顧問弁護士とは何をする弁護士か 契約の形、費用の考え方及び依頼するかどうかの判断
この記事の位置付け
顧問弁護士に関するメインのページです。本ページは、顧問として関わる弁護士が実際に行う業務と契約の形、費用の考え方を、M&Aの交渉を見据えてご説明します。法務顧問との違いは別のページをご参照ください。
同じ主題を扱う関連ページ
従業員が10名から100名程度で、法務を専門に担当する社員はおらず、契約書の確認も、従業員との行き違いへの対応も、取引先からの請求への回答も、経営者又は総務の担当者が兼務しておられる会社の経営者の方に向けたページです。そのような会社では、法律に関わる判断が生じるたびに、知り合いの弁護士に電話をかけるか、書式集を調べるか、あるいは判断そのものを先送りにするかのいずれかになりがちです。顧問弁護士を置くべきかどうかというご相談は、この「そのつど探す」という状態が何年か続いた末に寄せられることが多くあります。
本ページは、顧問弁護士という仕組みの全体像を整理したものです。顧問弁護士とは何をする弁護士なのか、契約にはどのような形があるのか、費用はどのように考えればよいのか、そして自社が依頼すべき状況にあるのかどうかを、順に整理してまいります。個別の論点については、それぞれ専用のページを設けていますので、必要な箇所からご覧いただけます。
結論から申し上げます。顧問弁護士を置くかどうかは、毎月いくら支払うかという費用の問題ではなく、法律に関わる判断を誰が、いつ行うのかという体制の問題です。期限の定められた手続は、迷っておられる間に選択肢が減ってまいります。費用の比較は、その体制をどう組むかを決めた後の話になります。
この記事の位置付け
顧問弁護士という同じ主題であっても、知りたい事柄は場面ごとに異なりますので、次のとおり整理しています。
- 顧問弁護士という仕組みの全体像と、依頼するかどうかの判断……本記事
- 実際に何をどこまで任せられるのか、他の士業との分担……企業法務における顧問弁護士の役割 法務担当者がいない会社が何を任せられるか
- 「法務顧問」等の呼称の違いと、契約の類型の選び方……法務顧問と顧問弁護士は何が違うのか 契約の類型と、自社に合う形の選び方
- 置いた場合と置かない場合の費用の比較……顧問弁護士を置くと費用はかえって下がるのか 中小企業における費用対効果の考え方
顧問弁護士とは、どのような立場の弁護士なのか
「顧問弁護士」という言葉は日常的に用いられていますが、この語は法律上の資格や地位を表すものではありません。弁護士法にも会社法にも、顧問弁護士という定義規定は置かれていません。実際には、会社と弁護士との間で継続的な契約を結び、その契約に基づいて助言等を行っている弁護士を、慣習として顧問弁護士と呼んでいるにすぎません。
事件ごとの依頼と、継続的な契約との違い
弁護士への依頼には、大きく分けて2つの形があります。1つは、訴訟や交渉といった特定の案件が発生してから、その案件に限って依頼する形です。もう1つは、案件の有無にかかわらず、あらかじめ継続的な契約を結んでおき、必要が生じたときに随時相談する形です。後者が顧問弁護士契約です。
この違いは支払方法の問題ではありません。事件ごとの依頼では、弁護士は依頼を受けた時点ではじめて会社の事情を知ります。継続的な契約では、取引の内容、社内の体制、過去の経緯を既に把握した状態で相談を受けますので、前提の説明に要する時間と助言の精度が変わってまいります。
顧問契約は委任又は準委任の契約である
顧問弁護士契約は、法律事務の処理を委託する契約ですので、民法上は委任(民法第643条)又は準委任(民法第656条)に当たります。受任者である弁護士は、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負います(民法第644条)。報酬については、期間によって定めることができ(民法第648条第2項ただし書)、月額の顧問料はこの形によるものです。
また、委任契約は各当事者がいつでも解除することができるのが原則です(民法第651条第1項)。もっとも、相手方に不利な時期に解除した場合等には損害を賠償しなければならないことがあり(同条第2項)、実務上は契約書で解約の予告期間を定めるのが通常です。
秘密の保持と、利益相反の確認
弁護士は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負います(弁護士法第23条)。公表していない取引の内容や社内の紛争を弁護士に伝えることができるのは、この規律があるためです。他方で、弁護士には受任することができない事件があります(弁護士法第25条)。顧問先の相手方となる会社からの依頼は、原則として受けることができません。契約を結ぶ前に既存の依頼者との関係を確認する手続を行うのは、このためです。
