回の期日を指定しなければならないとされています(労働審判規則第13条)。原則として3回以内の期日で審理を終える手続ですので、第1回の期日までに主張と証拠を出し切る必要があります。令和8年9月1日に申立てがされた事件であれば、第1回の期日は令和8年10月11日までに指定されることになります。申立書が届いてから弁護士を探し始めますと、準備の期間はほとんど残りません。
許認可のある事業と、行政の調査への備え
許認可を要する事業を営んでおられるのであれば、置く方向に傾きます。許認可に関する事柄は、後から是正することが難しいためです。
許認可の維持に関する事項は、事後の是正が難しい
専任の技術者や管理者の要件、営業所の要件、変更の届出の期限といった事項は、要件を欠いた状態が生じてから対応しても間に合わないことがあります。役員の交代や本店の移転のように、会社にとっては日常の事柄が、許認可の側では届出の対象となる例が少なくありません。
事業を譲り渡し、又は譲り受ける場面での許認可
事業の一部を譲り渡す、あるいは他社の事業を譲り受けるという場面では、許認可が当然には移らない業種が多くあります。譲渡の実行日を先に決めてしまいますと、許認可の手続が間に合わないという事態が生じます。手続の順序を先に確かめてください。
行政からの報告の求めや立入りには、短い期限が付されます
行政庁からの報告の求めや資料の提出の求めには、期限が付されるのが通常です。期限までに社内の事実関係を整理し、回答の方針を決める必要があります。日ごろから相談できる弁護士がいるかどうかで、この局面の負担は大きく変わります。
紛争の頻度と、経営者が交渉に費やしている時間
最後の2つは、いずれも「既に起きていること」を数える事情です。数えていただくと、多くの場合、想定より多いという結果になります。
1年間に生じた争いを、大小を問わず書き出してください
訴訟に至ったものだけを数えるのでは足りません。取引先との支払をめぐるやり取り、従業員からの申出、近隣との苦情、インターネット上の書込みへの対応まで含めて数えてください。飲食業を営む会社では、従業員との労働時間をめぐるやり取りが毎年生じているという例が珍しくありません。
交渉に費やした時間を、経営者の時間の価値に置き換える
1件の交渉に要する時間は、電話、面談、社内の打合せ、資料の作成を合わせると、数十時間に及ぶことがあります。この時間は本業から差し引かれています。顧問料の高低を論じる前に、この時間の大きさを見積もっていただきたいところです。
交渉を続けている間、事業の判断は止まります
紛争が継続している間、経営者の関心はそこに固定されます。新しい取引の開始、設備の投資、人の採用といった判断が先送りになります。建設業を営む会社では、1件の紛争のために次の受注の検討が数か月止まったという例もあります。目に見えない損失は、通常この形で生じます。
顧問弁護士を置かなくてよい会社もあります
ここは正直に申し上げます。次のような会社では、顧問契約を結ぶ必要は乏しく、必要が生じたときに個別に依頼していただくほうが合理的です。
取引が定型で、契約書の種類が少ない会社
同じ書式の契約を反復しているだけであり、その書式を過去に弁護士が確認しているのであれば、日常的に相談すべき事柄は多くありません。書式を数年に一度見直す機会を設ければ足ります。
従業員を雇用していない会社、又は家族のみで営む会社
労務の分野の相談が生じませんので、6つの事情のうち1つが丸ごと落ちます。取引の件数も少ないのであれば、置かないという判断は十分に合理的です。
社内に法務の担当者がおり、必要に応じて個別に依頼できている会社
社内で一次的な判断ができており、外部に依頼すべき事案を選別できているのであれば、顧問契約の形にする実益は小さくなります。ただし、担当者が1名のみである場合には、その方が不在の期間の備えを別に考えておく必要があります。
置かないと決めた場合に、代わりに整えておくこと
置かないという判断をされるのであれば、緊急のときに連絡する先を決めておいてください。訴状、労働審判の申立書、行政からの通知が届いてから探し始めますと、期限までに間に合わないことがあります。連絡先を1つ決めておくだけで、この危険はかなり下がります。また、報酬を得る目的で法律事件に関する法律事務を取り扱うことは、弁護士又は弁護士法人でなければすることができません(弁護士法第72条)。交渉や請求の代理を弁護士以外の方に任せることはできませんので、その点も踏まえて備えを整えてください。
迷われた場合の中間の選び方と、切り替える目安
置くか置かないかの二択で考える必要はありません。中間の選び方があります。
まず個別の依頼から始めるという選び方
現に懸案となっている事案を1件だけ依頼し、進め方と相性を確かめてから顧問契約を検討するという順序です。会社の事情を弁護士の側が知る機会にもなりますので、後から顧問契約に移る場合にも無駄になりません。
相談に限った軽い契約から始める
