法務顧問と顧問弁護士は何が違うのか 契約の類型と、自社に合う形の選び方

顧問弁護士を置くことを検討しはじめた会社の経営者又は総務の責任者の方から、「法務顧問という言い方も見かけるが、顧問弁護士と何が違うのか」というご質問をいただくことがあります。取引先の会社案内に「法務顧問」と書かれていた、士業事務所から「法務顧問契約」の提案を受けた、といった場面です。同じような言葉が並んでいるために、何を比べればよいのかが分からないという状態に置かれます。

本ページは、こうした呼称の違いを整理したうえで、顧問弁護士との契約にどのような類型があり、自社にはどの形が合うのかを選ぶための手順を示すものです。顧問弁護士を置くことの利点や、置くべきかどうかの判断そのものは別のページで扱いますので、ここでは「形の選び方」に絞って整理してまいります。

結論から申し上げます。「法務顧問」も「顧問弁護士」も、法律上の定義がある用語ではありません。したがって、呼び方を比べても意味がありません。比べるべきなのは、誰が受任者であるか、何を業務の範囲とするか、報酬をどう定めるか、という契約の中身です。

この記事の位置付け

顧問弁護士という同じ主題であっても、知りたい事柄は場面ごとに異なりますので、次のとおり整理しています。

「法務顧問」と「顧問弁護士」は、いずれも法律上の用語ではない

まず、言葉の整理から始めます。ここを曖昧にしたまま比較を進めると、比べる対象を取り違えます。

弁護士法にも会社法にも定義はない

弁護士法は、弁護士の職務について、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、訴訟事件、非訟事件及び審査請求等の行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とすると定めています(弁護士法第3条第1項)。しかし、「顧問弁護士」という語も、「法務顧問」という語も、法令上の定義規定は置かれていません。いずれも実務上の呼称にすぎません。

「法務顧問」は資格を示す語ではない

「法務顧問」という肩書は、弁護士が用いることもあれば、企業の法務部門の経験者、コンサルタント、他の士業の方が用いることもあります。この肩書だけでは、その方が弁護士であるかどうかを判断することができません。契約の前に、日本弁護士連合会又は所属する弁護士会の名簿で、弁護士としての登録の有無を確認していただくのが確実です。

弁護士でない者が法律事務を扱うことの制限

弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で、訴訟事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができません(弁護士法第72条)。また、弁護士でない者は、弁護士又は法律事務所と誤認させるような標示又は記載をしてはならず、利益を得る目的で法律相談その他法律事務を取り扱う旨の標示又は記載をしてはなりません(弁護士法第74条第1項及び第2項)。

実務上、問題となりやすいのは、既に相手方との間に見解の対立が生じている案件です。書類の作成にとどまるように見えても、相手方との折衝を含むのであれば、弁護士が扱う領域となります。

呼び方ではなく、契約の中身を見る

したがって、「法務顧問と顧問弁護士のどちらがよいか」という問いは、そもそも比較になっていません。確認すべきなのは、受任者は弁護士か、業務の範囲はどこまでか、報酬はどう定められているか、秘密の保持と利益相反はどう扱われているか、という4点です。

契約の法的性質から見ると、何が異なるのか

顧問弁護士契約は、法律事務の処理を委託する契約ですので、民法上は委任(民法第643条)又は準委任(民法第656条)に当たります。この性質から、いくつかの帰結が導かれます。

受任者の義務

受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負います(民法第644条)。また、委任者の請求があるときはいつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は遅滞なくその経過及び結果を報告しなければなりません(民法第645条)。顧問弁護士に対して処理の状況の報告を求めることができるのは、この規定によります。

報酬の定め方

受任者は、特約がなければ報酬を請求することができず、報酬を受けるべき場合には、原則として委任事務を履行した後でなければ請求することができませんが、期間によって報酬を定めたときは異なります(民法第648条第1項及び第2項)。月額の顧問料は、この「期間によって定めた報酬」に当たります。また、委任が履行の中途で終了したときは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができます(民法第648条第3項第2号)。成果に対して報酬を支払う旨を定めた場合には、別の規律が適用されます(民法第648条の2)。

