会社の解散及び清算の手続の流れと所要期間

  • 2026年8月21日
  • 2026年8月20日
  • M&A

会社を廃業することといたしました。事業を止めれば終わりだと思っておりましたが、解散及び清算の手続が必要であると聞きました。どのような流れで、どのくらいの期間がかかるのでしょうか。このようなご相談をいただくことがあります。

結論から申し上げます。会社を消滅させるためには、解散の決議、清算人の選任、財産の調査、債権者に対する公告及び催告、債務の弁済、残余財産の分配、清算の結了という手順を経る必要があります。債権者に対する公告及び催告の期間は2箇月を下ることができませんので、この期間だけでも2箇月以上を要します。資産の換価、従業員との関係の終了、賃借物件の明渡しを含めますと、全体では半年から1年程度を要するのが通例です。本記事では、手続の流れと期間の目安を整理いたします。

第1節 解散の決議

1 解散の事由

株式会社は、定款に定めた存続期間の満了、定款に定めた解散の事由の発生、株主総会の決議、合併、破産手続開始の決定、解散を命ずる裁判といった事由により解散するとされております(会社法第471条)。任意に廃業する場合には、株主総会の決議による解散によることになります(同条第3号)。

2 決議の要件

解散の決議は、株主総会の特別決議によります(会社法第309条第2項第11号)。議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う必要があります。定款により要件が加重されている場合には、その要件によります。

株式が分散している会社においては、この決議を成立させることができるかが問題となります。所在の分からない株主、連絡の取れない株主がいる場合には、あらかじめ対応を検討しておく必要があります。

3 清算人の選任

解散した会社は清算をしなければならず(会社法第475条第1号)、清算人がその事務を執行いたします。定款に定めがある場合又は株主総会の決議によって選任された者がある場合を除き、取締役が清算人となるのが原則です(会社法第478条第1項)。解散の決議と併せて清算人を選任するのが通例です。

第2節 清算の手続の流れ

表1 解散から清算の結了までの流れ

手順内容期間の目安
1 解散の決議及び清算人の選任株主総会の特別決議によります招集の手続を含めて数週間
2 解散及び清算人の登記登記の申請を行います解散の日から2週間以内
3 財産の調査財産目録及び貸借対照表を作成し、株主総会の承認を受けます数週間から数か月
4 債権者に対する公告及び催告官報に公告し、知れている債権者には各別に催告いたします2箇月以上
5 資産の換価及び債務の弁済資産を換価し、債務を弁済いたします数か月
6 残余財産の分配債務の弁済後に残った財産を株主に分配いたします数週間
7 決算報告及び清算の結了決算報告を作成し、株主総会の承認を受けます数週間
8 清算結了の登記登記の申請を行います承認の日から2週間以内

1 財産の調査

清算人は、その就任の後遅滞なく、清算株式会社の財産の現況を調査し、財産目録及び貸借対照表を作成しなければならないとされております(会社法第492条第1項)。これらは株主総会の承認を受ける必要があります(同条第3項)。

この段階で、資産をもって債務を弁済することができるかを判断いたします。弁済することができない場合には、通常の清算の手続によることができず、破産その他の手続を検討することになります。

2 債権者に対する公告及び催告

清算株式会社は、清算の開始の後遅滞なく、債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ知れている債権者には各別にこれを催告しなければならないとされております。この期間は2箇月を下ることができません(会社法第499条第1項)。

この期間中は、原則として債務の弁済をすることができません(会社法第500条第1項)。ただし、少額の債権その他一定のものについては、裁判所の許可を得て弁済することができるとされております。

この2箇月という期間は、手続の期間を規定する主要な要素です。解散の決議の後、直ちに公告を行うことにより、全体の期間を短縮することができます。

3 資産の換価及び債務の弁済

清算人の職務は、現務の結了、債権の取立て及び債務の弁済、残余財産の分配とされております(会社法第481条)。継続中の取引を終了させ、売掛金を回収し、資産を換価し、債務を弁済いたします。

不動産を有する場合には、その売却に期間を要することがあります。機械及び在庫については、売却により資金を得られるものと、処分に費用を要するものとがあります。賃借している物件については、原状回復を行った上で明け渡します。

4 残余財産の分配

清算株式会社は、債務を弁済した後でなければ、その財産を株主に分配することができません(会社法第502条)。債務の弁済が完了した後に、残余の財産を株主に分配いたします(会社法第504条、第505条)。

5 決算報告及び清算の結了

清算事務が終了したときは、清算人は決算報告を作成し、株主総会の承認を受ける必要があります(会社法第507条第1項及び第3項)。承認を受けたときに清算が結了し、その日から2週間以内に清算結了の登記を申請いたします。

なお、清算人は、清算結了の登記の時から10年間、帳簿及び事業並びに清算に関する重要な資料を保存しなければならないとされております(会社法第508条第1項)。会社が消滅した後も、資料の保存の義務が残る点に留意が必要です。

第3節 並行して行う手続

1 従業員との関係の終了

解散に伴い、従業員との労働契約を終了させることになります。使用者が労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前に予告をするか、30日分以上の平均賃金を支払わなければならないとされております(労働基準法第20条第1項)。