社外取締役や監査役とは立場が異なる
弁護士が社外取締役や監査役に就任することもありますが、これは顧問弁護士とは別の立場です。役員と会社との関係は委任に関する規定に従い(会社法第330条)、役員は会社に対して任務懈怠責任を負います。顧問弁護士は外部から助言を行う立場であり、意思決定は会社が行います。どちらが適しているかは、経営に関与してほしい程度によって変わります。
顧問弁護士は、実際のところ何をしてくれるのか
顧問弁護士の業務は、大きく4つに分けると整理しやすくなります。ここでは全体像だけを示します。具体的な内容と、司法書士、行政書士、社会保険労務士、税理士との役割分担は、別のページに整理しています。
第1 日常の相談への回答
取引先から届いた通知書にどう答えるべきか、この広告の表現に問題はないか、退職を申し出た従業員に何をいつまでに交付すべきか、といった日々の判断です。件数としては最も多く、1件あたりの所要時間は短いものが中心です。都度見積りを取ってから依頼するという手順では、その手間のために相談自体が行われなくなりますので、継続的な契約が最も効いてくる領域です。
第2 契約書の作成、確認及び修正
自社の雛形の整備、相手方から提示された契約書の確認、修正案の作成です。取引の件数が多い会社ほど、雛形を整えておくことによる効果が大きくなります。
第3 紛争の予防と、生じた紛争への対応
債権の回収、従業員との紛争、取引先との解約に伴う争い等です。訴訟や調停といった手続に至る場合は、多くの顧問契約において別枠の案件として扱われます。
第4 会社組織の運営に関する助言
株主総会及び取締役会の運営、役員の選任及び退任、定款の変更、株式の取扱い等です。中小企業では手続が省略されたまま長年運営されている例が少なくなく、事業承継や譲渡の場面ではじめて問題が表面化します。
契約の形には、どのようなものがあるのか
顧問弁護士契約は、1つの決まった型があるわけではありません。実務上は、業務の範囲、対象とする分野、期間、優先度と担当という4つの軸の組合せで設計されます。呼称の違いや類型の選び方については別のページで詳しく扱いますので、ここでは軸だけを示します。
| 軸 | 狭い形 | 広い形 |
|---|---|---|
| 業務の範囲 | 口頭、電話又は電子メールによる助言に限る | 契約書の作成、交渉及び手続の代理まで含む |
| 対象とする分野 | 債権回収、渉外等の特定の分野に限る | 一般企業法務の全般 |
| 期間 | 譲渡等の案件が続いている期間に限る | 通年で継続する |
| 優先度と担当 | 通常の順序で対応する | 専門の弁護士が優先して取り組む |
当事務所が用意している類型
当事務所では、一般的な顧問契約として、簡易顧問、通常顧問1、通常顧問2、専門顧問及び特別顧問の5つのプランを設けています。これに加えて、目的を限った類型として事業承継顧問契約及び敵対的株主(株式買取業者)防衛顧問契約を、案件の期間に応じた類型としてM&A顧問契約を、包括的な類型としてプレミアム顧問契約を用意しています。
顧問業務とは何を指すのか
当事務所における顧問業務とは、依頼者の要請に基づき、随時、各種の指導及び助言(口頭、電話、電子メール又は面談によるもの)を提供する業務をいいます。契約書の作成、具体的な紛争への対応、訴訟への対応などは別途となります。この線引きは費用を比較する際の出発点になりますので、最初に確認していただく必要があります。なお、企業法務については、会社のことを全般的に考慮して検討するため、前提として顧問契約を締結していただいています。
案件の期間だけ置くという考え方
顧問弁護士は通年で置くものと考えられがちですが、事業の譲渡や株式の譲渡といった案件が進行している期間に限って置くという形もあります。当事務所のM&A顧問契約がこれに当たり、期間は6か月から承っています。随時、口頭、電話又は電子メールによる法的助言を行いますが、M&Aの契約書の作成及びデュー・ディリジェンスは含まれません。
費用はどのように考えればよいのか
顧問料の水準について、出所の明らかでない「相場」の数値が広く流布しています。当事務所としては、確認することのできない数値をこのページに掲げることはいたしません。他方、当事務所自身の顧問料は公表していますので、次に掲げます。
月額の顧問料は何の対価なのか
月額の顧問料は、期間によって定められた報酬です(民法第648条第2項ただし書)。相談が1件もなかった月にも顧問料が生じるのは、この形をとっているためです。逆に、相談が集中した月にも追加の請求は生じません。顧問料は、その期間を通じて優先的に相談に応じる体制の対価です。
当事務所の一般的な顧問契約の月額の費用
