事業譲渡に伴う消費税について

事業譲渡によるM&Aを進めている担当者の方が、譲渡の対価に消費税がかかるのかどうかが分からず悩んでいる場面を想定しています。

事業譲渡の対象となる資産の種類によって消費税の課税関係が異なるため、これを把握しないまま契約を進めると、想定していなかった消費税の負担が生じるおそれがあります。

そこで本記事では、事業譲渡に伴う消費税の取扱いについて説明します。

事業譲渡に伴う消費税について

M&Aにおいて、「株式譲渡には消費税はかからないが、事業譲渡には消費税がかかる」と一般的に言われることが多いですが、実態は詳細に考えなければなりません。

株式譲渡に消費税がかからないのはその通りですが、事業譲渡ならそのまま消費税がかかるというわけではありません。事業譲渡を構成する課税資産ごとに分けて考えなければなりません。例えば、動産には消費税はかかるものの、土地には消費税はかからず、売掛債権にも消費税はかかりません。事業譲渡の対象事業を構成する資産を分解し、ひとつづつ課税資産かどうかを確認して、課税資産のみに消費税率を掛ける必要があります。

また、特に、のれん(営業権)にも消費税がかかることには留意が必要です。無形資産なので消費税がかからないかのようですが、そうではありません。

また負債も事業の一部として承継する場合、負債割合については消費税を割り引く必要もあります。

近時、「事業譲渡代金が3億円だったのだが、当時の税率である8パーセントを乗じた2400万円の消費税を加算して送金したが問題なかったか」との相談を受けましたが、これは間違いです。よくある間違いですので気を付けましょう。

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消費税率は10パーセントです

本文中の相談事例は消費税率が8パーセントであった当時のものです。消費税及び地方消費税の税率は、令和元年10月1日以後、標準税率10パーセント(飲食料品等については軽減税率8パーセント)ですので、現在の事案においては10パーセントを前提に検討する必要があります。

課税資産と非課税資産の区分

事業譲渡において、譲渡の対象となる資産のうち、消費税が課されるものと課されないものは、おおむね次のとおり区分されます。

課税されるものとして、棚卸資産、機械装置、車両運搬具、工具器具備品、建物、無形固定資産(特許権、商標権、ソフトウエア等)、のれん(営業権)が挙げられます。

課税されないものとして、土地、売掛金その他の金銭債権、有価証券、現金預金が挙げられます。

特に、土地と建物とを一括して譲渡する場合には、対価の額を土地部分と建物部分とに合理的に区分する必要があります。区分の方法としては、固定資産税評価額の比、不動産鑑定評価額の比、帳簿価額の比等が用いられます。区分の方法によって消費税額が変わりますので、契約書において対価の内訳を明記しておくことが望まれます。

契約書における消費税の定め方

事業譲渡契約書においては、譲渡対価が消費税を含む額であるのか、含まない額であるのかを明記する必要があります。この点が不明確であると、クロージング後に消費税相当額の負担をめぐる紛争が生じます。

また、譲渡対象資産の内訳と各資産に対応する対価の額を別紙として明記しておくことにより、課税資産と非課税資産との区分が明確となり、税務調査における説明も容易となります。

負債を承継する場合の取扱いについても留意が必要です。承継する負債の額は、資産の譲渡等の対価の額から控除されるものではなく、それぞれの資産の譲渡の対価として認識されるべきものですので、契約書上の対価の定め方によって課税関係が変わり得ます。

株式譲渡との比較

株式の譲渡は非課税取引ですので、消費税は生じません。これに対し、事業譲渡では課税資産の譲渡について消費税が生じ、買主は譲渡対価に加えて消費税相当額を支払う必要があります。買主にとっては、当該消費税額は原則として仕入税額控除の対象となりますが、還付を受けるまでの間は資金負担が生じます。

事業譲渡と株式譲渡のいずれを選択するかは、簿外債務の遮断、許認可の承継、契約の承継、従業員の承継、登録免許税及び不動産取得税の負担など、多くの要素を総合して判断すべきものであり、消費税の負担はその一要素です。

※本記事の税務に関する記載は一般的な説明です。具体的な事案における課税関係につきましては、必ず税理士にご確認ください。

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