M&A仲介会社と専任の契約を締結いたしましたが、進め方に納得がいかず、契約を終了させたいと考えております。契約書には期間が1年と定められておりますが、途中で解約することはできるのでしょうか。このようなご相談をいただくことがあります。
結論から申し上げます。仲介契約は、事務の委託を内容とする契約としての性質を有しますので、各当事者はいつでも解除することができるのが原則です。もっとも、契約において解除の要件、予告の期間、中途解約金に関する定めが置かれている場合には、その定めに従うことになります。また、解除の後もテール条項による報酬の支払義務が残ることがあります。解約を検討する際には、これらの定めを併せて確認する必要があります。本記事では、確認すべき点を整理いたします。
第1節 解除に関する原則
1 委任の規定による解除
M&Aの仲介契約及び媒介契約は、相手方の探索、条件の調整、日程の管理といった事務の委託を内容とするものであり、委任に関する規定が準用される準委任としての性質を有すると解されます(民法第656条)。委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができるとされております(民法第651条第1項)。
2 損害の賠償を要する場合
もっとも、相手方に不利な時期に解除をしたとき、又は委任者が受任者の利益をも目的とする委任を解除したときは、相手方の損害を賠償しなければならないとされております。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りではありません(民法第651条第2項)。
したがって、解除自体は可能であるとしても、その時期及び事情によっては、賠償の問題が生じ得ることになります。
3 契約における定めが優先いたします
事業者間の契約においては、解除に関する要件を契約により定めることができます。予告の期間、書面による通知、中途解約金に関する定めが置かれている場合には、まずその定めを確認いたします。
第2節 契約書において確認する事項
表1 解約を検討する際に確認する事項
| 確認する事項 | 確認の要点 |
|---|---|
| 契約の期間 | 期間の定め。自動更新の有無及び更新を拒む場合の通知の期限 |
| 中途解約に関する定め | 解約の可否、予告の期間、通知の方式 |
| 中途解約金 | 金額、算定の方法、発生の要件 |
| 既払金の取扱い | 着手金及び中間金が返還されるか |
| テール条項 | 解除の後に報酬が発生する場合の要件、期間、対象 |
| 資料の返還 | 提供した資料の返還又は破棄に関する定め |
| 秘密保持 | 解除の後も存続する範囲及び期間 |
1 自動更新の定め
期間の満了により終了する構成であっても、更新を拒む旨の通知を一定の期限までに行わなければ自動的に更新される旨の定めが置かれていることがあります。この期限を経過いたしますと、さらに1年間契約が継続することになりますので、確認を要します。
2 中途解約金
中途解約の場合に一定額の金銭を支払う旨の定めが置かれていることがあります。金額、算定の方法、いかなる場合に発生するかを確認いたします。相手方の探索に要した実費の精算にとどまるものと、報酬の一部に相当する金額とでは、意味が異なります。
3 テール条項との関係
解除により契約が終了した後も、一定の期間内に、契約の期間中に仲介会社が紹介した相手方との間で取引が成立した場合には報酬が発生する旨の条項が置かれているのが通例です。解除の際には、この条項の適用の範囲を確認する必要があります。
とりわけ重要なのは、対象となる相手方の範囲です。解除に際して、紹介を受けた相手方の名簿を書面により確認しておくことにより、後の争いを避けることができます。
第3節 解約を検討する場面
1 進め方に納得がいかない場合
相手方の探索が進まない、報告がない、説明が不十分であるといった事情により、解約を検討することがあります。この場合、まず改善を求める申入れを書面により行うことが考えられます。申入れの記録は、後に中途解約金の当否が争われた場合の資料となります。
2 自ら相手方を見つけた場合
専任の契約を締結している場合、自ら見つけた相手方との取引についても報酬が発生する旨の定めが置かれていることがあります。この場合、解約したうえで直接に交渉することを考えても、テール条項の適用を受ける可能性があります。契約の定めを確認する必要があります。
3 譲渡そのものを取りやめる場合
事情の変化により譲渡を取りやめる場合にも、契約を終了させることになります。この場合、将来において改めて譲渡を検討する可能性がありますので、テール条項の期間及び対象を確認しておくことが望まれます。
第4節 弁護士に相談する意味
仲介契約の解約において弁護士が行う業務は、次の点にあります。第一に、契約書における解除、中途解約金、テール条項、自動更新に関する定めを整理し、解約に伴う負担を把握することです。第二に、解約の通知の方式及び時期を定めることです。第三に、紹介を受けた相手方の名簿の確認、提供した資料の返還について、書面により処理することです。第四に、中途解約金の請求を受けた場合に、その当否を検討することです。
解約は、それ自体は難しい手続ではありませんが、その後に生じ得る負担を把握しないまま行いますと、後に請求を受けることになります。事前の確認が重要です。
具体的な進め方は、契約の文言、経緯、交渉の段階等により異なり、当事務所が個別案件を通じて蓄積してきた実務上のノウハウにも属するため、本記事では詳細を開示しておりません。
よくあるご質問
質問1 契約期間の途中でも解約できますか。
委任に関する規定によれば、各当事者はいつでも解除することができるのが原則です。もっとも、契約において予告の期間、中途解約金に関する定めが置かれている場合には、その定めに従うことになります。
質問2 中途解約金を請求されました。支払わなければなりませんか。
契約の定めを確認いたします。定めがある場合であっても、金額が業務の内容に照らして均衡を失するときは、その効力又は範囲が争われる余地があります。事案ごとの検討を要します。
質問3 解約すれば、テール条項の適用もなくなりますか。
なくなりません。テール条項は、契約の終了後の一定の期間について適用されるものです。解約の際に、対象となる相手方の名簿を書面により確認しておくことが望まれます。
質問4 着手金は返してもらえますか。
契約の定めによります。返還しない旨の定めが置かれているのが通例です。支払の前に確認しておくべき事項です。
質問5 解約の通知はどのように行いますか。
契約に方式の定めがある場合には、その方式によります。定めがない場合であっても、書面により行い、到達の記録を残すことが望まれます。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕。東京都港区虎ノ門)では、M&A仲介会社との契約及び報酬に関するご相談をお受けしております。
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結果は事案ごとに異なります。本記事の記載は一般的な説明であり、特定の結果を保証するものではありません。
本記事の根拠条文
民法 第521条第2項(契約の内容の自由)、第643条(委任)、第648条(受任者の報酬)、第651条第1項及び第2項(委任の解除及び損害の賠償)、第656条(準委任への準用)
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