解除

委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができます(民法第651条第1項)。もっとも、相手方に不利な時期に解除したとき等には、やむを得ない事由があった場合を除き、損害を賠償しなければなりません(同条第2項)。このため、実務では契約書に期間と解約の予告期間を定めます。

例えば、契約期間を令和8年4月1日から令和9年3月31日までとし、期間の満了により終了させる場合には3か月前までに書面で申し入れる旨を定めたときは、令和9年3月31日をもって終了させるためには、令和8年12月31日までに申入れをする必要があります。申入れが令和9年1月に入ってからになりますと、契約は自動的に更新され、さらに1年間継続することになります。この期限は見落とされやすく、更新の直前になって気付く例が少なくありません。

顧問弁護士以外の形にはどのようなものがあるか

会社に法律の専門家を関与させる方法は、顧問弁護士契約だけではありません。どの形が適しているかは、経営の意思決定にどこまで関与してほしいかによって変わります。

社外取締役として関与する形

弁護士が社外取締役に就任する例があります。社外取締役は会社法に定義が置かれた概念です(会社法第2条第15号)。株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従うとされ(会社法第330条)、役員は選任について株主総会の決議を要します(会社法第329条第1項)。役員はその任務を怠ったときは会社に対して損害を賠償する責任を負い(会社法第423条第1項)、定款の定めがあれば責任限定契約を締結することもできます(会社法第427条第1項)。

この形は、経営の意思決定そのものに関与してもらうことを意味します。外部からの助言にとどめたい場合には、適していません。

監査役として関与する形

監査役は取締役の職務の執行を監査します(会社法第381条第1項)。非公開会社では、定款によって監査の範囲を会計に関するものに限定することもできます(会社法第389条第1項)。監査役も役員であり、会社の機関の一部として関与します。

法務の業務を外部に委託する形

法務部門の業務そのものを外部の事業者に委託する形もあります。文書の管理、雛形の運用、契約の締結手続の管理といった事務には有効ですが、法律事件に関する判断を含む部分には弁護士法第72条の制限が及びますので、委託の範囲を明確に区切る必要があります。

案件の期間に限って関与する形

通年ではなく、特定の案件が進行している期間に限って弁護士を置く形もあります。事業の譲渡や株式の譲渡の局面で用いられます。

契約の類型を分ける4つの軸

顧問弁護士契約の類型は、次の4つの軸の組合せとして整理することができます。提案を受けた契約書を読む際は、この4点を順に確認してください。

確認する事項見落とすとどうなるか
業務の範囲助言に限るか、契約書の作成、交渉及び訴訟手続まで含むか必要な場面で別途の依頼と費用が生じる
対象とする分野一般企業法務の全般か、特定の分野に限るか想定していた分野が範囲外となる
期間最低の契約期間、更新の方法、解約の予告期間意図しない自動更新が生じる
主に担当する弁護士誰が主担当となるか、変更する場合の条件想定と異なる者が相談に応じる

当事務所における顧問弁護士契約の類型

当事務所では、上記の軸の組合せに応じて、次の類型を用意しています。

業務の範囲及び優先度によって分かれる類型

当事務所の一般的な顧問契約には、簡易顧問、通常顧問1、通常顧問2、専門顧問及び特別顧問の5つのプランがあります。いずれも、依頼者の要請に基づき、随時、各種の指導及び助言(口頭、電話、電子メール又は面談によるもの)を提供する業務を内容とします。契約書の作成、具体的な紛争への対応、訴訟への対応は別途となります。プランによって、対応する範囲の広さ、優先して取り組む程度、担当する弁護士、及び弁護士の時間制報酬の割引の割合が異なり、専門顧問及び特別顧問では専門の弁護士が対応いたします。

これらは、あらゆる企業法務の業務に取り組むことを前提とした一般的な顧問契約ですので、M&A、裁判、訴訟、紛争などの具体的な案件は別枠となります。なお、企業法務については、会社のことを全般的に考慮して検討するため、前提として顧問契約を締結していただいています。より広い範囲を対象とする類型としては、優先して取り組むことを前提とした包括的な契約であるプレミアム顧問契約があり、期間は12か月から承っています。

