運送業と産業廃棄物の収集運搬業を営んでおります。会社を譲り渡すことを検討しておりますが、これらの許可がどうなるのかが分かりません。このようなご相談をいただくことがあります。
結論から申し上げます。いずれの事業についても、株式譲渡による方法によりますと法人格に変動がありませんので、許可は原則として維持されます。事業譲渡による方法による場合には、貨物自動車運送事業法及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律に、事業の譲渡し及び譲受けに伴い地位を承継することを認める制度が設けられております。もっとも、いずれの事業も欠格に関する要件が厳格に定められており、また運行管理者、整備管理者、施設に関する要件を満たし続ける必要があります。本記事では、注意すべき事項を整理いたします。
第1節 貨物自動車運送事業
1 許可及び体制に関する要件
一般貨物自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならないとされております(貨物自動車運送事業法第3条)。許可を受けるためには、事業用自動車の数、車庫、休憩及び睡眠のための施設、資金の計画、法令の遵守に関する体制について、要件を満たす必要があります。
また、事業者は、営業所ごとに、事業用自動車の数に応じて運行管理者を選任しなければならないとされております。あわせて、道路運送車両法に基づき整備管理者を選任する必要があります。承継に伴いこれらの者が退職する場合には、代わる者を確保しなければなりません。
2 承継に関する制度
貨物自動車運送事業法には、事業の譲渡し及び譲受けについて国土交通大臣の認可を受けなければその効力を生じない旨の制度が設けられております。また、法人の合併及び分割についても、同様の制度が設けられております。事業譲渡による方法をとる場合には、あらかじめ認可の申請を行い、認可を受けた上で譲渡の効力を生じさせる構成となります。
3 株式譲渡による場合の注意
株式譲渡によりますと許可は原則として維持されますが、次の点に注意を要します。
第一に、役員の変更に関する届出です。第二に、運行管理者及び整備管理者の選任及び解任に関する届出です。第三に、欠格に関する要件です。新たに就任する役員について、該当の有無を確認いたします。第四に、営業所、車庫、車両の変更を伴う場合には、それぞれについて手続を要します。
4 運行に関する記録の確認
買主の立場からは、法令の遵守の状況を確認する必要があります。運転者の労働時間の管理、点呼の実施及び記録、車両の点検及び整備の記録、過去の行政上の措置の有無が確認の対象となります。これらに不備がある場合には、承継の後に行政上の措置を受ける可能性が残ります。
とりわけ、運転者の労働時間については、労働基準法上の割増賃金の問題と、運行に関する基準の遵守の問題とが併存いたします。両面からの確認が必要です。
第2節 産業廃棄物の処理に関する事業
1 許可の構造
産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を業として行おうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならないとされております(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第14条)。収集運搬業と処分業とは別の許可であり、また積替えのための保管を行う場合には、その旨を含む許可を受ける必要があります。
許可は、事業を行う区域を所管する都道府県知事等が行います。したがって、複数の都道府県において事業を行う場合には、それぞれの許可を有していることになります。承継の局面においては、保有するすべての許可について確認を要します。
また、特別管理産業廃棄物を取り扱う場合には、別途の許可を要します。取り扱う廃棄物の種類ごとに、許可の範囲を確認する必要があります。
2 欠格に関する要件の厳格さ
産業廃棄物の処理に関する事業の許可においては、欠格に関する要件が厳格に定められております。役員等が一定の事由に該当する場合には許可を受けることができず、また既に受けた許可も取り消されることになります。
とりわけ注意を要するのは、欠格に該当する事由の範囲が広く、また役員のほか一定の使用人及び発行済株式の一定の割合を有する株主等にも及び得る点です。株式の取得により新たに株主となる者、新たに就任する役員について、該当の有無をあらかじめ確認する必要があります。
加えて、ある許可が取り消された場合に、その者が役員を務める他の法人の許可にも影響が及ぶ構造が設けられております。譲受人が既に同種の事業を営んでいる場合には、この点の確認が重要です。
3 承継に関する制度
廃棄物の処理及び清掃に関する法律には、産業廃棄物処理業者がその事業の全部を譲り渡す場合において、都道府県知事の承認を受けたときは、譲受人が地位を承継する旨の制度が設けられております。また、合併及び分割についても、同様の制度が設けられております。
この制度による場合には、譲受人が許可の基準を満たしていること、欠格に該当しないことが前提となります。あらかじめ申請を行い、承認を受けた上で譲渡の効力を生じさせる構成となります。
4 施設及び設備に関する要件
収集運搬業においては車両及び容器、処分業においては処理の施設が要件となります。承継に伴い施設の所在又は所有の関係が変わる場合には、要件の充足を改めて確認する必要があります。処理の施設が経営者個人の名義の土地に所在している場合には、その土地の使用関係も併せて整理いたします。
5 過去の処理の記録
買主の立場からは、過去の処理が適正に行われてきたかを確認する必要があります。産業廃棄物管理票の交付及び保存の状況、帳簿の記載、行政上の措置の有無、保管の状況、周辺の住民との関係が確認の対象となります。