月額の費用は次のとおりです。いずれも消費税別途です。顧問契約を締結している場合、弁護士の時間制報酬による請求が、プランに応じた割合で割引となります。
| プラン | 月額の費用(消費税別途) | 弁護士の時間制報酬の割引及び特約 |
|---|---|---|
| 簡易顧問 | 70,000円 | 15パーセント割引 |
| 通常顧問1 | 150,000円 | 20パーセント割引 |
| 通常顧問2 | 300,000円 | 25パーセント割引 |
| 専門顧問 | 600,000円 | 30パーセント割引及び専門の弁護士が対応 |
| 特別顧問 | 1,000,000円 | 固定及び専門の弁護士が対応 |
実費、事務手数料、スタッフの費用及び事前の預り金は、割引の対象ではありません。また、これらはあらゆる企業法務の業務に取り組むことを前提とした一般的な顧問契約ですので、M&A、裁判、訴訟、紛争などの具体的な案件は別枠となります。
目的又は期間を限った顧問契約の月額の費用
上記のほか、目的又は期間を限った顧問契約を用意しています。いずれも消費税別途です。
| 契約の類型 | 月額の費用(消費税別途) | 期間その他 |
|---|---|---|
| M&A顧問契約(仲介の指名前) | 80,000円及び連動報酬1.0パーセント | 期間は6か月から。別途、案件の受任にあたり着手金をお願いすることがあります |
| M&A顧問契約(マッチング前) | 150,000円及び連動報酬1.0パーセント | 同上 |
| M&A顧問契約(マッチング後) | 300,000円及び連動報酬1.0パーセント | 同上 |
| 事業承継顧問契約 | 500,000円 | 期間は12か月を予定 |
| 敵対的株主(株式買取業者)防衛顧問契約 | 500,000円 | 期間は12か月を予定 |
| プレミアム顧問契約 | 1,000,000円 | 期間は12か月から |
弁護士費用の詳細は弁護士費用一覧をご覧ください。
プランの違いは何によって生じるのか
プランの違いは、対応する範囲の広さ、優先して取り組む程度、担当する弁護士、そして弁護士の時間制報酬の割引の割合によって生じます。専門顧問及び特別顧問では専門の弁護士が対応し、特別顧問については割引ではなく固定の取扱いとなります。相談の件数が多く、個別の案件も継続的に発生する会社では、月額の高いプランの方が、年間の総額では低くなることがあります。
顧問契約の範囲外となるもの
当事務所では、M&Aの相手方の検索及びマッチング、当事者間の取りまとめ、M&Aのプロセスの管理、M&Aの交渉業務は、顧問契約の範囲外としています。これらはM&Aアドバイザリー業務又はM&A仲介業務として、成功報酬によって対応いたします。M&A契約書の作成及びデュー・ディリジェンスの遂行も、顧問契約の範囲外です。
依頼するかどうかを、どのように判断するのか
顧問弁護士を置くべきかどうかの判断は、会社の規模だけでは決まりません。判断の分かれ目となる事情の詳細は別のページに整理していますが、次の6点を確認していただくと、おおよその見当がつきます。
取引の件数と、契約書の量
継続的な取引先が多く、毎月のように新しい契約書が発生する会社では、確認を要する文書が積み上がります。1通ずつ都度依頼する形は、費用よりも手間の面で続きません。
従業員の数と、人事の動き
採用及び退職が定期的に発生する会社では、就業規則、雇用契約書、退職に伴う手続の適否が問題となります。従業員数が増えるにつれて、法令上の義務も段階的に加わります。
許認可を要する事業かどうか
行政庁の監督を受ける事業では、届出の遅れや記載の不備がそのまま処分に直結することがあります。この分野は、事後に取り返すことが難しい領域です。
紛争の頻度と、経営者が交渉に費やしている時間
年に数回でも紛争が生じている会社では、経営者自身が相手方との交渉に相当の時間を費やしておられます。この時間は経費として計上されませんが、実質的には最も高額な費用です。
期限のある手続に直面したことがあるか
期限の定められた手続は、判断が遅れた時点で選択肢が消えます。例えば、株主総会の決議に手続上の瑕疵がある場合、その決議の取消しを求める訴えは、決議の日から3か月以内に提起しなければなりません(会社法第831条第1項)。令和8年6月26日に開催された定時株主総会の決議について争うのであれば、令和8年9月26日までに訴えを提起する必要があります。この期間を過ぎますと、原則としてその方法では争うことができなくなります。
なぜ取引先は、法務の体制がない会社に強く出てくるのか
ご相談をお受けしていますと、「相手方の言い分は明らかに理不尽なのに、なぜここまで強気なのか」とおっしゃる経営者の方が少なくありません。相手方には相手方の事情があり、理由は概ね次の3つです。
第1 回答までに時間がかかることを見越している