目的を限った類型

事業承継顧問契約は、事業承継に伴い、株式の集約や少数株主対策のため、持株会社化、従業員持株会の導入、資産管理会社の設立、社団法人の導入、種類株式の導入など、事業承継に必要な対策を全般的に導入するための企業法務の業務につき、最優先で取り組むことを前提とした顧問契約です。期間は12か月を予定しています。

敵対的株主(株式買取業者)防衛顧問契約は、敵対的株主からの株主総会への出席、会計帳簿の閲覧謄写の請求、株式買取請求、株主代表訴訟などに対応するための企業法務の業務につき、最優先で取り組むことを前提とした顧問契約です。期間は12か月を予定しています。

期間を限った類型

M&A顧問契約は、M&Aの手続中の企業との間で締結する顧問契約です。随時、口頭、電話又は電子メールによる法的助言を行いますが、M&Aの契約書の作成及びデュー・ディリジェンスは含まれません。仲介の指名前、マッチング前、マッチング後という段階に応じて月額の費用が定められており、期間は6か月から承っています。

いずれの類型でも範囲外となるもの

M&Aの相手方の検索及びマッチング、当事者間の取りまとめ、M&Aのプロセスの管理、M&Aの交渉業務は、顧問契約の範囲外です。これらはM&Aアドバイザリー業務又はM&A仲介業務として成功報酬により対応いたします。M&A契約書の作成及びデュー・ディリジェンスの遂行も、顧問契約の範囲外となります。

月額の費用及び時間制報酬の割引の割合は、プランごとに定められています。弁護士費用の詳細は弁護士費用一覧をご覧ください。

自社に合う形をどのように選ぶか

相談の頻度から考える

月に数回、短い相談が生じる会社であれば、助言に限る形が適しています。相談のたびに見積りを取る手間が省ける点が主な効用です。逆に、相談は年に数回だが、そのたびに文書の作成を伴う会社では、包括的な形の方が整理されます。

文書の量から考える

毎月のように新しい契約書が発生する会社では、契約書の作成及び確認を範囲に含めるかどうかが最大の分かれ目となります。含めない場合には、その都度の依頼となりますので、社内で「これは依頼するほどのことか」という判断が生じ、確認を経ない契約が積み上がります。

取り組むべき目的が定まっているかどうかで考える

事業承継に伴う株式の集約を進めたい、敵対的株主への対応を継続的に要する、譲渡の手続が進行している、といったように取り組むべき目的が定まっている会社では、目的又は期間を限った類型の方が適合します。一般的な類型で契約したうえで当該の案件については別途相談するという形にすると、費用の見通しが立ちにくくなります。

既に顧問弁護士がいる場合

既存の顧問弁護士がいる会社が、特定の分野を補うために2人目を置くこともできます。この場合には、情報の切り分けと利益相反の確認が必要です。詳細は関連するページに整理しています。

なぜ弁護士の側は、契約の形にこだわるのか

「どの類型でもよいので、とにかく相談できるようにしてほしい」とおっしゃる経営者の方がおられます。もっともなご希望ですが、弁護士の側が類型を明確にすることを求めるのには、次の3つの理由があります。

第1 受任することができない事件があるため

弁護士には、職務を行い得ない事件が法律で定められています(弁護士法第25条)。顧問先の相手方となる会社からの依頼は、原則として受けることができません。どの範囲を受任するのかが不明確なままでは、後になって利益相反が判明し、途中で辞任せざるを得ない事態が生じます。これは会社にとって最も不都合な結末です。

第2 秘密の保持の範囲を確定する必要があるため

弁護士は職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負います(弁護士法第23条)。守るべき秘密の範囲は、受任した業務の範囲によって画されます。範囲が不明確であれば、会社の側も、どこまで開示してよいのかを判断できません。