不適正な処理が過去に行われていた場合には、承継の後に措置を求められる可能性があります。とりわけ、保管されている廃棄物の量及び性状、処理の見通しは、重要な確認事項です。
第3節 両事業に共通する留意点
表1 承継にあたり確認する事項
| 区分 | 確認する事項 |
|---|---|
| 許可の内容 | 種類、区域、有効期間、更新の時期、範囲の限定の有無 |
| 人的な要件 | 運行管理者、整備管理者、技術上の管理を行う者の在籍及び資格 |
| 欠格に関する要件 | 新たな役員及び株主について該当の有無 |
| 施設及び設備 | 所在、所有又は使用の関係、要件の充足 |
| 法令の遵守の状況 | 記録の保存、行政上の措置の有無、指導の履歴 |
| 労働に関する状況 | 労働時間の管理、割増賃金の支払、運転者の健康の管理 |
1 更新の時期
いずれの許可にも有効期間が定められております。承継の手続と更新の時期とが近接している場合には、いずれを先に行うかを所管する行政庁に確認いたします。
2 行政上の措置の履歴
過去に行政上の措置を受けている場合には、その内容及び是正の状況を確認いたします。措置の履歴が、その後の許可の取扱いに影響することがあります。
3 労働に関する事項
いずれの事業も、労働時間が長時間に及びやすい業種です。労働時間の管理、割増賃金の支払、運転者の健康の管理について、確認を要します。未払の割増賃金は、承継の後に請求を受ける可能性のある負担です。
第4節 弁護士に相談する意味
これらの事業の承継において弁護士が行う業務は、次の点にあります。第一に、保有するすべての許可を特定し、内容、区域、有効期間、範囲の限定を整理することです。第二に、欠格に関する要件について、新たな役員及び株主の該当の有無を確認することです。第三に、人的な要件及び施設に関する要件を承継の後も満たすことができるかを判断することです。第四に、法令の遵守の状況を確認し、承継の後に生じ得る負担を把握することです。
とりわけ、産業廃棄物の処理に関する事業における欠格の要件は、その範囲が広く、また取消しの影響が他の法人にも及び得る構造となっております。譲受人が同種の事業を営んでいる場合には、承継の可否そのものに関わる事項ですので、初期の段階で確認する必要があります。
なお、行政庁への許可及び認可の申請の代理は、行政書士の業務でございます。当事務所は申請の代理を行うものではありません。
具体的な確認の進め方は、許可の種類、区域、事業の内容等により異なり、当事務所が個別案件を通じて蓄積してきた実務上のノウハウにも属するため、本記事では詳細を開示しておりません。
よくあるご質問
質問1 株式譲渡であれば、許可は問題なく残りますか。
原則として維持されますが、届出の義務、人的な要件の確保、欠格に関する要件の確認が必要です。とりわけ産業廃棄物の処理に関する事業では、新たな役員及び株主についての確認が重要です。
質問2 事業譲渡でも許可を引き継げますか。
いずれの事業についても、あらかじめ行政庁の認可又は承認を受けることにより地位を承継することができる制度が設けられております。事前の申請が必要ですので、日程に組み込む必要があります。
質問3 複数の都道府県で産業廃棄物の許可を持っています。
それぞれの許可について取扱いを確認する必要があります。承継に関する承認も、それぞれの都道府県知事等から受けることになります。手続の数が多くなりますので、期間を見込む必要があります。
質問4 運行管理者が退職する予定です。
代わる者を確保しなければなりません。資格の取得には期間を要しますので、承継の日程から逆算して手当てを検討いたします。
質問5 過去に行政指導を受けたことがあります。譲渡に影響しますか。
内容及び是正の状況により異なります。買主の調査において必ず確認される事項ですので、あらかじめ整理し、是正の経緯とともに説明することが望まれます。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕。東京都港区虎ノ門)では、許認可のある事業の承継に関するご相談を、譲渡人側及び譲受人側の双方からお受けしております。
- 電話番号 03-6435-8418
- 受付時間 8時00分から21時00分まで
- 土曜日、日曜日及び祝日も受付いたします
- ご相談は事前予約制です
ご相談の際に、許可に関する書類、届出の控え、運行管理者その他の有資格者に関する資料、行政上の措置の履歴、登記事項証明書、定款、直近3期分の計算書類をご用意いただけますと、検討が早く進みます。なお、行政庁への申請の代理は行政書士、登記の申請は司法書士、税務に関する事項は税理士の業務でございます。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。
結果は事案ごとに異なります。本記事の記載は一般的な説明であり、特定の結果を保証するものではありません。
本記事の根拠条文
貨物自動車運送事業法 第3条(一般貨物自動車運送事業の許可)。このほか、同法には事業の譲渡し及び譲受け並びに合併及び分割に伴う地位の承継に関する認可の制度が設けられております。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第14条(産業廃棄物処理業の許可)。このほか、同法には事業の譲渡し及び譲受け並びに合併及び分割に伴う地位の承継に関する承認の制度並びに欠格に関する要件が定められております。
会社法 第467条第1項(事業の譲渡等に係る株主総会の承認)
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