建設業の許可を承継させる場合の手続と時期

  • 2026年8月21日
  • 2026年8月20日
  • M&A

建設業を営んでおりますが、後継者がおらず、同業の会社に事業を譲ることを検討しております。建設業の許可は引き継げるのでしょうか。手続にどのくらいの期間がかかるのかも分かりません。このようなご相談をいただくことがあります。

結論から申し上げます。株式譲渡による方法によりますと、法人格に変動がありませんので、建設業の許可は原則として維持されます。事業譲渡による方法による場合には、建設業法に定める譲渡及び譲受けの認可を受けることにより、譲受人が建設業者の地位を承継することができる制度が設けられております。この制度による場合には、あらかじめ申請を行い、認可を受けた上で譲渡の効力を生じさせる構成となります。いずれの方法による場合であっても、経営業務の管理を適正に行うに足りる能力に関する要件及び専任技術者に関する要件を満たし続けることが不可欠です。本記事では、手続と時期を整理いたします。

第1節 建設業の許可の基本

1 許可の要否と区分

建設業を営もうとする者は、軽微な建設工事のみを請け負う場合を除き、建設業の許可を受けなければならないとされております(建設業法第3条第1項)。許可は、営業所の所在の状況により国土交通大臣又は都道府県知事が行い、また請け負う工事の内容により一般建設業と特定建設業とに区分されます。

許可は、5年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって効力を失うとされております(建設業法第3条第3項)。譲渡の日程を検討する際には、更新の時期を確認しておく必要があります。

2 許可の基準

一般建設業の許可の基準として、経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有すること、営業所ごとに専任の技術者を置くこと、請負契約に関して誠実性を有すること、請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有することが定められております(建設業法第7条)。特定建設業については、別に基準が定められております(建設業法第15条)。

承継の局面において問題となるのは、主として最初の2つの要件です。従前の経営者が退任することにより、経営業務の管理に関する要件を満たす者を欠くことがあります。また、専任の技術者が退職することにより、営業所における配置の要件を欠くことがあります。

第2節 方法ごとの取扱い

表1 建設業の許可の取扱い

方法許可の取扱い主な手続
株式譲渡原則として維持されます役員の変更等に関する届出。要件を満たす者の確保
事業譲渡認可を受けることにより承継することができますあらかじめ認可の申請を行い、認可を受けます
合併及び分割認可を受けることにより承継することができますあらかじめ認可の申請を行い、認可を受けます
相続認可を受けることにより承継することができます死亡後の一定の期間内に申請を行います

1 株式譲渡による場合

株式譲渡によりますと、許可を受けている法人はそのまま存続いたしますので、許可は原則として維持されます。もっとも、次の手続及び確認が必要です。

第一に、役員の変更に関する届出です。建設業者は、許可に係る事項に変更が生じたときは、所定の期間内に行政庁に届け出なければならないとされております(建設業法第11条)。役員の交代、営業所の変更、専任技術者の変更が生じた場合には、届出を行います。

第二に、経営業務の管理に関する要件を満たす者の確保です。従前の経営者がこの要件を満たす者である場合、その者が退任した後も要件を満たすことができるかを確認いたします。要件を満たす者を新たに配置する必要がある場合には、その者の経歴を確認し、必要な資料を準備いたします。

第三に、専任技術者の確保です。営業所ごとに専任の技術者を置く必要がありますので、その者の在籍を確保いたします。

第四に、欠格の要件です。役員等が一定の事由に該当する場合には許可を受けることができないとされております(建設業法第8条)。新たに就任する役員について、該当の有無を確認いたします。

2 事業譲渡による場合

建設業法には、建設業者が事業の譲渡をする場合において、あらかじめ行政庁の認可を受けたときは、譲受人が建設業者の地位を承継する旨の制度が設けられております。この制度により、事業譲渡による場合であっても、許可を承継することが可能となります。