第3 対応できる時間の見通しを立てる必要があるため

随時の相談に優先的に応じるということは、そのための時間をあらかじめ確保するということです。範囲を定めずに引き受ければ、他の依頼者への対応と競合したときに、いずれかが後回しになります。範囲を明確にすることは、約束を守るための前提です。

いま確認していただきたいこと

本日のうちにできることを挙げます。

第1に、提案を受けている契約書がある場合、受任者が弁護士であるかどうかを、契約書の記載と弁護士会の名簿によって確認してください。

第2に、その契約書の業務の範囲の条項を読み、契約書の作成、交渉、訴訟手続が含まれているかどうかに印を付けてください。

第3に、契約期間、更新の方法、解約の予告期間を書き出し、更新を止める場合の期限がいつになるかを計算してください。

第4に、直近1年間に外部の弁護士へ相談した件数と分野を集計し、分野に偏りがあるかどうかを確認してください。

第5に、以上を整理したうえで、当事務所にお電話ください。どの類型が適しているかを、その場でお示しすることができます。

よくあるご質問

弁護士でない者と「法務顧問契約」を結ぶことはできますか

契約自体を結ぶことは可能ですが、扱うことのできる業務の範囲に制限があります。報酬を得る目的で法律事件に関する法律事務を取り扱うことを業とすることは、弁護士又は弁護士法人でない者には認められていません(弁護士法第72条)。相手方との折衝や、紛争となり得る事案の判断を委ねることはできません。

顧問弁護士に社外取締役も兼ねてもらうことはできますか

可能な場合もありますが、立場が異なる点に注意が必要です。社外取締役は会社の機関の一部として意思決定に加わり、任務を怠ったときは会社に対して損害を賠償する責任を負います(会社法第423条第1項)。外部からの助言にとどめたいのか、意思決定に加わってほしいのかを、あらかじめ整理しておく必要があります。

まず助言だけの契約から始めて、後から範囲を広げることはできますか

できます。実際、簡易な類型から始め、相談の内容が定まってきた段階でプランを見直す例が多くあります。顧問契約を締結していれば、契約書の作成や紛争への対応を別途依頼される場合の弁護士の時間制報酬が、プランに応じた割合で割引となります。

契約の途中で解約した場合、支払った顧問料は返ってきますか

契約の定めによります。委任が履行の中途で終了したときは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができるとされていますので(民法第648条第3項第2号)、この考え方が出発点となります。もっとも、最低の契約期間や解約の予告期間の定めがある場合には、その定めが優先しますので、契約書の確認が必要です。

複数の事務所の提案を比べたいのですが、何を並べればよいですか

月額の金額だけを並べても比較になりません。業務の範囲、対象とする分野、最低の契約期間と解約の予告期間、主に担当する弁護士、範囲外の業務を依頼した場合の費用の算定方法という5点を、同じ表に並べてください。この5点をそろえれば、比較すべき差が見えてまいります。

おわりに

「法務顧問」と「顧問弁護士」は、いずれも法律上の用語ではありません。呼び方を比べても答えは出ず、比べるべきなのは契約の中身です。受任者は誰か、業務の範囲はどこまでか、期間と解約はどう定められているか、誰が担当するのか。この4点を確認すれば、自社に合う形はおのずと絞られてまいります。

提案を受けた契約書をお手元に置いたままお電話をいただいて構いません。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

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弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間:8:00~21:00(土日祝含む)

出典

弁護士法第3条第1項(弁護士の職務)、第23条(秘密保持の権利及び義務)、第25条(職務を行い得ない事件)、第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)、第74条第1項及び第2項(非弁護士の虚偽標示等の禁止)

民法第643条(委任)、第644条(受任者の注意義務)、第645条(受任者による報告)、第648条第1項から第3項まで(受任者の報酬)、第648条の2(成果等に対する報酬)、第651条第1項及び第2項(委任の解除)、第656条(準委任)

会社法第2条第15号(社外取締役の定義)、第329条第1項(選任)、第330条(株式会社と役員等との関係)、第381条第1項(監査役の権限)、第389条第1項(定款の定めによる監査範囲の限定)、第423条第1項(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)、第427条第1項(責任限定契約)

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