当事務所の顧問業務は、随時の指導及び助言(口頭、電話、電子メール又は面談によるもの)であり、契約書の作成、具体的な紛争への対応及び訴訟への対応は含まれません。月額の費用には幅があり、簡易顧問の70,000円から特別顧問の1,000,000円まで5つのプランを設けています(いずれも消費税別途)。顧問契約を締結いただいている場合、弁護士の時間制報酬による請求はプランに応じて15パーセントから30パーセントの割引となります(特別顧問は固定です)。ただし、実費、事務手数料、スタッフの費用及び事前の預り金は割引の対象ではありません。相談は月額の中で行い、実際の案件が生じたときに別に依頼するという使い方ができます。弁護士費用の詳細は弁護士費用一覧をご覧ください。
置く方向に切り替える3つのきっかけ
第1に、従業員が10人に達したとき。第2に、初めて相手方の代理人弁護士から書面が届いたとき。第3に、事業の譲渡や株式の譲渡といった資本に関する話が出てきたときです。このいずれかに当たったのであれば、時期が来たとお考えください。
なぜ法律事務所は、顧問契約という形を勧めるのか
顧問契約を勧められると、費用を継続的に得るためではないかと感じられるかもしれません。理由は3つあります。
理由の1 早い段階で相談を受けたほうが、採ることのできる手段が多いため
契約書に署名する前であれば条項を直せますが、署名した後は相手方の同意が要ります。解雇を通告する前であれば手続を組み立てられますが、通告した後は撤回の可否という別の問題になります。相談の時期が結果を左右します。
理由の2 会社の事情を知らなければ、助言の精度が上がらないため
同じ質問でも、取引先との力関係、過去の経緯、社内の体制によって、適切な答えは変わります。単発の相談では、この背景を毎回一から説明していただくことになり、時間も費用も余分にかかります。
理由の3 事務所の側も、業務の量を見通すことができるため
顧問先の会社であれば、繁忙の見込みを立てて体制を組むことができます。急な依頼にも動きやすくなります。これは事務所の都合でもありますが、対応の速さという形で依頼者の利益にもつながります。
いま確認していただきたいこと
- 直近の1年間に社内で生じた法律に関する事柄を、大小を問わず書き出し、件数を数えてください。訴訟に至らなかったものも含めます。
- 1か月に確認している契約書の通数と、そのうち相手方の書式によるものの割合を数えてください。
- 常時使用している労働者の数を確認し、10人に達しているかどうかを確かめてください。達しているのであれば、就業規則の届出の有無も併せて確認します。
- 保有する許認可を一覧にし、次の更新の期限を暦に書き込んでください。
- 数えた結果、法律上の判断を求められる場面が年に数回にとどまるのであれば、置かないという判断も合理的です。迷われるようでしたら、数えた一覧をお手元に置いてお電話ください。
よくあるご質問
従業員が5名の会社ですが、顧問弁護士は早すぎるでしょうか
人数だけで決まる事柄ではありません。従業員が5名でも、相手方の書式による契約が毎月生じ、許認可を保有しているのであれば、置く方向に傾きます。逆に、従業員が20名でも取引が定型で紛争が生じていないのであれば、急ぐ必要はありません。数えた6つの事情でご判断ください。
顧問弁護士がいない状態で訴状が届いたら、どうすればよいですか
答弁書の提出期限と第1回の期日が指定されていますので、その日付を確かめたうえで、直ちに弁護士にご連絡ください。期限に間に合わせるための最小限の対応と、その後の方針の検討とを分けて進めます。顧問契約の有無にかかわらず、ご相談を承ります。
顧問契約を結んだのに相談することがなければ、無駄になりませんか
相談の回数が少ないままの状態が続くのであれば、契約の形を見直していただくのがよいと考えます。当事務所では、契約の類型を複数用意していますので、実際のご利用の状況に応じて軽い形に改めることも、逆に範囲を広げることもできます。使わないまま更新を重ねる必要はありません。
おわりに
顧問弁護士を置くかどうかは、経営者の不安の大きさではなく、会社に生じている事柄の数で決めていただきたいと考えています。数えてみて必要がないという結論になったのであれば、それはそれで正しい結論です。必要が生じたときに連絡できる先を1つ決めておいていただければ、当面は足ります。
数えてみたものの判断がつかない、あるいは既に懸案を抱えておられるということでしたら、その一覧をもとに、置くべきかどうかを一緒に検討いたします。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
顧問弁護士の要否に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間:8:00~21:00(土日祝含む)
出典
弁護士法第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
民法第166条第1項第1号(債権等の消滅時効)、第644条(受任者の注意義務)
会社法第330条(株式会社と役員等との関係)、第362条第4項第1号及び第2号(重要な財産の処分及び譲受け並びに多額の借財)、第423条第1項(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)
労働基準法第20条第1項(解雇の予告)、第89条(就業規則の作成及び届出の義務)
労働審判規則第13条(第1回労働審判期日の指定)
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