この制度を利用する場合の要点は、次のとおりです。

第一に、認可は事前に受ける必要があります。譲渡の効力が生じた後に申請するものではありません。したがって、譲渡の日程は、認可を受けた後に効力が生じるよう設計いたします。

第二に、譲受人が許可の基準を満たしていることが前提となります。経営業務の管理を適正に行うに足りる能力、専任技術者の配置、誠実性、財産的基礎に関する要件を、譲受人において満たす必要があります。

第三に、譲渡人の許可は、承継により消滅することになります。譲渡人が他の建設業を継続する予定がある場合には、この点を確認する必要があります。

第四に、認可には審査の期間を要します。所管する行政庁に、標準的な処理の期間を確認いたします。

3 合併、分割及び相続

合併及び分割による場合にも、あらかじめ認可を受けることにより地位を承継することができる制度が設けられております。また、建設業者である個人が死亡した場合において、相続人が死亡後の一定の期間内に認可の申請を行い、認可を受けたときは、地位を承継することができる制度が設けられております。

第3節 人的な要件の確保

1 経営業務の管理に関する要件

承継の局面において最も問題となる要件です。従前の経営者が長年にわたりこの要件を満たしてきた会社では、その者の退任により要件を欠く事態が生じます。

対応としては、次の方法が考えられます。第一に、要件を満たす者を譲受人の側で確保する方法です。第二に、従前の経営者に一定期間役員として在籍してもらい、その間に要件を満たす者を育成する方法です。第三に、社内の他の役員がこの要件を満たすかを確認する方法です。

要件の充足の判断には、経歴を裏付ける資料が必要となります。過去の在籍の状況、役職、業務の内容を示す資料を、あらかじめ準備しておく必要があります。

2 専任技術者

営業所ごとに専任の技術者を置く必要があります。承継に伴い技術者が退職する場合には、代わる者を確保しなければなりません。資格による場合と実務の経験による場合とがありますので、いずれによって要件を満たすかを確認いたします。

3 工事現場に置く技術者

請け負った建設工事を施工するときは、工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる者を置かなければならないとされております(建設業法第26条)。営業所の専任技術者とは別に、工事現場に配置する技術者の確保も必要です。承継に伴う人員の異動が、施工中の工事に影響しないかを確認いたします。

第4節 日程の設計

建設業の許可に関する手続を日程に組み込む際の要点は、次のとおりです。

第一に、事業譲渡による場合には、認可の申請から認可までの期間を確保いたします。所管する行政庁に標準的な処理の期間を確認し、余裕をもって申請いたします。

第二に、許可の更新の時期を確認いたします。承継の手続と更新の時期とが近接している場合には、いずれを先に行うかを行政庁に確認いたします。

第三に、施工中の工事の状況を確認いたします。承継の時期が工事の途中となる場合には、発注者への説明、契約上の地位の取扱い、技術者の配置について、あらかじめ整理いたします。

第四に、経営事項審査を受けている場合には、その取扱いを確認いたします。公共工事の入札に参加している会社では、承継が入札の資格に影響する可能性があります。

第5節 弁護士に相談する意味

建設業の許可の承継において弁護士が行う業務は、次の点にあります。第一に、株式譲渡と事業譲渡のいずれによるかを、許可の取扱い及び他の要素を踏まえて検討することです。第二に、人的な要件の充足の状況を確認し、譲渡の後も維持することができるかを判断することです。第三に、必要な手続を譲渡の日程に組み込むことです。第四に、契約における前提条件、表明保証、人員の継続に関する定めを設けることです。

とりわけ、経営業務の管理に関する要件及び専任技術者に関する要件は、承継の可否そのものを左右いたします。これらの確認は、譲渡の検討の初期に行うべきものです。

なお、行政庁への許可及び認可の申請の代理は、行政書士の業務でございます。当事務所は申請の代理を行うものではありません。

具体的な検討及び日程の設計は、許可の区分、営業所の状況、人員の構成等により異なり、当事務所が個別案件を通じて蓄積してきた実務上のノウハウにも属するため、本記事では詳細を開示しておりません。