退職金規程がある場合にはその支払を要します。また、社会保険及び労働保険に関する手続も必要となります。従業員への説明の時期及び方法は、事業の終了の時期と併せて計画いたします。

2 取引先への対応

継続的な取引の契約については、契約の定めに従って終了させます。予告の期間が定められている場合には、その期間を確保する必要があります。定めがない場合であっても、相当の予告期間を置くことが望まれます。

3 許認可及び届出

事業に必要な許認可については、廃止の届出を要するものがあります。所管する行政庁への確認を行い、必要な手続を行います。

4 税務に関する手続

解散及び清算に伴い、税務に関する申告その他の手続を要します。事業年度の取扱い、残余財産の分配に係る課税関係については、税理士にご確認ください。当事務所は税務申告の代理を行うものではありません。

第4節 期間を左右する要素

全体の期間を左右するのは、次の要素です。第一に、債権者に対する公告及び催告の期間である2箇月です。これは短縮することができません。第二に、資産の換価に要する期間です。不動産を有する場合には長期に及ぶことがあります。第三に、株主総会を開催することができるかです。株式が分散している会社では、招集の手続に期間を要します。第四に、賃借物件の明渡し及び原状回復に要する期間です。

これらを踏まえますと、資産が単純であり株主が少数である会社では半年程度、不動産を有し株主が分散している会社では1年を超えることがあります。

第5節 弁済することができない場合

財産の調査の結果、資産をもって債務を弁済することができないことが明らかとなった場合には、清算人は破産手続開始の申立てをしなければならないとされております(会社法第484条第1項)。通常の清算の手続を継続することはできません。

この場合には、経営者の個人保証についても検討を要します。保証債務の履行を求められる可能性、これに対して採り得る手続について、早い段階で確認しておく必要があります。

第6節 弁護士に相談する意味

解散及び清算において弁護士が行う業務は、次の点にあります。第一に、財産及び債務を簿外のものを含めて把握し、通常の清算の手続によることができるかを判断することです。第二に、株主総会の招集及び決議の手続を整えることです。第三に、従業員との関係の終了、取引先との契約の終了、賃借物件の明渡しについて、法律上の要件を満たす形で進めることです。第四に、弁済することができない場合に、採るべき手続を検討することです。

とりわけ、廃業を機に未払の割増賃金その他の請求が生じることがあります。これらを把握しないまま手続を進めますと、清算の途中で予定が変わることになります。着手の前に、負担となり得る事項を確認しておくことが望まれます。

具体的な手続の進め方は、資産の内容、債務の状況、株主の構成、業種等により異なり、当事務所が個別案件を通じて蓄積してきた実務上のノウハウにも属するため、本記事では詳細を開示しておりません。

よくあるご質問

質問1 事業を止めて放置しておくことはできませんか。

会社という法人は、清算が結了するまで存続いたします。放置いたしますと、税務に関する申告の義務、役員の変更に関する登記の義務が残ります。また、一定の期間登記が行われない会社については、解散したものとみなされる制度が設けられておりますが、これによっても清算の手続は必要です。

質問2 期間を短縮する方法はありますか。

債権者に対する公告及び催告の期間である2箇月は短縮することができません。もっとも、解散の決議の後直ちに公告を行うこと、資産の換価及び従業員との関係の終了を並行して進めることにより、全体の期間を短縮することができます。

質問3 債務が資産を上回っている場合はどうなりますか。

通常の清算の手続によることができません。清算人は破産手続開始の申立てをしなければならないとされております。経営者の個人保証がある場合には、その責任についても併せて検討を要します。

質問4 株主総会を開催できない場合はどうしますか。

解散の決議には特別決議を要しますので、これを成立させることができるかを確認する必要があります。所在の分からない株主がいる場合には、招集の手続及び議決権の状況を踏まえた検討を要します。

質問5 個人保証はどうなりますか。

会社の債務が弁済された場合には、保証債務も消滅いたします。弁済することができない場合には、保証の履行を求められる可能性が残ります。この点は、廃業を選択する際の重要な検討事項です。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕。東京都港区虎ノ門)では、廃業と譲渡のいずれを選ぶかの検討及び解散に伴う法律上の問題に関するご相談をお受けしております。

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ご相談の際に、直近3期分の計算書類、勘定科目の内訳明細書、登記事項証明書、定款、株主名簿、賃貸借契約書、就業規則及び退職金規程、借入れ及び保証に関する書類をご用意いただけますと、検討が早く進みます。なお、税務に関する事項は税理士、登記の申請は司法書士の業務でございます。弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

結果は事案ごとに異なります。本記事の記載は一般的な説明であり、特定の結果を保証するものではありません。

本記事の根拠条文

会社法 第309条第2項第11号(特別決議)、第471条(解散の事由)、第475条(清算の開始原因)、第478条第1項(清算人)、第481条(清算人の職務)、第484条第1項(破産手続開始の申立て)、第492条(財産目録等の作成)、第499条第1項(債権者に対する公告等)、第500条第1項(債務の弁済の制限)、第502条(債務の弁済前における残余財産の分配の制限)、第504条及び第505条(残余財産の分配)、第507条(清算事務の終了等)、第508条第1項(帳簿資料の保存)
労働基準法 第20条第1項(解雇の予告)

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