法務の担当者がいない会社は、通知書を受け取ってから回答するまでに時間を要します。相手方はそれを知ったうえで、短い回答期限を切ってまいります。期限までに整理が終わらなければ、こちらの言い分は一度も述べられないまま手続が進みます。
第2 交渉の窓口が経営者1人であることを知っている
窓口が経営者に集中している会社では、交渉が長引くほど本業に支障が生じます。相手方は、こちらが早期の決着を望むことを前提に条件を組み立ててまいります。
第3 自社の書式をそのまま通せると考えている
契約書の確認を行う体制がない会社に対しては、相手方は自社に有利な書式をそのまま提示します。修正の申入れがないまま締結された条項は、後に紛争が生じた際に、そのまま判断の基礎となります。
いま確認していただきたいこと
本日のうちにできることを挙げます。
第1に、直近1年間で外部の弁護士に相談した件数と、支払った金額を集計してください。件数が思ったより多い場合、既に実質的な顧問関係が生じています。
第2に、現在手元にある未処理の法律に関わる案件を書き出してください。回答期限の記載があるものには、その日付を書き添えてください。
第3に、直近3年間に締結した契約書のうち、弁護士の確認を経ていないものが何通あるかを数えてください。
第4に、以上を整理したうえで、当事務所にお電話ください。上記の集計があれば、どのプランが適しているかを、その場でお示しすることができます。
よくあるご質問
相談する内容が特にない月にも顧問料は生じますか
生じます。月額の顧問料は、期間によって定められた報酬であり(民法第648条第2項ただし書)、個々の相談に対する対価ではないためです。他方で、相談が集中した月にも追加の請求は生じません。1年を通した平均で考えていただくのが実態に合います。
顧問弁護士がいれば、訴訟になっても追加の費用はかかりませんか
かかります。顧問業務は随時の指導及び助言を提供する業務であり、契約書の作成、具体的な紛争への対応、訴訟への対応は別途となります。ただし、顧問契約を締結している場合、弁護士の時間制報酬による請求は、プランに応じて15パーセントから30パーセントの割合で割引となります(特別顧問は固定の取扱いです)。実費、事務手数料、スタッフの費用及び事前の預り金は割引の対象ではありません。
既に別の顧問弁護士がいますが、2人目を置くことはできますか
できます。特定の分野を補うために2人目を置く例は珍しくありません。ただし、既存の顧問弁護士との情報の切り分けと、利益相反の確認が必要になります。詳細は関連するページに整理しています。
顧問契約はいつでも解約できますか
委任契約は各当事者がいつでも解除することができるのが原則です(民法第651条第1項)。もっとも、実務上は契約書で期間と解約の予告期間を定めますので、その定めに従うことになります。当事務所の場合、M&A顧問契約は6か月から、プレミアム顧問契約は12か月から承っており、事業承継顧問契約及び敵対的株主(株式買取業者)防衛顧問契約は12か月を予定しています。
顧問弁護士を置けば、紛争で有利な結果が保証されますか
そのようなことはありません。訴訟の結果を保証することは、いかなる弁護士にもできません。顧問弁護士を置くことの意味は、紛争になる前の段階で判断の材料を得られること、期限のある手続を落とさないこと、そして紛争になった場合に主張の裏付けとなる資料が残っていることにあります。当事務所としては、そのような状態を作ることを目指して対応いたします。
おわりに
顧問弁護士を置くかどうかは、費用の多寡ではなく、法律に関わる判断を誰がいつ行うのかという体制の問題です。現在の体制で無理が生じているかどうかは、この1年間に処理を先送りにした案件の数を数えていただければ、おおよそ判断がつきます。
お迷いの段階でお電話をいただいて構いません。契約を前提としないご相談も承っています。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
顧問弁護士に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間:8:00~21:00(土日祝含む)
出典
民法第643条(委任)、第644条(受任者の注意義務)、第648条第1項及び第2項(受任者の報酬)、第651条第1項及び第2項(委任の解除)、第656条(準委任)
会社法第330条(株式会社と役員等との関係)、第831条第1項(株主総会等の決議の取消しの訴え)
弁護士法第3条第1項(弁護士の職務)、第23条(秘密保持の権利及び義務)、第25条(職務を行い得ない事件)
具体的なご相談をお考えの皆様へ
本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。