よくあるご質問

質問1 株式を譲渡すれば、許可はそのまま残るのですか。

法人格に変動がありませんので、許可は原則として維持されます。もっとも、役員の変更に関する届出、経営業務の管理に関する要件及び専任技術者に関する要件の確認が必要です。

質問2 事業譲渡でも許可を引き継げるのですか。

あらかじめ行政庁の認可を受けることにより、地位を承継することができる制度が設けられております。認可は事前に受ける必要がありますので、日程に組み込む必要があります。

質問3 私が退任すると、要件を満たす者がいなくなります。

要件を満たす者を譲受人の側で確保する方法、一定期間役員として在籍する方法、社内の他の役員が要件を満たすかを確認する方法があります。譲渡の検討の初期に確認することが望まれます。

質問4 施工中の工事はどうなりますか。

株式譲渡による場合には、請負契約の当事者に変動がありませんので、そのまま継続いたします。事業譲渡による場合には、契約上の地位の移転について発注者の承諾を要します。技術者の配置についても確認が必要です。

質問5 手続にはどのくらいの期間がかかりますか。

認可の審査に要する期間は、所管する行政庁により異なります。標準的な処理の期間が公表されている場合には、それが目安となります。人的な要件を整えるための期間を含めますと、数か月以上を見込む必要があります。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕。東京都港区虎ノ門)では、建設業を営む会社の承継に関するご相談を、譲渡人側及び譲受人側の双方からお受けしております。

  • 電話番号 03-6435-8418
  • 受付時間 8時00分から21時00分まで
  • 土曜日、日曜日及び祝日も受付いたします
  • ご相談は事前予約制です

ご相談の際に、建設業の許可に関する書類、届出の控え、技術者の資格及び経歴に関する資料、登記事項証明書、定款、直近3期分の計算書類、施工中の工事に関する契約書をご用意いただけますと、検討が早く進みます。なお、行政庁への申請の代理は行政書士、登記の申請は司法書士、税務に関する事項は税理士の業務でございます。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

結果は事案ごとに異なります。本記事の記載は一般的な説明であり、特定の結果を保証するものではありません。

本記事の根拠条文

建設業法 第3条第1項及び第3項(建設業の許可及び更新)、第7条(一般建設業の許可の基準)、第8条(許可の欠格要件)、第11条(変更等の届出)、第15条(特定建設業の許可の基準)、第26条(主任技術者及び監理技術者の設置)、第29条(許可の取消し)。このほか、建設業法には、事業の譲渡及び譲受け、合併、分割並びに相続に伴う地位の承継に関する認可の制度が設けられております。
会社法 第467条第1項(事業の譲渡等に係る株主総会の承認)

関連するご案内

許認可のある事業を譲り渡し又は譲り受けることにお困りではありませんか のページで、確認すべき事項と採り得る手続を整理しております。ご相談は事前予約制です。

あわせてお読みください。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

お問い合わせ   

この記事に関連するお問い合わせは、弁護士法人M&A総合法律事務所にいつにてもお問い合わせください。ご不明な点等ございましたら、いつにてもお問い合わせいただけましたら幸いです。







    ※ いずれか一つをお選びください。「〜1000万」は500万円以上1000万円未満を指します。




    入力内容をご確認の上、
    送信ボタンを押してください

    >お気軽にお問い合わせください!!

    お気軽にお問い合わせください!!

    M&A相談・株式譲渡契約書・事業譲渡契約書・会社分割契約書・デューデリジェンスDD・表明保証違反・損害賠償請求・M&A裁判訴訟紛争トラブル対応に特化した弁護士法人M&A総合法律事務所が、全力でご協力いたします!!

    CTR IMG